携帯日和








アイチが携帯を買った日。
嬉々した様子でカードキャピタルに現われた。みんなのメールアドレスを登録しに来たのだと言う。
ミサキならば「関係ないことで騒ぐな」とも他人ならば言うかもしれないがチームメイトのアイチには甘いのか、何の躊躇いもなく交換した。
三和に森川や井崎、店長とも交換し携帯を所持していないカムイは家の電話番号を登録した。


「櫂には聞かないのか?」

「断られたりしないか不安で」

「ないない、あいつならきっと交換するから」


すると三和は櫂の座るテーブルまで背中を押してアイチを誘導した。不自然な二人に気付くとすぐにカードからアイチに視線を移していた。


「なんだ」

「アイチが話あるってよ」

「え! あの、櫂君……」


後には引けないことについ黙り込んだ。櫂はアイチの言葉を待つように黙り、三和はゆっくりと森川達の方へと移動した。


「メールアドレス、教えて…下さい……」

「………」

「やっぱダメ?」

「いや、構わない」


櫂はすぐにポケットから携帯を取り出して弄りだした。あまり弄っている姿を見たことはないゆえかあまりに新鮮に感じた。
アイチも慌てて覚束ない手つきで携帯を操り、メールアドレスを交換した。


「ありがとう!」

「ああ」


アイチはあまりの嬉しさに携帯を胸に抱いて櫂に笑みを浮かべた。




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