7、なんとなく嫌だった
「お邪魔します」
「どうぞ」
研磨君のお家は電車に乗って学校からそんなに離れていない距離にあった。驚いたのは意外と私の家から近かった事。
けど小学校が違うのはこの辺は学区が違うせいかなって考えてたら、研磨君に「部屋、二階だから先に行ってて」と言われたので、言われた通りに二階へ向かった。
ネームプレートがかかった部屋に恐る恐る入った。
「……。」
部屋に入ってキョロキョロする。
雰囲気が私の部屋と全然違った。ぬいぐるみなんて一つもないし。あ、これが男の子の部屋か……なんて思いながら、転がっているバレーボールを拾った。ボールを見て、研磨君はバレー部なんだなぁって改めて思った。
そういえば、研磨君がバレーをしているところって見た事ないかも。どんな感じなんだろう? 研磨君は体育会系っていう感じじゃないし。もしかしたらあのまんまで変わらないのかも?
それはそれで、研磨君らしいかもしれない。
「……どうしたの?」
「あ、研磨君」
バレーボールを持って立っていると、グラスに入ったお茶を二人分持った研磨君が部屋に入ってきた。
「……座ってていいのに」
「男の子の部屋って初めてだから、ちょっと目で堪能していたの」
「初めて?」
「うん、私一人っ子だし。それに今まで男友達なんて居なかったから」
「え、じゃあ俺が初めての男友達?」
「うん」
「…………そっか」
「あ、16時。 研磨君ゲームしよう! イベントクエストが配信されてるかも!」
持っていたバレーボールを静かに床に置いて鞄から携帯ゲーム機を取り出し、研磨君の部屋にあるローテーブルの所に座った。
「(初めての男友達……か)」
てっきり葵には俺みたいな男友達なんてたくさんいると思ってた。だっておかしな顔せずに俺ん家に来たから、友達がたくさんいるんだろうなって勝手にそう思った。けど実際はそうではなく、意外にも葵に男友達はおらず、聞けば昔から家に引きこもりがちで友達と遊ぶなんて滅多になかったそうだ。
なんで俺と友達になってくれたのか、たまに不思議に思ってしまう。友達って言っても、一緒にゲームをするだけだけど。
「研磨君、早くー」
「待って、すぐ始める」
グラスをテーブルに置いて、自分の携帯ゲーム機の電源を入れた。ちらりと横を見れば、新しいイベントクエストを嬉しそうに待っている葵。
なんだか急に葵の事が心配になり、あとで葵に俺以外の男の家には行かないようにしてる言っておかなきゃ……と思った。
なんでそう思ったかは分からないけど。
なんだか葵が他の男友達の家に行くのは嫌だ。って感じになったから。
あ、何となくだけど……ショートケーキの苺を取られるような感覚に近いかもしれない。
(そういえば、研磨君がバレーやってるとこ見たいかも)
(別に見なくていいよ)
(えー、なんで?)
(なんとなく、別に見て面白いもんじゃないし)
(じゃあ今度見に行くね)
(……好きにすればいいよ)
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