23、気付いたんだ、この気持ち───────----‐‐‐ ‐
葵がいた写真部室から体育館へ戻る途中、及川はしつこく聞いてきた。
「岩ちゃん聞いてる!?」
「……。」
「ちょっと岩ちゃんってば! なんで放っておくのサ! あの先輩絶対に危ないよ! 葵の貞操のピンチだよ!!?」
「……。」
後ろでギャーギャー言う及川を無視して、体育館に戻り
ボールを手に持った俺はサーブを思いっきり打ちまくった。決してイライラをバレーにぶつけてるんじゃないと自分に言い聞かせながら。
「葵に彼氏とか嫌だよ! しかもあんな爽やかイケメンとか! 顔は良いけど、あれ絶対性格悪いよ!!」
「(お前もな)」
「そりゃ、並ぶとお似合いだけどさー!」
「……。」
「岩ちゃんだって嫌でしょ!? 今までずっと葵を守るのは岩ちゃんだったじゃん!あんな先輩に取られてもいいの!?」
「うるせーよ、クソ及川。お前もそろそろ練習したらどうなんだよ」
「でも!」
「だいたい、俺が葵を守るのはアイツを守る奴が出てくるまでだ。それがあの先輩なんだろ、いいじゃねぇかお似合いならよ」
ボールを床にトンっと弾きながら及川に言った。
「あのデケェ先輩、葵の事が好きみたいだし、頃合いだったんだろ」
「本気で言ってんの!?」
「俺らがどうこう言っても仕方ねーだろ、決めんのは葵だ」
「そうだけど! 葵は!」
険悪な雰囲気に体育館はザワッとした。
花巻と松川は、喧嘩が多い二人だが、今回はいつもの言い合いとは違う、と感じ取っていたが、なかなか口を挟めないでいた。
「なんで岩ちゃんはそんなんなの!?」
「そんなのってどういう意味だ」
「葵に対して冷めてるんだよ!」
「そんなんじゃねぇよ、冷静に考えれば分かんだろ、いつまでも俺が葵を守る幼馴染でいられるわけじゃねえよ」
「でも葵は、岩ちゃんの事!」
「お前もいい加減に妹離れしたらどうだ、妹の彼氏全員に敵対する気かよ」
「岩ちゃんはなんで、そんなに」
「あ?」
「なんでそんなに葵に対して臆病なの!?いつからそんな風に考えるようになっちゃったの!?」
「はぁ!?」
「だいたい葵は!」
「葵は葵はって、うるせェよ! お前がそんなんだといつまで経っても葵に彼氏出来ねーぞ! バカ兄貴!」
「じゃあ岩ちゃんがずっと葵を守ればいいだろ! 」
大声をあげた二人に部員達はみんな心配そうに見ていた。いつもヘラヘラしている及川のいつもと違う様子に周りは驚いていた。
花「おい、二人共」
松「そのへんにしとけ、監督に怒られんぞ」
「は? なんで俺がずっと葵を?」
「だって葵と岩ちゃんもお似合いだよ!」
「なんだよそれ、葵が俺の事好きだって言えんのか? 」
「葵は岩ちゃんの事好きだよ!」
「幼馴染としてか?」
「!?」
「葵は、俺をそういう目で見てねーよ、それに俺が葵を守んのは幼馴染としてだ。ずっとはあり得ない」
「でも!」
「お前ももう分かってんだろーが」
「でも葵の事考えたら……」
「葵の事考えてんのはお前だけじゃねーよ」
「……」
「さっさとボール持てクソ及川」
「葵が」
「あ?」
「葵が岩ちゃんの事、異性として好きになればいいんだ! 幼馴染じゃなくて恋人同士ならいんでしょ! そういう事でしょ!?」
「ハァ!?」
そうだけど、
そうじゃねぇだろ!
本当に葵の事考えてんのか!?
「岩ちゃん、俺、あの先輩嫌いだ!」
「お前からしたら葵に好意向ける奴は全員敵だろ」
「岩ちゃん、葵の事好きになって!」
「前と言ってる事違ェぞお前」
前に「岩ちゃんに葵はあげない」って言ったのはどこのどいつだ。
俺が葵の事、好きになれ?
ふっざけんな。
(もうとっくに好きになってんだよ)
気付いたんだ、この気持ち
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