14、彼の気持ちと彼女の気持ち
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「……。」


真新しい制服に袖を通して、
鏡の前で回って見た。

白いジャケットなんて初めてだし、似合ってなかったどうしようかと、何度も何度も青葉城西の制服を着た自分を鏡越しで見た。






「葵ー、制服に着替えた?」

コンコンと部屋をノックする音と徹の声が聞こえた。準備はもう出来ているので、最後に手櫛で髪を整えて鞄を持って部屋の扉を開けた。





「ごめん。おまたせ、徹」

「似合ってるねー青城の制服」

「徹もね、ていうか似合いすぎ」

「かっこいい?」

「はいはい、かっこいいよ」

「なんか適当っ!?」


お互いに真新しい制服を来て、家を出た。













「おはよー、葵」

「おはよう、茜。」

私と茜は二人共、無事に青葉城西に合格し、春から高校一年生となった。





「私と葵は同じクラスだったよ、これで4年連続!」

「同じくクラス……!」


凄く、凄く嬉しかった。

思わず茜を抱き締めたら、
周りから凄い目で見られた。




「葵に抱きつかれるなんて、周りの男子達に妬まれそうだよ」

「大丈夫、茜が一番かっこいい」

「それ女子に言う台詞?まぁいいけど。ところで、あの集団ってやっぱり及川徹が原因?」


茜の視線の先には、女子が集まっていた。きっとあの集団の中心には徹がいる。





「いつもの事だよ、早く教室に行こう」

「アンタ、及川徹に対してドライ過ぎない? あれって一応兄貴でしょ、助けなくていいの?」

「兄だから、だよ」

「……ふーん」



相変わらず、
お互いの事を理解してんのねー


顔は似てないのに。









「あ、そーだ。葵」

「ん?」

「今年は岩泉君と仲良くね」

「!」


なんで岩泉君!?
別に喧嘩とかしてないし、




「あのっ、別に岩泉君は」

「別にさ、無理に絡めとは言わないけど、最初はまず岩泉の目を見て話しなさい、苦手意識を何とかしたら?」

「わ、わかった」

「距離取ってばっかりだと、岩泉に嫌われちゃうよ?」

「!」




嫌われ、る?






「(しまった言い過ぎた)」

「……そ、そうだね。嫌われちゃうよね、いやもう嫌われてるかも」

「うわ暗っ!冗談だって!大丈夫!葵は可愛いから!」

「……そうだね」

「聞いてる?」

「そうだね、嫌われてるね」


あ、もしかしたらもうとっくに嫌われてるかも。そーだよね、私って酷くて冷たい対応ばっかりだったし、





なんで私、
岩泉君に優しく出来ないんだろ

なんで、嫌われないようにすると
上手く話せなくなっちゃうのかな。







「……はぁ」

「葵」

「……なに?」

「私が葵の為に、岩泉と葵が仲良くなれる必殺技をお教えしよう!」

「岩泉君と仲良く? どうすればいいの?」

「簡単な事だよ」



茜は、ニコっと笑った。









「岩泉に抱きつけばいい!」











「……。」

「あれ?」

「……そ」

「そ?」

「そんな事したら殴られるっ!」

「はぁ? 流石に岩泉は女子に手は出さないでしょ。え、まさか殴られた事あるの?」

「で、でも徹はよく岩泉君に殴られてる!」

「あんたの兄貴は、ね。まぁいいからとりあえず試してみって」


なんか面白い事になりそうだから。










****






しまった、囲まれた。


今日は入学式だからって完全に油断してた。気付いた時には女の子達が自分を取り囲んでるし、葵はいつの間にか消えていた。(きっとこうなる事が分かっていて逃げたんだと思う)






「……あ、岩ちゃん! おはよー」

女の子に囲まれて困っていると、同じく青城の制服を来ている岩ちゃんを見つけた。




「……。」

「無視しないで岩ちゃん! 明らかに今「面倒臭ェ」って顔したでしょ!」



女の子達にごめん!と言って、

岩ちゃんの後を追いかけた。










「もう何で先に行っちゃうかなー、助けてくれてもいいじゃん」

「お前は高校でも相変わらずだな」

「羨ましい? ねぇねぇ岩ちゃん羨ましい? 岩ちゃんも女の子に囲まれたい?」

「うっせぇ! 羨ましくねーよ」

「でも酷いなぁ、岩ちゃんも葵も全然助けてくれないんだもん」



兄をなんだと思ってるのさ!

もうカフェラテ奢ってあげないし!






「葵も来てんのか」

「先に行っちゃったけどねー、葵ってばひどいよね、一緒に来てたのにそそくさと先に行っちゃうんだよ?」

「……。」

「あれあれ? なに、もしかして岩ちゃんは葵に会いたかったの? それとも葵の制服姿が見たかったの? 大丈夫、葵は青城の制服が似合ってたし、いつも通り男子達の目線を独り占めしてたよー」


本人は目立ちたくないって言ってたけど、あの顔じゃ無理だよねー。


流石俺の妹。


そこだけはそっくりなんだよねぇ。







「別に、葵に会いたいわけじゃねーよ」

「えー?」



でも明らかに今、
葵の事を気にしてなかった?



絶対、葵の事考えてたよね?








「残念だけど岩ちゃん、葵と違うクラスだったよ?」

「……で?」

「え? 残念だなぁって」

「そういうお前はどうなんだよ、葵と一緒なのか?」

「やだなー、兄妹は同じクラスになる確率凄く低いんだよ? 俺は葵と同じクラスになるのはもう諦めてるから」

「あ、そう」

「……。」


あんまり岩ちゃんが悔しがらないからつまらない。ちなみに俺が6組で岩ちゃんは5組。

葵は少し離れて3組らしい。
うーん、遠いなぁ。





「(早くバレーしたいなぁ)」






彼の気持ちと彼女の気持ち

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