同居始めました | ナノ 18

この度、
再婚した母に子供が産まれました。





「うう……」

「……葵さん、泣き止んで」

「無理……。」


私はというと感動して泣いてしまった。病院の廊下でひたすら泣きじゃくっていると一静君が頭を撫でてくれた。




「一静君、」

「うん?」

「母親って凄いね、赤ちゃんって凄いね、むしろ生命って凄いね、あんなに小さいのに頑張って生きてるんだよ、そりゃあ守りたくなるよね、いいなぁ赤ちゃん、すごいなぁ赤ちゃん」

「えっと、子供欲しいの?」

「いいいいいいらないよっ!? まだ高校生だし! 赤ちゃんの作り方分かんないし!」

「ああ、赤ちゃんは」

「教えてくれなくていいから!」


大丈夫だからっ!
ちゃんと分かってるから!
保健体育はちゃんと勉強したから!





「あ、夜遅くなっちゃったね、明日また病院に行くし、今日は帰ろうか」

「分かった、そういえば葵さん」

「ん?」


病院から出て家へと帰る途中、
一静君が困った顔して聞いてきた。





「葵さんて、及川と仲良いの?」

「及川君? うーん、及川君とは仲良くなりたいかなー」

「!?」

「だってイケメンだし! きっと漫画のネタになりそうな話がいっぱいありそうじゃない? 女の子にもモテてるし、青城の王子様って呼ばれていたりしないのかな?だってイケメンだし」

「……どうだろ」

「一静君から見た及川君ってどんな感じなの?」

「及川は、顔は良いと思うけど、部活中とか女の子にキャーキャー言われてて虫唾が走る」

「……そ、そうなんだ。」


私もこの間バレー部にお邪魔した時にキャーキャー言っちゃってけど、もしかして一静君は不快だったのかな。あれか、モテる人ってやっぱり良い目で見られないのかな??


及川君は王子様タイプのイケメンだしなぁ。なかなか居ないんだよねぇ、王子様タイプ。岩泉君も格好良いけど、王子様っていうより騎士って感じかな。



あ、一静君はなんだろう?
でも一静君は大人っぽくて格好良いなぁ。




「うん、私は一静君が好きだなぁ」

「!?」

「優しいし、男らしいし、一緒に居て楽しいし」

「え? でも及川の事が好きなんじゃないの?」

「うん、好きだよ。是非イケメンの及川君とは仲良くなって色々なネタ……じゃなくて話を聞きたい」

「及川が持っているネタ目当てだったんだ」

「うん」

「そんなハッキリと、まぁ正直で良いと思うけど、でもあんまり他の男に構われると」


そこまで言って、それ以上言うのはやめた。葵さんが他の男に構っていて何だと言うんだ。これじゃ俺が葵さんを取られて駄々こねてるみたいじゃないか。




「(いや、拗ねているのか)」


だって最近の葵さんは及川の事ばっかり気にしてるし、及川は葵さんに付きまとわれて困ってるっていうか、どっちかというと気になり初めてるし。



ねぇ、葵さん


俺の事も見て欲しいんだけど


俺の事も聞いて欲しいだけど






「葵さん」

「ん?」

「最近さ、及川の所に質問しに行ってるんだって?」

「うん、漫画のキャラ設定の参考にしようかと思って、おかげで色々とイメージが浮かんできたよ」

「じゃあもういいの?」

「及川君?」

「そう」

「うん、あとは資料用に及川君の写真を何枚か撮らせて欲しいかなーって思ってる」


そう言って彼女は、鞄から出したデジカメを見せて来た。




「……そっか」

「締め切りもあるし、そろそろ部屋に引きこもるかも」

「あんまり無理はしないでね」

「うん、いつもありがとう一静君」

「……ねぇ、葵さん」

「ん?」

「夜道も暗いので、漫画の参考ついでに手をつないでもいいですか?」

「なんで敬語?」

そう言って手を差し出すと、一静君はぎゅっと掴んできた。相変わらず大きな手だなぁ。






「俺も絵が上手かったらいいのに、そしたら少しは葵さんの手伝いが出来たかもしれない」

「いやいやそこはバレーじゃないんだ? 今度練習試合でしょ?」

「あれ、練習試合があるって言ったっけ?」

「及川君が言ってた」

「……ああ」


なんかやだな、
及川と葵さんが仲良いのって。






「ねえ葵さん」

「ん?」

「嫉妬する男ってどう思う?」

「また突然だね、うーんそういう話は書いた事ないけどやっぱり男の人も嫉妬するんだね、今度考えてみようかな」

「男だって嫉妬するよ」

「一静君も嫉妬するんだ?」

「……まぁね」

「そっかぁ、一静君が嫉妬するほど好きな子がいるんだね、ってあれ? 一静君って好きな子いるの? ていうか彼女出来たの?」

「好きな子はいるけど、今は彼女いない。告白するつもりもないし、そもそも報われる気がしない」

「弱気だなんて一静君らしくないね、今はって事は彼女いた時期があったんだね」


そりゃまぁデートにも慣れてたし、キスも慣れるみたいだし、手を繋ぐ事にも抵抗無さそうだし、なるほど彼女がいましたっていう余裕か。なるほど。



「いたけど、長くは続かなかった」

「是非とも当時の感想を」

「勘弁して」

「……はい」


少しでもリアルな話が聞けたらいいなと思ったんだけど、流石に駄目か。





「この際、頑張って彼氏作ってみようかな、聞くよりその方が早い気がする、聞くより慣れろっていうし、うん」

「え」

「一静君、手が痛い」


突然どうしたのか、
一静君が手をキツく掴んできた。






「え、葵さん、彼氏作るの?」

「うん、せっかく高校生だし、頑張ってみるよ。漫画は大変だけどいつまでも恋愛から逃げてちゃ駄目だろうし、やっぱり青春はしないとね」

「……。」

「?」


自宅へと帰る夜道、何があったのか一静君は急に黙り込んでしまった。お腹でもすいたのかな?







(彼女が恋愛挑戦宣言をしました)

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