同居始めました | ナノ 32






「ねえ、ゆーちゃん、彼氏ってどこに売ってるのかな」

「突然どうしたのよ?」


お昼休みに友達のゆーちゃんとお弁当を食べながら話をしていた。彼氏を作ってみようと思い立ったものの、作り方なんて分かるはずもなくあっという間に夏休みも終わってしまった。



「彼氏欲しい、でも彼氏の作り方が分からない」

「葵の事だから漫画のネタの為に彼氏が欲しいんでしょ?だいたいね彼氏の作り方が分かってたらみんな苦労はしないの!」

「確かに、でもうちのクラスは彼氏持ち多いよ?」

「うちはうち、よそはよそ!ていうか葵って彼氏いなかった?」

「え?いたっけ?」

「ほら、夏休み前に一緒に勉強してた……背の高い男、松川……なんだっけ?あれって彼氏じゃないの?」

「ああ、一静君の事?」

「親戚なんだっけ?仲良さそうだったから付き合ってるのかと思ってたけど、結局の所二人って付き合ってないの?」

「付き合ってないよ!だって家族だし、付き合うとかそういうのは」


一静君は親戚で、兄妹のような感じ……?
あ、でも兄妹って思うのは嫌がってたかな?





「家族ねぇ……」

「何?」

「もしかしたらさ、家族だと思ってるのは葵だけかもしれないじゃん?向こうは葵の事が好きだったりして」

「え、一静君が私を?うーん、それはないかな。だってそんな風に見えなかったし、流石に一緒に住んでたら気付くでしょ?」

「いや葵の事だから気付かない可能性が……」

「えっ」


いや、でも、ほら、
一静君が私なんかを好きになるはずがない






「葵はどうなの?松川一静の事、ちょっとはいいなとか思わないの?彼氏にしたいとか」

「え、うーん……一静君みたいに優しい彼氏がいたらいいなとは思うけど、流石に付き合いたいとかは本人が嫌がるんじゃないかな」

「でもそれって松川が葵の事好きだったらいいんでしょ?葵の中で松川は彼氏として対象なんでしょ?」

「わぁ、ぐいぐい聞いてくるね……まぁでもそれは一静君が私の事を好きになってくれたらの話でしょ?」

「まぁそうなんだけどさ」

「一静君にもきっと好きな人とかいるだろうし、私と付き合うなんてないと思うよ」

「何が起こるか分からないよ恋愛ってヤツは」

「何それカッコいい!」

ゆーちゃんのイケメンな台詞をメモ帳にメモをしながらお弁当を食べて、恋愛トークをわいわい楽しく話していると、






「松川〜!彼氏来てるよ!」

「え?」


教室の前の方から私を呼ぶ声が聞こえた。

彼氏?
私、彼氏いないけど?と目線を向けると、そこには私の方を見る一静君の姿があった。






「一静君、どうしたの?」


急いで一静君の所に行くと、
近くにいたクラスメイトがニヤニヤしていた。

いやだから彼氏じゃないってば!




「葵さんの体操着が俺の鞄に入ってたから持って来た」

「え!あ、本当だ。これ私のだ」



明らかに一静君には小さい体操着(半袖)、間違えて一静君のバッグの中に入ってしまったらしい。

危ない危ない、5限目体育だった。

あやうく見学になる所だった。





「ありがとう一静君、全然気付いてなかった。一静君は自分の体操着あった?」

「俺のはあったから大丈夫」

「そっか、良かった。でも本当にありがとう、間違えないように気をつけるね」

「俺も気付くのが遅れてごめん」

「ううん」

「あと、俺って葵さんの彼氏になってるみたいだけど……」

「ご、ごめんね、クラスの子達が勘違いしちゃってて…ちゃんと訂正しておくから!本当にごめん!」

「葵さん」

「ん?」


呼ばれて、パッと上を見上げると
一静君が私の耳元に口を近付けて来た。


そして小声で私に囁いた。






「別に訂正しなくてもいいよ(小声)」

「え、でも」

「俺は葵さんの彼氏って言われて嬉しいけど?(小声)」

「……え?」

「じゃ、また」

「え、あ、うん。じゃあね」


自分の教室に戻って行く一静君を見送って、すとんっと、自分の席に座った。






「おー、噂をすれば彼氏の登場だね、で?何の用だったの?」

「あ、体操着、間違えて入ってたみたいで」

「へー、で?」

「え?」

「なんで葵はそんなに顔が赤いの?」

「……やっぱり赤い?」

「うん、松川になんてか言われたの?」

「いや、えっと」

「なになに?告白でもされた?」

「そういうんじゃないんだけど、私の彼氏って言われて嬉しいって……」

「なにそれ」

「だよね、冗談に決まってるよね」

「いやそうじゃなくて、松川がそう言うって事は葵の事が好きなんじゃないの?どうなの?」

「え、でも好きって言われたわけじゃないし、冗談でそう言ったのかもしれないし」

「もういいじゃん付き合っちゃえば?」

「……そういうわけには」


もし、一静君が私の事を好きだと言ったら?
私は彼と付き合えるのだろうか?


家族だと思っていたけど……
私は向き合う事が出来るんだろうか?






(ていうか影川が教室に来た松川を睨んでたんだけど、あの二人って仲悪いの?)
(え?知らない……)
[ 33/35 ]
[*prev] [next#]

×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -