同居始めました | ナノ


……ピンポーン




「……う」


重たい頭をゆっくりと起こした。

ああ、私はまた漫画を描いている途中で力尽きたようだ。椅子に座って机に突っ伏したまま眠ってしまった。ほっぺたに跡が付いていないだろうか……頭が痛い、ついでに首と肩が痛い。



いつ寝たのかは全く覚えていないが、今日が土曜日で学校は今は春休みだという事は凄く覚えている。徹夜で漫画を描こうと思っていたから。漫画の締め切りにはまだ余裕があるが、早めに仕上げたかったのだ。





「……ふぁ」


欠伸をして、椅子から立ち上がった。
少しフラついたのはきっと何も食べていないから。




……ピンポーン




部屋の呼び鈴のチャイムが鳴った。
担当さんが来るのって今日だっけ?
……いや、約束してないし。


宅配でも来たのだろうか?
……いや、頼んだ覚えはないし。

今度うちに来る予定の親戚の子の荷物も
ダンボールで3箱程、既に到着している。
っていうか、3箱だけ?
荷物少なくない?そんなもん??




「?」


ふらふらとリビングにあるインターホンに向かった。もし宅配便じゃなかったら居留守をしよう。

そうしよう、来客を確かめると



「ん?男の人?」


背の高い男の人だった、
なんだやっぱり宅配の兄ちゃんじゃないか。
そう思い、なんの荷物が来たんだろう?と考えていると、

呼び鈴がまた鳴ったので玄関に向かった




「……。」


ガチャっと玄関を開けると、
背の高い男の人がそこに立っていた。

……あれ?荷物は?





「……あ、こんにちは」

「どうも、え、どちらさま?」


どういう事?
宅配便の兄ちゃんじゃないの?
じゃあ誰?何しにうちに??




「えと、松川さんですか?」

「え?ああ、はい松川です」


母親が再婚したので、私は去年から
「松川葵」になった。
別に名前なんてどうでもいいけど、
本当の私は「姫野 ミコト」だし




「えっと……。」

「あの、ここに来るように言われて」

「え?」

「松川一静といいます」

「松川?え、もしかして貴方がここで暮らす事になった親戚の松川さん?」

「はい」

「え」

ちょっと待って、
どういうこと?男の人?
どう見ても年上だよね?
私の事お姉ちゃんって言ってくれる子は?
毎朝、私を起こしてくれる妹系は??
金髪色白の可愛いメイドさんは???




「……女の子じゃない」

「えっ」

「……起こしてくれない」

「えっ、あの」

「あ、どうぞ。とりあえずお入り下さい」


落ち込んでいても仕方ないし
こんな所で話をしても仕方ない。



……でも女の子じゃなかったのかぁ。
妹欲しかったなぁ。







「どうぞ」

松川一静さんをリビングに案内して、
お茶をお出しした。

親戚の子って言っても、私より年上っぽいしもしかしたら大学生かな?って思った。
そういえば学生って言ってたし。




「ありがとうございます」

「えっと、とりあえずこれからを決めましょうか」

「……という事はやっぱり俺は、ここに住むんですか?」

「そうですね、あぁ荷物届いてますよ。空いている部屋に置いて置きました。」

「……ありがとうございます」

「えっと、その、松川一静さんはおいくつですか?」

「今年高校一年です」

「え?」


高校一年?
え?どういう事?


……同い年なの?




「老けてる……。」

「!?」(ガーン)

「あ、いや、ごめんなさい!私も高校一年です!同い年です」

「あぁ、そうなんですか」

「あ、敬語じゃなくてもいいですよ?」

「……でもこれからお世話になりますし」

「私が敬語じゃなくてもいいって言っても?」


ちょっと面倒になってきたので、
ため息混じりで松川さんにそう言った。




「……わかった」

「うん」

「あの、他にご家族は?」

「え?私一人だけど?」

「えっ」

「母は別居、再婚して、新婚生活楽しんでる。ついでに言うともうすぐ子どもが生まれる」

「いや、あの」

「うん?」

お茶を飲んでいると、松川さんが恐る恐る話しかけてきた。私は何か変な事を言っただろうか?




「その、嫌じゃないの?男と二人で暮らすって、しかも今日初めて会った男と」

「いや別に?というか私、母親の言うことは絶対で拒否権とか無いんだよね。私は私で好きな事やらせて貰ってるし」

「……本当に俺と一緒で大丈夫?」

「大丈夫だって、というか松川さんは他に行く所あるの?」

「……。」

「じゃあここに住みなよ、私は好きな事やってるから松川さんも自分の好きな事やればいいよ」

「好きな事……?」

「私は漫画が描きたい。あ、そこにあるのは私の漫画が掲載されてる雑誌ね、松川さんはないの?やりたい事」

少女漫画の雑誌を手に持って、ぽかんとしている松川さんにそう言った。というか少女漫画の雑誌がすっごく似合わないね松川さん。うーんやっぱり大人っぽいな松川さん。同い年に見えない。





「やりたい事……。」

「うん」

「……バレー」

「バレー?部活?」

「そう、バレー部に入りたい」

「おーいいじゃん、松川さんって身長高いし」

「え、でも、いいの?」

「なんで?やりたいならやっちゃえばいいじゃん、高校生活楽しもうよ」

「……ありがとう」

「さーてと、じゃあ行こうか松川さん」

「えっ」

「だって生活用品、色々といるでしょ?お金なら預かってるし、私も買い物行きたいし、行こうよ」

「……ありがとう、助かる」

「いえいえ」

「あ、あと松川さんじゃなくていい、お互いに「松川」だし」

「ああ、そっか」


私も最近「松川」になったからつい、
じゃあなんて呼ぼうかな…?



「……一静君?」

「うん」

「分かった、じゃあ一静君ね。着替えてくるからちょっと待ってて」


あ、ちなみに一静君の部屋はこっちだよ、と彼を空いている部屋に案内した。机とかベッドとかは母が使っていた物がそのままの残してあるので自由に使ってもいいと伝えて、私は自分の部屋に向かった。








(家族が、増えました)


妹系ではなく、男子高校生だったけど。
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