みっつめ
└五
― 二ノ幕 ―
「あら?信ちゃん!怪我したの!?」
「あ、へへへ…ちょっとドジッちゃって」
「まー!お大事にねぇ!」
通りすがりの人が、目を丸くして声を掛ける。
もうこれで三人目。
まるで町全体が家族のようだ。
「いい町ですね」
「あぁ!みんな気のいい人達ばっかりだよ、俺たちもこの町は最高だって思ってる」
佐治さんと信介さんは私の言葉に、嬉しそうに笑った。
「薬売りさんと結さんはどこから来たんだい?」
「あ、ここよりもう少し東の方です」
「へぇ…薬の行商?」
「えーっと…」
ちらりと薬売りさんを見れば、二人もつられて彼を見る。
『……まぁ…物見と探し物って所ですかね』
「探し物?」
『えぇ』
薬売りさんはそう言うと、私の頭をポンッと撫でた。
しかも飛び切り目元を優しく細めて。
「………っ」
自分の頬がカァッと熱を持って、私は思わず俯いた。
"とりあえず探しに行きますか……結の彩りある未来、ですよ"
二人でこうして旅に出るときに彼が言ってくれた言葉だ。
薬売りさんと歩いて行く。
そう心に決めたあの日に。
(…薬売りさん、覚えててくれたんだ…)
どうしても緩んでしまう頬を両手で抑えていると。
「あーあ、あっちぃあっちぃ!」
「いやーまだ肌寒いと思ってたけどなー!」
「!!」
佐治さんと信介さんはわざとらしく手で仰ぎながら笑う。
そのせいで私の顔の熱は全身を駆け巡った。
(…しまった…思わずひたってしまった…)
私は俯けた顔を上げられないまま肩を竦める。
一方、薬売りさんはフンッと鼻で笑ったかと思うと。
『…ふっ、羨ましいですか?』
「く、薬売りさん!?」
とんでもないドヤ顔で二人を見るのだった。
「……ふはっ!」
「あはははは!こりゃ敵わねーや!」
「う、うぅ……」
(あー…このまま地面にめり込んでしまいたい…)
そんな私とは裏腹に、薬売りさんは涼しい顔で町の様子を眺めていた。
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