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中学三年の終わり



今まで当たり前だと思っていた生活は
あっという間に終わりを告げた。





唯一の身寄りがなくなって、
俺は親戚の家に引き取られる事になった。

まぁそうなるんだろうなと、
……どこかで予想はしていた。


きっと親戚と言っても見知らぬ他人の
世話になるんだろうなと覚悟していた。



これから先の未来に期待してはいけない。そう思う事にした。







「(もうバレーは出来ないかもしれない)」


サイズが少し小さくなったバレーシューズを手に持ってそう思っていた。これから世話になる身だ、バレーもそうだが部活に入るなんて贅沢は出来ないかもしれない。



けどこのシューズを捨てる事は出来なかった。



引っ越しで荷物をまとめている時も
バレーだけは捨てられなかった。













「(ここか)」


そんな心情で、事前に教えて貰っていた住所の場所に行き、これから自分が世話になる家を訪ねた。

意外にも前に住んでいた所から近かった。ここからなら春から通う高校も近いかもしれない、というかとても近い。


宮城のとある街にある、
とても大きなマンション。


これから世話になる人達は
大きいマンションに住んでるんだな……と思った、もしかしたら金持ちか、それとも大家族なのか……色々考えたがキリがなかった。





これから自分がお世話になる人だ。

どんな人達なんだろう……と、「松川」と表札のある部屋のチャイムを押した。






……押したが、反応がなかった。




「(もしかしたら留守なのか?)」



もう一度、呼び鈴を押すと反応があった。良かった、誰かいるみたいだ。

どんな人達なんだろう
怖かったらどうしよう
邪険に扱われたらどうしよう


不安で胸がいっぱいだった。






「!」


開いた扉の向こうにいた人物に驚いた。
てっきり年配の人が出てくるのかと思ったら、自分と年の変わらなそうな女の子がそこにいた




その女の子の名前は

「松川葵」

彼女は俺の親戚らしいが、
どういう繋がりで親戚かは謎だった。
遠い親戚……という考えで

ひとまずは良いらしい




それよりも驚いたのが
彼女がこの広いマンションで


一人暮らしだという事だ




何が問題かと問えば、
そんなのたくさんある。

第一、俺は彼女と二人で暮らして行くいう事実にまず挙手して問いたい。何故こうなったのかと。


「親戚の家にお世話になる」
こう書けば確かに現在の環境に当てはまる。



しかし中身は
年頃の男女が一緒に暮らすというものだ。





「(だからと言って、俺に拒否権はない)」

身寄りのない自分は他に行く所がない。
だからここに来たんだと再認識した。




しかし、もう一つ驚いたのが
彼女「松川葵」が俺と同居する事になんの疑問も嫌がる顔もなかった事だ。


普通はこの状況を
おかしいと思うんじゃないだろうか?



しかし、
彼女は嫌な顔ひとせずに
淡々と引っ越しの手伝いをしてくれた。
俺に必要な物も全て買い揃えてくれた。


その姿は俺よりもしっかりしていた。
……きっと彼女は今まで一人で生きて来たんだと



そう思った。





何よりも一番嬉しかったのは

彼女に「私は好きな事をやるから、好きな事をすればいいよ」と言ってくれた事だ。




バレーが高校でも出来るという事が
何よりも嬉しかった。

新しいバレーシューズを履いて
バレー部に入部する事が出来た。

これは全て彼女のおかげだ。



彼女は俺にたくさんのものをくれた。
両手で抱えきれない程に幸せだと思った。




「(なら俺も彼女の為に何かしよう)」

彼女の、葵さんの為なら
俺が出来る事全てを彼女の為にしようと、



彼女が俺に「幸せ」をくれたなら
俺も彼女に「幸せ」をあげようと、






俺が俺で、俺らしく生きる為に
彼女がくれた優しさを


俺の精一杯の優しさで返そうと

そう決めたんだ。






(彼女の為に俺が出来る事を)
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