Tiger x Lotus | ナノ

01 


思うままに出歩いて、自由に昼寝をして、干渉される事も拘束される事も嫌って、集団行動は好きじゃなくて、自尊心が強くて、人の言いなりにはならない気分がのらないと、返事もしないし振り向きもしない。
興味がないものに対して無関心で、普段は愛想なんて全く無いのに、自分の欲望を欲する時、甘えて擦り寄ってくる


「虎」

ぎゅぅっと、苦しいけれど心地良いくらいの窮屈感を与えてくれる、大好きな腕。あぐらをかく虎の足の間、僕はすっぽりそこに収まっていた。僕を後ろから抱き締める虎は、僕の肩に顎を置き、ちゅうちゅうと首筋にキスをしていた。

「くすぐったい」

学校もバイトもない、二人揃っての暇な休日。
僕らは虎の部屋でDVD鑑賞をしていた。ずっと見たかった洋書が原作の映画。虎には退屈な映画かな、と思いつつも一緒に見てくれることを嬉しく思った。虎は映画を横目に、僕にへばりついているだけだったけれど、それでも。

締め切ったカーテンから透ける弱い光が僕らを照らす、居心地の良い虎の部屋。液晶には佳境に入ったであろう物語の見せ場。心を奪われるような、美しい映像が流れていた。

なんて、虎には全く関係ないらしい。肩に置かれていた顎が離れ、首筋を這っていた唇が耳元へと移動した。裏から耳たぶ、穴を避けて軟骨へ、舌は器用に僕の耳を奉仕する。

「と─」

「蓮」

「っ…」

低く響く、虎の声。少しの掠れが色気を誘い、クリアに聞こえるきっと、その声だけで僕の体がびくりと反応してしまうことを、虎は知ってる。不意に囁かれた名前に、思わずテレビから背後の虎へと視線を移してしまった。

「虎っ」

その一瞬を逃さないで、唇と唇が重なった。薄い、虎の唇。僕にキスし続けていた所為か、何時もより湿った、官能的な唇。触れるだけのキスの後、何処か自慢げに彼は微笑んだ。

「やっとこっち見た」

そう呟いて。
頬が熱くなるのを感じながら、僕は薄い液晶の画面へと視線を戻す。しかしそれは映像の続きを捉えることなく、虎に捕まってしまった。

「んっ…ぁ」

触れるだけの口づけを、角度を変えながら繰り返す。切れ長の目に見下ろされながら、その一見冷たげな瞳から送られる熱い視線に、僕の心臓は動く速度をあげた。いつもならそろそろ舌を絡めに唇を割ってくる、そう思った瞬間、その唇が僕の唇から離れ、額に触れた。

「今、良いところなんだろ」

「っあ、うん」

何を期待したのか、恥ずかしさに頬の熱が増す。虎は相変わらず自慢げに、そして満足げに口元を緩めている。普段は何にも興味を示さないで、自分の世界にいるのに。自分が構ってほしいときに構ってもらえないと、こうしてちょっかいを出してくる。

興味の無い相手には目もくれず、僕にだけこんな可愛いことをしてくる。それはまるで猫みたいで。けれどそれより当てはまる、他の動物が思い浮かぶ。

「とーら。くすぐったい」

再び映像に集中しようとした僕を引き留めるように、また虎の唇が首筋や耳を這う。結局、DVDは一時停止にして、虎の相手をすることにした。止まないキスを受け止めて、居心地の良い圧迫感の中で、僕もその体温を確かめた。

まるで大きな子犬に顔を舐められているような。将来大きくなることを悟らせる、大きな手足で抱きつかれているような。寂しかったと、今は嬉しいと、尻尾を振られているような。

堪らなく、可愛くて大事で、愛しい。

(まるで大きな子犬。一人で留守番もできない子犬。周囲は虎を猫みたいだというけれど僕には寂しがりの子犬にしか見えない。)

けれど、所詮は子犬、やがて大きく獰猛な成犬へと姿を変えてゆくのだと気づく


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