押してだめなら引いてみる








レンに部屋になんやかんやで泊まることになった日のことである。テツは気を利かせてフーファイターを早く帰らせたり、アサカも何かと努めていた。


「僕はあっちのソファーで寝ますから、アイチ君はどうぞ……」


眠い目を擦りながら少し眠そうな声でレンが制すことにアイチは少なからず違和感がある。くっつきたがりのレンがそんなことを言い出すとはあまりに意外な気がしたからだ。「さあ、一緒に寝ましょうか」とか言ってくるものだと思っていた。


「どうかしましたか?」

「あ、えっと」

「ああ、好きに使っていいですよ」


まさか「レンさん一緒に寝ないんですか?」とは聞けないアイチは少しばかり戸惑いながら喉元まででかかった言葉を飲んだ。


「何つっ立っているんですか、電気消しますよ」

「はい!」








「押してだめなら引いてみるってことか………」

「きっと今頃先導アイチは素っ気ないレン様に戸惑っているわよ」

「お前が提案したのか?」

「ええ……何よテツ、貴方もレン様の相談相手になりたかったの?」

「………」


テツは廊下を歩きながら考える。
レンのことだ、今頃痺れを切らして自分からベッドに潜りこんでアイチを驚かせているだろう。




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