35、文化祭準備中に現れた幼馴染T───────----‐‐‐ ‐
まだまだ暑いこの季節。
青葉城西の文化祭まであと2週間程となりました。
「岩泉のクラスはさー、もう出し物決まった?」
「5組は焼きそば、花巻のクラスは?」
「え、俺のクラスも焼きそばなんだけど」
「マジか……被るとかあんだな」
「まぁ、在り来たりだしな」
男子バレー部の部室で文化祭の話していると、そわそわした及川が近付いてきた。なんだこいつうぜぇ。
「へぇー、岩ちゃんとマッキーのクラスは焼きそばなんだー、ちなみに俺のクラスはなんだと思う? え? 知りたい? 知りたい?」
「花巻のクラスが焼きそばって事は葵もだよな、クラス一緒だし」
「まーね、ちなみに焼きそばって言っても普通の焼きそばじゃないよ」
「あれ!? 二人共俺の話、聞いてる!?」
岩泉と花巻は、話しかけてきた及川を無視して文化祭の話をしていた。
「あー、そういえば俺んとこも普通の焼きそばじゃつまんねーって言ってたぞ」
「何? どんな焼きそばすんの?」
「【漢の焼きそば】だってさ、簡単に言えば激辛焼きそば。辛さにチャレンジする奴求む!って感じ」
「なんだそれ、岩泉のクラス面白れーのな」
「花巻んとこは?」
「……あんまり言いたくないけど【恋が叶う焼きそば】になった」
「ねえ二人共! 及川さんの話も聞いてよー」
「なんだそれ? 恋が叶う?」
(また意味わかんねー事になってるんだな)
「クラスの女子がやりたがってさ、なんかピンクの焼きそば作るんだって。女子達で盛り上がって男子は置いてきぼりだったわ」
「ピンクの焼きそばって……どうなんだよ」
「俺もどうかと思う」
「……ぐすっ(泣)」
「……。」
「……。」
((あの及川が泣いた!?))
「お、おい、男が泣くなよ」
「お、及川……? 6組は何の出し物やんだ?」
「よくぞ聞いてくれた! 流石マッキー!!」
「「(うっぜぇ)」」
二人はため息をついた。
「俺のクラスはねっ、コスプレ喫茶になったよー。なんか俺がいれば売り上げに貢献できるから「やれ」って言われた」
岩「顔か」
花「顔だな」
「まぁ、俺もクラスの為になるなら頑張るよー」
うきうきした様子に、岩泉と花巻はまたため息がでた。まーたどうせモテて困っちゃうと言い出すんだろうなと容易に想像が出来たからだ。
「なぁ岩泉、部活って今週だけだっけ?」
「ああ、来週からは文化祭の準備で放課後は部活ねーな」
「ならバレーはしばらくお預けか」
「……体が鈍るな」
そうか、来週からはバレーが出来ないのか。
大会が近いのに動けないっていうのは辛いな。
「ねぇねぇ二人共! ちなみに俺は何のコスプレすると思う?」
「知るか」
「岩ちゃんもっと俺に興味持って!」
「はいはい」
「……葵には興味あるくせに(小声)」
「あ"?」
「ごご、ごめん岩ちゃん」
いやもう、本当にごめん!!
だから胸倉を掴むのやめよう?
「あ。そういえば岩泉。その顔どーした? あんま触れない方がいいと思ってあえて黙ってたけど」
ジャージの上を羽織りながら、松川が岩泉に聞いてきた。松川の言う通り、岩泉の頬には目立つ湿布が貼られていた。
上級生に殴られたのは3日前だが、
岩泉の頬は、まだ少し痛み赤くなっている。
「痛いの?」
「……少しな」
ちなみに岩泉を呼び出した上級生三人は、及川が録っていた音声が証拠となり、全員退学となった。元々、退学一歩前まで問題を起こしていた三人だったので、先生曰く今回の騒ぎがきっかけで退学の話が進められたようだった。岩泉には勿論、お咎めナシとなった。
「岩泉、何をやらかしたの」
「……なんでもねーよ」
「何でもないで出来る怪我?」
松川の一言に、岩泉が目を逸らした。
「まぁまぁ、そんな事より俺のコスプレなんだけどさー!」
「そういや松川んとこは何すんの?」
思い出したかのように、花巻が松川に聞いた。
「んー、うちのクラスはお化け屋敷」
「また大変そうなのを」
「ねぇ、お願いだから及川さんの話を聞いてよ……」
誰も構ってくれないと及川はいじけ出した。その姿を見させられた三人は揃ってため息をついた。
※※※※
文化祭が近くなり、いつもより学校内は賑やかで騒がしくなっていた。そして放課後の部活動は全て停止となり、
「ガムテープまだあるー?」
「ちょっとこれ押さえてー」
生徒のほとんどは教室で、近付く文化祭の準備に追われていた。
「ちょっと岩泉ィ、これ重いから手伝ってー」
5組でも女子を筆頭に、文化祭の準備をしていた。
男子のほとんどは力仕事になるので、岩泉達男子は女子達にあれをやってこれやってと言われていた。
「クッソ重いなこれ」
「岩泉は女子に人気だな」
「あ? んな事ねーよ」
「人気なのはその馬鹿力じゃね?」
クラスの男子に冷やかされながら、作業を進めていると、廊下の方が急に騒がしくなった。
「岩ちゃーん!!」
「あ"?」
クソ忙しい時に、及川の声が聞こえたので
岩泉は機嫌悪そうに振り向くと、
「どう? 岩ちゃん? 葵にそっくりでしょ?」
「……。」
女装をした及川徹が目の前にいた。
「わぁ! 徹君可愛いー!」
「すっごく似合ってるよー!」
及川の女装はやけに似合っていて、女子からは好評のようだった。ちなみに男子は無言で冷やかな目で見ている者と、そうでない者といた。
「は? ……お前、何してんの?」
何でスカート履いてんだ?
それに髪も……化粧もか?
「文化祭でやるコスプレを何にしようか悩んでたら、クラスの女の子達が化粧とかしてくれた! あ、これウィッグだよ。凄いでしょー?」
「……なんでそんなにノリノリなんだよお前」
(スカート履いて嬉しそうにすんなボゲェ)
「えー? だって興味あったし? っていうか女装した俺って葵に超似てない? 鏡を見て驚いちゃったよ! 流石双子だね、顔とか髪の感じとかそっくり!」
「葵はそんなにデカくねェよ」
(180cm超えた葵は嫌だ。)
「えー、似てると思うけどー?」
「それに葵はそんな風にヘラヘラ笑わねーよ」
「えー?」
(葵っていつもどんな感じだったかな? なんかこう……お淑やかで、落ち着いてる? でも家じゃソファに寝転がってゴロゴロしてだらしない時もあるし)
うーん?
「及川さんはもっとクールビューティーだぞ!」
「そうだそうだ! あと胸ももう少しある!」
「本物の葵ちゃんを連れてこーい!」
クラスの男子は、及川徹にブーイングの嵐だった。
「えー、もうちょっとクールな感じ?」
及川はうーん、と考え
ヘラヘラしていた顔をキリッとさせた。
「こう?」
「「「「っ!!!」」」」
その様子に、クラスの男子は驚いた。
「(似てる!)」
「(やっぱり双子だな)」
「(俺……間違いを犯しそう)」
クラスの男子の一部は顔を赤らめていた。
「どう? 岩ちゃん。葵ってこんな感じでしょ?」
「……似てなくはねーけど。やめろ」
「えー。あ、葵にも見せてこよっと」
「は?」
葵に見せる?
葵が見たら、怒るんじゃねーかソレ。
「じゃあねー、岩ちゃん&5組の皆さん!」
「またねー! 徹君!」
「また遊びに来てねー!」
「はーい!」
及川徹は5組を出て、そのまま葵のクラスである3組へと向かっていた。
「(あいつ……大丈夫なのか?)」
葵に怒られるんじゃないかと、
岩泉は心配になった。
「なぁ、岩泉。」
「あ?」
「及川徹の女装って、やべーな」
「葵ちゃんに、似過ぎだろ」
「惚れそうになった……」
「……似てるかもしれねーけど、あれは男だ。気をしっかりと持て」
「俺ちょっとトイレ行ってくる」
「(マジかよ)」
及川の女装は封印させた方がいいな。
このままだと被害が出る。
(主に一部の男子)
【おまけ】
「葵ー!」
「ん?」
「どう? 似合う? 女装してみた!」
「え、徹? 何やってるの? 化粧してるし……ちょっとスカート短くない?」
「えぇ!? そこ? 「似合う」とか言ってよー!」
「似合い過ぎて引いてる」
「そんなに!?」
「あー、でもそうやって化粧したり髪伸ばしたら私達似てるかもしれないね」
「でしょ? 岩ちゃんも「似てなくはない」って言ってたし!」
「え、岩泉君にも見せたの?」
「うん、葵はそんなにヘラヘラしてないって怒られたけどねー」
「……そっか。』
「あ! マッキーだ! どうよ俺の女装!」
「抱けと言われたら抱ける」
「何それ怖いよっ!!?」
「冗談、冗談」
「(……冗談に聞こえなかったんだけど)」
(終わり)
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