呼び出しの理由



「夢ノ咲学院?」


ある日の朝。

学校サボって探偵社に来てくれない?と太宰から連絡を貰った夏見が到着すると、待ってたとばかりに太宰が夏見に夢ノ咲学院に生徒として潜入捜査をしてほしいと頼んだ。日本で一番大きなアイドル養成学校。そんな学院に来年新設される『プロデュース科』のテスト二号という設定で入ってほしいのだとか。説明が欲しいですと顔に出ていたのか、太宰が一冊のファイルを差し出した。



「実はね、学院のアイドル科に通う生徒が一人行方不明になっているらしくてね。其処のお偉いさんと社長が古い知り合いで内密に見つけ出し保護してほしいと依頼がきたんだ」

「警察だと何処かから漏れて騒ぎになる可能性があるからですか?」

「かもしれないね」

「でも、何で私なんですか?」



先の組合戦と起きた事件で異能力者であり、元伊太利亜のマフィア首領であり、古代羅馬の魔王と恐れられる異能力者の孫娘と知られ、一般人ではないと敦と太宰以外の探偵社の面々には認知されたが社員になった覚えはない。首を傾げる夏見に大きな溜め息を吐いた太宰は「乱歩さんの指示なんだよ」と答えた。



「乱歩さんの?」

「うん。此の事件は夏見ちゃんが解決しなきゃいけない。長期戦になるかもしれないけど、僕達は夏見ちゃんの要請があった時にしか動かない。ってね」

「…」



子供っぽい名探偵には敵わない。何の情報もないのに確信めいて自分を指名したのだから。太宰から受け取ったファイルに目を落とした。

夢ノ先学院にはアイドル科以外にも科は存在するが学院が力を入れているのがアイドル科だ。プロデュース科には今年の春転校生が一人転校し、学院の根本を変える大革命を成し遂げた様だ。一人が成功したから二人目も投入して様子を見ようというのが学院側の思惑だろう。で、生徒が一人行方不明になってしまった為、其れを利用して捜査しろというわけだ。

一通り資料に目を通し、パタンとファイルを閉じると何時の間に側まで来ていたのか、制服を持った鏡花がいた。



「はい。制服」

「ありがとう鏡花ちゃん」

「何かあったら連絡して。直ぐ駆けつける」

「おっ、頼もしいね」



よしよしと鏡花の頭を撫でまた太宰に視線を変えた。



「潜入するのは良いですけど学校には何て説明するんですか?流石に長く休むとなると」

「其処は心配いらないよ。大丈夫、私に任せて」



心配でしょうがないが此処は太宰を信じよう。明日から行ってねと云われ、軽く殺意を抱いたのは云うまでもない。





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