タルタロス脱出





「…で、どうするんですか?大佐。」

「そうですねぇ、早めに脱出をしたいものですが…」


フィルは格子の向こう側を見ながら、ジェイドは腕を組んだまま冗談っぽく言った。

先ほどの騒ぎより数十分……
フィルたちはタルタロスのひとつの船室…いわゆる、牢屋へと押し込められた。
長年乗っていたこの乗り物の中で、ほとんど入ることがなった場所だ。


まさか自分たちがここに入ることになろうとは…と、ジェイドもフィルも苦笑する。


「……っ……く……」

「ルーク?」


まだ気付く様子のないルークが急にうなされだし、ティアが身を乗り出した。


「ルーク、ねぇルーク!」


起こそうとティアがルークを揺さぶる。
すると、ルークがどこか痛みをこらえるような表情で目をゆるゆると覚ました。


「……よかった。うなされていたから」

「……ここは……」

「タルタロスの船室です」


ジェイドがそう答えると、フィルがすかさず「というか牢屋ですね」 と上司の説明に付け加える。
ルークはふと周りを見渡し、確かにこの部屋は船室というより牢屋に近いと納得した。

簡易ベッドやトイレが備え付けられ、中央の柱からは枷の付いた鎖が垂れている。
更に、扉の前には譜業制御らしき光の格子が降りていた。いわゆる、牢屋という奴らしい。

そして自分がベッドに寝かされていたことに気付き、今までの経緯をゆっくりと思い出した。


「そうか……。確か魔物が襲ってきて……、人……を……」


少しずつ思い出す生々しい感覚。
自分の手が赤黒くそまっていることに気付き、それが現実ということをつきつけられる。

人を殺したという感覚に体が震えだすルークに、フィルはそっと近づいた。


「フィル……?」

「ルーク様、手出して下さい」


あくまで穏やかにフィルが言うと、ルークはためらいながらも手を差し出す。
フィルはポケットからハンカチを取り出すと、ルークの手のひらを優しく撫でた。

乾いている血を完全にふき取ることはできないが、少しはマシだろう。


「今はこれで我慢して下さい。ここを脱出したら手を洗いましょう」

「あ…、ああ……」


フィルに自分の心を見透かされたように言われ、ルークは居心地悪そうに俯いた。


「さて。そろそろここを脱出してイオン様を助け出さなければ」

「イオン様はどこかに連れて行かれたようでしたけど……」


ルークの気持ちが治まったのを確認して、ジェイドは話を進める。
そして、ティアがそういえば…と思い出した言葉を呟くとジェイドはそれにコクンと頷いた。


「神託の盾たちの話を漏れ聞くと、タルタロスへ戻ってくるようですね。そこを待ち伏せて救出しましょう」

「……お、おい!そんなことしたらまた戦いになるぞ!」


ジェイドの案にルークが思わず顔をあげた。


「それがどうしたの?」


ティアが不思議そうに見返してくるのに、ルークは唇を噛む。


「また人を殺しちまうかもしれねぇって言ってんだよ」

「……それも仕方ないわ」

「なっ!?」


ティアの言葉にルークは驚いた。。

そんな簡単に言えるような言葉じゃない、そんな世界…自分は知らない。

だが無常にもティアの言葉は続く。


「殺らなければ殺られるもの」

「……っ人の命をなんだと思って……!」

「そうですね。人の命は大切なものです」


その会話を静かに聞いていたジェイドが、突然口を挟んだ。
だがジェイドが肯定してくれたからか、ルークは少し嬉しそうな表情をしたがすぐに次の言葉で青ざめた。


「でもこのまま大人しくしていれば、戦争が始まって、より多くの人々が死ぬんですよ」

「今はここが私たちの戦場よ。戦場に正義も悪もないわ。生か死か、ただそれだけ。
 普通に暮らしていても魔物や盗賊から襲われる危険がある。だから力のない人々は傭兵を雇ったり、
 身を寄せ合って辻馬車で移動しているのよ。戦える力のある者は子供でも戦うことがあるわ。
 そうしなければ生きていけないから」

「――そんなのっ。そんなの俺には関係ない!俺はそんなこと知らなかったし、好きでここに来た訳じゃねぇ!」


ついにルークが大声をあげた。ぎゅっと拳を握り締め力いっぱい否定の言葉を叫ぶ。
だが、ジェイドは呆れたような表情をし、フィルは驚いたような表情をした。


「……驚きましたねぇ。どんな環境で育てば、この状況を知らずに済むというのか……」

「マルクトに誘拐されかかって以来、身を守るため、お屋敷に軟禁されていたそうですから」

「この世界のことを知らなくて当然……ですか」


ティアの説明にやれやれとジェイドは肩をすくめると、ルークは再び反発する。


「仕方ねぇだろ!ガキの頃の記憶もねぇんだ!俺は何も知らないんだ!」

「ルーク様…。」


それはどこか幼子のよう。
迷子になった子供が帰り道を探して泣いているようだった。


「大佐、ティアさん。ルーク様は私たちと違って民間人です。
 それに貴族です。……本来でならばしなくても良い立場の方です。そこを…理解していただけないですか?」


フィルが口を挟むと、ティアは何かに気付きジェイドはジェイドでいつもの涼しい顔をしていた。


「確かに、こんなことになったのは私の責任です。だから私が必ずあなたを家まで送り届けます。
 その代わり、足を引っ張らないで。戦う気がないなら、あなたは足手まといになる」

「た、戦わないなんて言ってない!……人を殺したくないだけだ」

「私だって!……好きで殺しているんじゃないわ」


一瞬だけ怒りを見せるが、ティアはすぐに声と感情を押し殺す。

フィルはジェイドに視線を送るが、彼はとりあえず場の流れを見守っているだけ。
小さく息をついてフィルは一歩前に出る。


「ルーク様、今戦うということは『人間を殺す』という意味につながります。
 貴方に手を汚させたくありません。ですから…――」

「……なるべく戦わないようにしようって言ってるだけだ」

フィルの説得にもルークは反抗するように言葉を返した。
人を殺すのは怖いが、足手まといにもなりたくない。拳を握り締めてルークは言った。


「結局戦うんですね? 戦力に数えますよ」

「戦うって言ってんだろ」

「結構」


ルークの返事にジェイドは満足げに答えた。

そして、つかつかとベッド近くの床まで歩くとそこにしゃがみこみ床を調べ始める。
小さな取っ手を見つけ、ジェイドはそれを引くと中から伝声管が現れた。
それをぐいっと引っ張ると、ジェイドは声高らかにそれに向かって叫んだ。


「死霊使いの名によって命じる…作戦名『骸狩り』、始動せよ」


そして、その声がタルタロス全体に管を通って渡りきる。
次の瞬間、タルタロスから全ての機能を奪い取った。

光の格子も作動しなくなり、牢屋は一気に開放されていく。


「行きますよ!」


ジェイドの声を共に彼らは駆け出した。
非常停止機構を作動したため、あいているのは左舷昇降口のみ。

そこへ向けて一気に走っていった。







**




左舷昇降口の扉前まで来ると、向こうより人の気配がする。
どうやら敵のようだ。

四人は息を潜めて待ち構える。


「非常昇降口を開け」

「了解」


聞こえたのは女性の声。それに命令さえ兵士は、外壁の蓋を開けて手動レバーを操作する。
兵士が降りてきた階段を駆け登って扉のスイッチを押すと、圧搾音がして扉が左右に開く。


――いまだ!


全員が心をひとつにし、まずはルークが飛び出すとミュウの頭を掴んで命令した。


「おらぁ!火ぃ出せぇっ!」


ミュウが勢いよく炎を吐き出す。
兜の上からではあるが顔面を焼かれて、兵士は後ろ向きのままで階段を転げ落ちる。
その音を聞いて、金髪の女は素早く二挺の譜銃を向けるが、
既にその頭上に槍を構えたジェイドが飛び掛っていた。

槍がそのまま地面をつく。
だが一瞬前までその場にいた女は、もう後ろに飛びすさっている。
すぐに銃を撃とうとしたが、ジェイドが自分の後ろに回って槍の先を突きつけていることに気付いて動きを止めた。

表情を変えず女は呟く。


「流石ジェイド・カーティス。譜術を封じても侮れないな」

「お褒めいただいて光栄ですね。さあ、武器を棄てなさい」


ジェイドの言葉に素直に従い女は銃を捨てた。
フィルはといえば、ルークの援護にあたり傍にいた兵士を拳につけたバンクルで殴りつけ、
そのまま地面へと押し倒していた。
顔につきつけられた拳に、兵士は身動きが取れない。


「ティア、譜歌を!」


フィルの声が飛ぶ。
だが、当のティアは女を見て驚いた表情をしていた。

「リグレット教官?!」

「ティア……?ティア・グランツか……!」


女―リグレットがティアの存在に気付いたその次の瞬間、一頭のライガが現れティアに襲い掛かった。
避けようとするが吐かれた雷の息は、跳ぼうとしていたティアに触れ着地を失敗させる。

そして、その隙を逃さずにリグレットはジェイドの槍を蹴って逃れ、
銃を拾い上げてイオンを人質にしようと駆け出す。
ジェイドがそれに気付き追いかけようとしたが、放たれた銃弾に牽制されて、ジェイドの動きが止まる。

フィルもイオン奪回に動こうとしていたが、同じく牽制された銃弾に足を止めた。


「ご主人様、囲まれたですの……」


身動きが取れなくなったこの状態に、ミュウが悲しげに呟く。


「アリエッタ! タルタロスはどうなった?」


銃を構えたまま、リグレットはいつの間にか昇降口に立っていた見かけ幼い少女に声をかけた。


「制御不能のまま…、塞がれた道をこの子達が壊してくれたの…」

「よくやったわ。彼らを拘束して…―」


リグレットが賛美の言葉をかけようとしたその時、タルタロスの上から太陽の光と共に青年が飛び降りてきた。
その勢いにのり、青年はリグレットを打ち倒すとイオンを守るように立ちふさがった。


「ガイ様、華麗に参上」


彼は、ある意味冗談のような台詞を堂々と言った。
そして、すでに行動を起こしていたジェイドは、幼い少女―アリエッタを槍で抑え込んでいた。

「きゃっ」と小さな悲鳴が上がり、いきなりの乱入者に気を取られていたリグレットはハッと顔を強張らせる。


「アリエッタ!」

「さあ、もう一度武器を棄てて、タルタロスの中へ戻ってもらいましょうか」

「……」


反撃に出ようとリグレットは銃を持つ手に力をこめるが、その背後ではフィルが首筋にナイフを突きつけていた。
この状態から反撃が難しいと考えた彼女は、そのまま武器を落としタルタロスへと戻っていく。
兵士もそれにならってリグレットの後に続いた。



「さあ、次はあなたです。魔物を連れてタルタロスへ」


完全に中に入ったのを確認し、ジェイドは自分が捕らえている少女に中に入るよう促した。
だがアリエッタはイオンを見やり、切なげに呟く。


「……イオン様……。あの……あの……」

「言うことを聞いて下さい、アリエッタ」

「……」


何度もイオンを振り返りながら、アリエッタはライガを連れてタルタロスの中へ消えた。
フィルが外部から全ての昇降口を封鎖すると、「暫くは開かない筈です」とジェイドが言った。

そして彼らは、歩き出す。
なるべくその場から離れるために。




**



少し歩いた先でルークが急に安堵の声と歓迎の声をあげた。


「ふぅ……助かった……。ガイ! よく来てくれたな!」

「やー、捜したぜぇ。こんな所にいやがるとはなー」


ガイと呼ばれた青年はルークの無事に安心したのか、暢気な雰囲気を見せた。
ルークの目が少し潤んできているように見えたのは、見ないことにしながら。


「なんだか大変なことになってたみたいだな。ルーク」

「……ああ。ったく、屋敷を出てからロクな事がねーぜ」

「はっはっは。屋敷を出てから大冒険!ってか?」

「あのな。笑い事じゃねーっての……」


経験した内容を説明するには今は時間がなさ過ぎる。
だが、本当に笑い事じゃなかったようなことばかりが起きた。
いずれガイに話そうと思うが、今はなんだかこっちの気も知らないガイに腹が立つ。


「ははは。まぁまぁ。事件はだいたい解決したんだろ?じきにバチカルに帰れるさ」

「だと良いんだけどなー……」


ルークとガイが再会の話を盛り上げている頃、ジェイドがイオンに問いかけた。

「ところでイオン様。アニスはどうしました」

「敵に奪われた親書を取り返そうとして魔物に船窓から吹き飛ばされて……。
 ただ、遺体が見つからないと話しているのを聞いたので、無事でいてくれると……」

「アニスなら大丈夫ですよ。イオン様」


彼女の強さは三人ともよく知っている。
フィルの言葉にイオンが「そうですね、アニスですから」と同意するとおかしそうに笑った。

そして、ジェイドが次の目的地を告げる。


「セントビナーへ向かいましょう。アニスとの合流先です」

「セントビナー?」


それを聞いていたのかルークが目的地の名前を復唱した。


「ここから東南にある街ですよ」


フィルが代わりに答えるのを聞くと、そこまで逃げればいいんだなと納得したようにルークは頷いた。


「ところで、あなたは……」


イオンが、ガイに問いかけたそうな視線を向ける。


「そういや自己紹介がまだだっけな。俺はガイ。ファブレ公爵のところでお世話になってる使用人だ」


立てた親指で自分を指してそう言うと、ガイは笑顔でイオン、そしてジェイドと握手を交わした。
そしてティアが近付いて手を差し出したが、彼は「……ひっ」と悲鳴をあげて後ろに飛び退いた。


「……何?」


ガイの奇妙な行動に、その場にいた全員がぽかんと見ている。
ルークはそれを見て、溜息をつくと簡単に説明をした。


「……ガイは女嫌いなんだ」

「……というよりは女性恐怖症のようですね」


この怯えよう。
明らかに恐怖症のほうが相応しいだろう。


「わ、悪い……。キミがどうって訳じゃなくて……その……」


ガイはおろおろしながらもティアに弁解している。
だがティアは苦笑した。


「私のことは女だと思わなくていいわ」


そう言ってまた一歩近づくと一歩ガイが後ずさる。
一歩…また一歩。ガイがついに化け物に追い詰められたようにガクガク震えだしたので、
ティアは頭を押さえて「分かったわ」と言った。



「……ティアさんが駄目なら、わたしも駄目ですよね?」


フィルも苦笑して問いかけると「すまない……」とガイがすまなそうな顔で謝る。



「そろそろ行きましょう。いつまでもここにいては危険です」


面白い場面は見終わったというように、ジェイドは話題を切り替えた。
ここに長いこと留まるのはまずい。

気がつけば足が止まっていた皆にジェイドはそういうと再び歩き出した。


だが、フィルはその場で足を止めたまま後ろを振り返る。

今回の任務は極秘とはいえ140名近くの兵士がタルタロスに乗っていた。
そして、それは今回ほとんどの兵士の命がなくなったといえる。

フィルは、ゆっくりとタルタロスがあったほうを見て頭をさげる。


すると、それを見ていたのかガイが立ち止まってフィルへと声をかけた。


「追悼か…?」

「ええ、気休めですけどね。」


くすりと笑ってフィルは再び歩き出す。
ガイとは間隔をあけてなるべく近寄らないようにして、口を開いた。


「貴方は………いつから女性恐怖症になったのですか?」

「え?」


いきなり先ほどの原因を聞かれてガイは戸惑った。
そして、フィルは視線を正面から変えずに続けて言う。


「昔の貴方は女性恐怖症ではなかったでしょう?」

「なん、で……それを……」


なぜ昔の自分を知っている?とガイはフィルに対して警戒心を抱いた。
だが、フィルは足を止めてガイへと体を向ける。

優しく微笑まれたその表情はどこか見覚えがあった。


「お忘れですか?貴方家に仕えていたアイラスの娘です。ガイラルディア様。」

「――なっ……、君が…?」

ガイがフィルに問いかけようとしたその時、複数の足音が聞こえてくる。
二人がハッと振り返ると、オラクルの兵士たちが数人こちらへ向かって走ってきた。


「追っ手か!」

「そうみたいです。」


ガイが剣を抜き、フィルが腕輪に触れて槍へと変え仲間たちの方へ走る。


「やれやれ、ゆっくり話している暇はなくなったようですよ」


ガイとフィルが駆け寄ると、ジェイドは溜息をついて槍を構えた。
彼らの背後には守られるようにイオンと、そしてルークがいる。


「に……人間……」


ルークが声を震わせてオラクル兵を見た。
剣の柄に手をあわせるが、人を殺した恐怖を思い出し剣を抜くことが出来ない。


「ルーク!下がって、あなたじゃ人は斬れないでしょう!」


それを尻目に見たティアは、すぐにでも譜術を唱えられるようにしながらもルークに言う。

だが、ルークは聞こえていないのか震えるばかり。


その間にも、ガイとフィルとでオラクル兵の攻撃を防いでいた。

目の前で繰り広げられる攻防。
相手は生身の人間。

生きるか死ぬかの戦い。


――怖い…っ、でも死にたくない…!


ルークは、視線を剣へとおとすと勇気を出して握り締めた。


「うおおおおおおっ!」

「ルーク様!?」


いきなり剣を抜いて戦いに参加するルークに、フィルは驚愕する。
だが、恐怖で塗り固められた剣で倒せるほど、訓練された兵士はあまくない。

兵士の人数は味方よりも少し多い。
この状態では、誰かが援護に動けるところではない。

たとえ、動けたとしてもイオンの守備から外れるしかなくなってしまう。


そうなると、出来ることはただ一つ。

自分の相手をさっさと倒し、彼の援護にまわるだけ。


そう、三人がそれぞれ同じことを思い、オラクル兵と対峙していく。



「う……っ……」


ルークは不慣れな生身の人間相手の戦いに、致命傷というほどの傷を与えることは出来なかったが、
相手を弱らすには十分の傷を与えることが出来た。


「ルーク、とどめを。」


それを傍目で見ていたジェイドの容赦ない一言が飛ぶ。
それに後押しされ、ルークは震えながら剣を振り下ろした。

だが、それは簡単に弾き飛ばされてしまう。


「ルーク、しっかりしろ!」


自分の相手と戦いながら、ガイが叫んだ。

だが、ルークは次の一手を打てずにいる。


そんな中、弱った相手が立ち上がった。


「ルーク様!早くとどめを――…」


フィルが声をあげたその時、今度はオラクル兵がルークに向かって剣を振り下ろす。
ルークは、その光景を見ているしかなかった。



まるで、時がスローモーションのように動き出す。

ガイが、戦っていた相手を切り倒しルークのほうに駆け出した。

そして、一番近くにいたティアが、ルークの前に出ると彼のかわりに
オラクル兵の一太刀が彼女の腕へと振り下ろされた。


「ティアさんっ!!」


悲鳴に近い声でフィルが叫んだ。
ずさっとティアが、地面へと倒れこむとルークがその場に座り込み、ティアへと手を伸ばす。


「ティア……俺……」

「……ばか……」


そして、ティアの意識はそこで途切れた。




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