同居始めました | ナノ 14




「というわけで一静君、勉強しよう」

「テスト勉強ね」

もうすぐテストという事でせっかくだから、一静君と一緒に勉強しようという事になった。同学年だからテスト範囲も一緒。




「テスト勉強って嫌い。ていうかテストが嫌い。なんでこんなに頻繁にやるの?年に一回でいいじゃない」

「それは俺も同感だけど、赤点と追試は嫌だからやれる事はやっておこう。」

「貴重な放課後を死守するには赤点回避かぁ」

「テストを嫌がるわりには葵さんそんなに頭悪い方じゃないでしょ?」

「……平均くらいかな」

「なら大丈夫でしょ、授業中に寝てるわけじゃないし」

「……。」

「えっ」

もしかして寝てるの?と一静君が困った顔で見て来た。そりゃまぁ、締め切りが近い時は睡眠不足で授業中は寝てしまう事が多い。けど友人にノートを見せて貰い一応はなんとかなっている。不安はあるけど。



「分からないところは教えるから」

「一静君大好き!」

「……。」

「?」

「そんな簡単に大好きとか言わないで」

「ご、ごめん」

思わず口に出てしまったが、一静君はそう言われるのが嫌だったようで目を逸らして私にそう言ってきた。




「ごめんね」

「いや、あの、嫌だったとかじゃなくて、大好きとか言われると俺も勘違いするから」

「え、勘違いするの?」

「まぁね、俺も言われ慣れてる方じゃないから、って何をメモしてるの?」

「好きだと言われて勘違いしちゃうヒロインの設定」

「……。」

「?」


一静君のおかげでテスト勉強は捗った。
ついでに言うと私達の集中力は切れた。

一静君は何故か私が描いた漫画読んでるし?私はボーッとテレビを見ている。




「葵さんってさ」

「ん?」

「キスした事あるの?」

「え、ないけど?」

「そうなんだ」

「うん」

「……。」

「……。」



だから何だと言うんですか一静君んんん!!?


キス?何でキス??
あ、もしかして私の描いた漫画読んでるから?そりゃあキスシーンも描くけどさ!




「……あの、どうして聞いたの?」

「ん? ああ、この漫画に描いてあるキスシーンがやけにリアルだなぁって思って」

「ああ……そういう事、した事は無いけどいろんな人に体験談とか聞いたり調べたりして描いたよ。私にはそういう相手居ないからこればっかりは描くの難しかったよ」

「そうなんだ」

「うん、モデルが居てもこういうのって苦手だなぁ、未知の世界で」

「じゃあさ」

「うん?」


一静君が読んでいた少女漫画を閉じて、私に近付いてきた。






「俺とキスしてみる?」

「……え。」


目の前には妖艶に笑う一静君の顔。というかそんな低ボイスで言わないで一静君。



「え、あの……えと」

「する?しない?」

「一静君、からかってるの?」

「んー、どうだろ。葵さんの漫画の参考になるかなと思ったのかな」

「ああ、そういう」


そう言われてもいきなりキスなんて。

いやでもこれを逃したらキスなんてこれから先、いつ経験出来るか分からないだろうし、やっぱり少女漫画にはリアリティが必要だろうし、でも急にキスなんて……でも一静君がせっかく参考になるかもって言ってくれてるし。





「……うーん」

「ま、冗談だけ……」

「うん、いいよ!」

「ど、え?

「漫画の参考にしたいし一静君お願いしっ、」




え。



まじですか。

…唇になんか当たってる。

一静君?一静君だよね??





一静君にキスされてるのこれ。




「……っ」

ていうかどうやんのこれ。
どうやって息すんの!?


あれ?一静君目ぇ瞑ってる?
私も瞑った方が良いのかな?



「……んっ」





ていうか。

あの。


ちょ、舌入ってきたんだけど。

ちょっと待ってファーストキスで舌入れるって、ああもう、色々と思考が追いつかない。




「……っ、はぁ……。」


あの、

一静君。


キス上手くないですか?







しばらくすると、
一静君は唇を離してくれた。




「……。」


私は思わずソファにあったクッションに顔を押し付けた。






「何してるの?」

「……心を落ち着かせてる。なんか色々と思考が追いつかない」

「そう」

「……ねぇ、一静君ってキスした事あるの?」

「あるよ」

「……だよね」


した事がなかったら、
あんなにキスが上手くないだろうし。






「うー……。」

何だろう。
キスした途端に急に恥ずかしくなってきた。いやこれでもう私はリアリティに溢れたキスシーンが描けそうだけども!だけど!





「大丈夫?」

「……うん、少し落ち着いた」

「そう、良かった」

「えと、ありがとう一静君、おかげ様で良い少女漫画が描けそうです」


まだ恥ずかしくて

一静君の顔が見れないけどね。






「……えっと、その」

「ねぇ、葵さん」

「ん?」

「もっかいしてもいい?」

「……キス?」

「そう」

「……駄目」

「そっか」

「もっかいしたら多分私、爆発する」

「それは困るな」

「うん」


私はもう一度、
クッションに顔を押し付けた。





今は同居人の顔が見れません……。






(初めてのキスはコーヒーの味でした)


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