皆帆和人






 皆帆くんの趣味が人間観察だってことはもちろん知っている。でも、私はそれが嫌いだ。なぜなら、私は彼が好きだから。常日頃から人の行動を観察している彼なら、わかりやすいとよく言われる私を見たら直ぐに好意が伝わってしまう。
 皆帆くんを好きだと自覚したのは割と最近。以前は仲の良い友達として他愛のない会話をし、毎日一緒に過ごしていたが、恋心に気づいてしまった私は意識的に皆帆くんを避けるようになった。学校で話すのも学校以外で話すのも徹底的に避ける。そんな私の突然で不可解な行動が原因かは分からないが、ふとしたときに皆帆くんを盗み見ると、彼はいつも眉を顰め不機嫌な顔をしていた。

▽ 

 幸い彼とは別のクラスなので、帰りのHRが終わった後、すぐに走って帰れば皆帆くんの顔を見ずに済む。今日もその予定だった。急いで教室の後ろ扉を開け帰ろうとすると、皆帆くんが立っていた。

 「ねえ、話があるんだけど」

 久しぶりに目と目が合う。四白眼の瞳に射られ、一気に体内の熱という熱が顔に集中していく感覚を味わった。

 「一緒に帰らない?」

 へらっといつものように皆帆くんは笑った。
 ああ、彼への好意が伝わってしまう!

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