同居始めました | ナノ



「よーし、じゃあ行こうか」

リビングにいた一静君にそう言って、私達は部屋を出た。隣を見ると、一静君はまだ申し訳なさそうな顔をしていた。でも急に初めて会った女の子と一緒に住む事になったんだから普通は嫌だよねぇ。






「ごめんね、うちに住む事になっちゃって」

「え」

「嫌でしょ?いくら親戚でも、流石に知らない女の子と同居とかさ」

「嫌ではない、……けど本当にこのままお世話になっていいのかなとは思う」

「うーん、気楽にやればいいと思う」

「気楽にねぇ……」

「一人も二人も一緒だよ」


マンションのエレベーターで下に降りながらそんな会話をした。緊張している一静君をどうやったら気楽に過ごして貰えるか……これはやっぱり一緒に過ごして慣らしていかないと駄目かなあ。










「そういえば一静君、学校はどこ行くの?」

バスで移動してそこそこ大きいショッピングセンターに着いて、隣で食器を見ている一静君に聞いた。





「青葉城西」

「あ、一緒だ。なんでまた青城?」

「バレーが強いからばーちゃんがそこにしろって、白鳥沢とかは学費高いから考えてなかった」

「ばーちゃん?」

「小さい時から一緒に住んでた祖母、先月亡くなったけど、優しいばーちゃんだったよ」

「……えっと、ごめん」


そうだった、
一静君は身寄りをなくしたんだった。
本当はお祖母さんと一緒にいたかったはず




「まぁ、思い出すとやっぱり悲しいけど……後ろばっかり向いても仕方ないし」

「強いね、一静君」

「強いよ、俺」

「じゃあうちのセキュリティはバッチリ?男の人がいるとやっぱり心強いよね、私もずっと母と二人だったから」

「お世話になるし、何でも言って下さい」

「いいの?じゃあ、料理って出来る?」

「簡単なものなら」

「頼りになるね」


たまにごはんを作ってくれると約束してくれたので私は上機嫌になった。締め切りが近いとごはんを作る時間さえも惜しいから凄く助かる。

私達は二人であれやこれやを見たり
一静君が自分のマグカップを選んだり、
一緒に服や消耗品などを買い揃えていった。





「……。」

「?」

お会計を済ませていると、一静君がどこかをジッと見つめていた。見ている先はスポーツ用品店のようだった。



「(もしかしてバレーシューズとか?)」

部活をやるんだったらやっぱりいるよね?
あ、でももう持ってるのかな?
でも高校に入ったらやっぱり新しいシューズが欲しいだろうし……。

うん、気持ちは分かる。私も新しい服とか欲しくなる、高校生になった事だし。





「葵さん?」

「わっ」


顔を上げたら一静君がいた。

買った物を持ってくれてるようだ。
重くないかな?やっぱり男の子凄いな。







「ねぇ一静君、そこのスポーツショップ行ってみる?」

「え?」


一静君は困った顔をしていた。
本当は行きたいんじゃないかな?
私の気のせいかな?




「行こう、一静君」

「え、ちょ……。」


私がスポーツショップに向かうと、
一静君も一緒に来てくれた。

ごめんね、荷物重いのに。




「これってバレーボール?」

「……それはサッカーボール、バレーはこっち」

「あ、こっちか」

真っ白なサッカーボールだったから見間違えてしまった。だって私、ソフトバレーしかやった事ないし。昔から運動系じゃないし、インドアだし。





「じゃあこれがバレーのシューズ?」

「そう」

「へぇ、一静君は持ってるの?」

「持ってるけど……。」

「けど?」

「……。」

「?」


なに?
……持ってるけど、
一体どうしたというの?



「一静君?」

「ごめん、なんでもないよ」

「……本当の事言わないと、今日の晩御飯は無いですよ一静君」

「えっ」

「一静君?」


私がにっこり笑ってそう聞くと、
晩御飯なしは流石に辛いのか、彼は口を開いた。



「シューズは持ってるけど、」

「うん」

「……サイズが、合わなくなってきた」

「あぁ、なるほど。じゃあ新しいの買って行こうよ、どれがいいのか私には全く分からないけど、これとこれって何が違うの?」

並んでいるバレーシューズを持って一静君に聞いた。彼は驚いた顔をしていた。





「どうしたの?」

「え、いや……買うって、え?」

「え?サイズ合わないんでしょ?バレー部入るのにサイズ合わなかったら危ないし」

「そうだけど……シューズって高いし」

「ああ、それなら気にしなくていいよ」

「でも……。」

「で?この靴って何が違うの?」

「え?あぁそれは軽量化タイプで軽い」

「あー、なるほど。バレーってジャンプするもんね、じゃあ軽い方がいいのかな?」

「そうだけど(金額が)」

「一静君、色は?何かいっぱいある」

「色は別に…どれでも」

「じゃあどれが格好良いかな、あ!ピンクもある可愛い!」

「ピンクはちょっと」

「じゃあどれがいい?」


半ば無理やり一静君に選ばせて、
バレーシューズを購入した。




「……。」


一静君はずっとぽかんとした顔をしていた。




「あとは何が要るかなぁ」


生活用品もある程度買ったし、
一静君の服も何着か買ったし(私が選んだ)


私の服も買っちゃったし。

あと何かあったかな?







「……葵さん」

「ん?まだ買う物あった?」

「……ありがとう」

「ん?」

「その、靴とか買って貰ったり、こうやって俺の為に色々してくれて、俺は葵さんにしてあげれる事が何も無いのに」

「ああ、困った時はお互い様だよ。一静君は何も心配しなくていいよ。私が養ってあげるから」

「なんかそれ嫌だな」

「うん、私も言ってみて思った。じゃあ一静君、私が困ってたら助けてね?それでおあいこ」

「わかった、困ったらいつでも言って、俺が何でもするから」

「わあ、頼もしいね一静君」

「俺を頼ってね」

「わかった」


一静君の真っ直ぐな目を見て、
凄く頼りがいのある人だなぁと思った。

見た目のせいもあるけど、
一静君はとてもしっかりしていそうだ。






(今日の晩御飯はハンバーグです)
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