それは意外な出来事でした








自分が意外に奥手なのかと思ったのはアイチの寝顔に何も出来ない時だ。しないのが普通なのだろうが、櫂はいつもキスの一つや二つ、場所も選ばず出来るのに俺は本人を目の前にすると意外に何も出来なくて萎縮してしまうヘタレということに気付いた。


キスしたら勝ちとかではないだろうが、なんとなく本人を目の前にすると何も出来なくてしどろもどろしてしまう。
近くで見ている店員のねーちゃんは「ヘタレ」と一言呟いて、クソガキさんは自分もヘタレの癖に大きなため息をついたりする。


ある日いきなりアイチに「僕のこと苦手かな」と聞かれたことがある。いきなりすぎて良く思考が回らなかったが俺はどうやらアイチから視線を外してしまっているようでそれを気にしていたのだと言う。
確かに俺はアイチに見られるとつい恥ずかしくてそっぽを向くように視線が泳いでいる気がする。


でも嬉しかった。
アイチがそうやって少しでも俺を意識してくれたことが他愛ない話だが、すごい嬉しく感じた。




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