Tiger x Lotus | ナノ

07 

「と、ら…」

ああ、蓮だ。

「蓮」

“虎が、好き”

何年も何年も、ずっと蓮が好きだった。
生まれて初めて好きになったのは蓮だし、蓮以外を好きだと思ったこともない。俺は蓮しか知らないし多分これから先もそれは変わらない。変わらない自信も、変えられない自信もある。
報われようが報われなかろうが、だ。

だから、蓮が全てを…友達とか幼馴染とか、そういうの全部、放棄して俺を好きだと言ってくれるなら、もう死んでもいいとさえ思った。このまま死んでも、心残りはない、そう言えるくらい嬉しかった。

「っんぅ…」

「声、我慢しなくていいって」

「や、だ…」

声が出ないように、必死で口を押さえる蓮は目を閉じて、でも必死に俺を見ようとする。全部が可愛くて、愛しくて、口を隠すその手にキスを落とす。そのまま自分の背中にそれをまわすよう促して、唇にキスをした。

「掴まってろ」

「っ…」

声は逃さず聞いていたいし、表情は一瞬も見逃したくない。髪の先からつま先まで、残すところなく舐めまわしたいし、一生離れないように自分に繋いでおきたい。

「声も、」

耳元でそう囁けば、ぴくりと体が震える。そんな反応に、今さら気づくなんて、なんて馬鹿なんだろう。

「蓮、限界。力、抜いて」

既に一度絶頂に達したはずの蓮のそこは、もう硬くなり始めていた。十分に慣らした窄まりから指を抜き、もう一度ローションをそこへ垂らす。

「ひっ…ぅ」

蓮が俺を受け入れるのは、どんな形でも大事な”友達”を繋いでおきたかったからだと本気でそう思っていたし、今だってそれは違うと言われても、100パーセント信用出来ているかは危うい。問いただされれば答えは濁してしまう。けれど、それでも、名前を呼ばれるのが、抱きしめてくれるのが、嬉しくて幸せで、仕方がないのは事実だ。蓮が俺のために泣いて怒って好きだと何度も言葉にしてくれたのも事実で、ならば俺はそれを信じたいと思った。

「悪い、冷たかったか」

「…ん、だいじょう、ぶ」

蓮は変わらない。変わらないのに…
潤んだ目も、高揚して赤くなった頬も。表情の一つ一つが扇情的で、たまらなく興奮する。狭い隙間に自分のものをあてがいながら、せめてもう少しゆっくり、そう思うのに、熱を帯びたそれは早く早くと急かす。そう、少しでも蓮の痛みや苦しさを和らげてあげたいのに。

「っ…は、あ」

「…辛い、よな」

「い、い…から…早く、虎と…」

女と違って後ろの穴は濡れない。ちゃんとほぐさないと痛いだけだ。自分だけが気持ちよくなっても意味ない。だから大事に大事に抱いて愛したい。そう思うようになったのは、蓮を抱くようになってからだと思う。蓮以外にそう思えないから、体も反応しなくなってしまったのかもしれない。

ギチギチと軋むような音。
でも、確実にその中は熱くて、居心地が良くて、ずっと繋がっていたいと思わせる場所で…
全てが蓮の中に入るより先に、蓮の手が俺の背中に爪を立てた。ああ、やっぱり苦しいんだ。そりゃ、こんなところに突っ込まれるなんて、痛いし苦しいし気持ち悪いに決まってる。

ぎゅっと抱きしめられて、背中に感じる小さな痛み。その痛みの何倍も何十倍も、蓮は痛みを感じているんだ。そう思うと、蓮に与えられる痛みさえ愛しく思える。そのまま背中に痕を残して一生消えなければいいのに、なんて思う自分は一生蓮には敵わないんだろう。

「っい…」

「あっごめ…」

「え?」

「背中…」

ほんのり赤くなっていた頬が、熱を増すように更に赤らむ。

「ああ…気にしなくていい」

俺の心配が出来るくらい余裕、か。
そうだな、余裕が無いのは俺の方なんだから。

「しっかり、爪たてていいから 」

理性がとばないように、ちゃんと、繋いでおいて。

「っ…」

その温かい手で、優しい指で。
ゆっくりと腰を動かして、蓮の様子を見る。さすがに、ここまでこれば余裕なんて無いだろう。この窮屈さと押し寄せる快楽の波に逆らうことは出来ない。それを伝えようと、必死にしがみ付く腕が、たまらなく愛しい。

今までも、こうして蓮は俺にしがみついていたのだろうか。俺が気づかなかっただけで…いや、勘違いしないように、期待しないように、気づかないようにしていただけかもしれない。こんなの…こうやって体に教え込まれてしまったら、頭がパンクしてしまう。もう今、蓮のことで頭は一杯なのに。これ以上…何処を占領したいって言うんだ。

好きすぎて不安になってしまう。
こんなに色っぽい顔を、声を、姿を、他の人間に見せたりしたら蓮ごと全てを壊してしまいそうで。一生俺にしか愛されないように監禁しておきたい、そう思うくらい。

「蓮…」

この目に、自分以外を映して欲しくない。そんなのずっと思っていたけど、“虎が好きだよ”なんて言われてしまったら、余計に独占したくなる。

「俺だけ、見てて」

女々しい。本当に…不安で仕方ないなんて、怖くて仕方ないなんて。蓮の体温に溶かされていくこの感覚も、俺だけのものじゃないと嫌だ。

「ん…虎、しか…見てない、よ」

濡れた言葉が、俺を捕らえる。
ああ、本当に…蓮しかいらない。蓮しか…


愛されたいと思っていたのに
今は愛されていることが怖い
(今まで許せていたことまで)
(全部独占したくなるからだ)



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