6、近付いた距離







「あ……今日、部活無いんだった」

「そうなの?」




隣の席の孤爪君とはよく喋るようになった。


そして孤爪君がバレー部だと知って驚いたのもつい最近の話だ。まさか弧爪君が運動部だとは知らなくて、凄く意外で驚いた。今では「研磨君」と呼ぶような仲になり、研磨君も何気に私の事を名前で呼ぶようになった。

ゲーム中に呼ぶ時、いちいちさん付けで呼ぶのが面倒になったみたい。






別に嫌じゃないから良いんだけど。






てっきり研磨君も私と同じ帰宅部だとばかり思っていたから。バレーを昔からしてるなんて本当に意外だった。バレーをしている研磨君が想像出来ないって言ったら「俺も」なんて返ってきた。あれ? 本当にバレー部なんだよね?







「じゃあ今日はいつもよりたくさんゲーム出来るね」

「うん。葵も帰ったらゲーム?」

「勿論、16時から新しいイベントクエストが配信されるし。早く帰ってゲームしたいよ」

「……ああ、だからそわそわしてたんだ」

「研磨君も新しいクエストやるでしょ?」

「当たり前。あー……じゃあ家来る?」


あ、と
気付いたらそんな事を言葉にしていた。
思わず口に出してしまったが、やっぱり女の子が男の家にそう簡単に来るはずない。

そう思っていたが、





「いいの?」



彼女の答えは思っていた返事とは間逆だった。
え、危機感とかないの? とか考えたけど、きっと彼女の頭の中はゲームの事しかないんだろな……と思った。だって彼女はそういう人だ。







「……いいよ」

「たくさんゲーム出来るね!」


楽しみ、と葵はえへへと笑った。
教室に残っている男子生徒のほとんどが見惚れていたんだからきっと葵は可愛いんだと思う。
でも彼女の笑顔の理由がゲームの事だなんて、遠くで見ている男子は知らないんだろうな。



そういや、女の子を家に呼ぶのって初めてかもしれない。……というか葵が女の子って時々忘れる事がある。俺も結局ゲームの事ばかり見てるっていうのもあるけど、葵と一緒にいたりゲームをしたりするのはとても居心地が良すぎるというのが一番かもしれない。




あ、これが友達ってやつ?


ただ単に趣味が合うからかもしれないけど。





たまに一緒に居ないと、

なんかぽっかり穴が空いたみたいな感じになる。








「研磨君、今日やるクエストはねー」


俺ん家に向かう途中、葵は嬉しそうにゲームの話をしていた。彼女は本当にゲームが好きだ。

葵の話は全然苦じゃない。
ずっと聞いていられる。




気を使わなくていいから楽ってのが俺の中では一番。







一緒にいない日なんてない。
二人で話さない日はない。

いつも隣には葵がいた。





(あれ、この辺私ん家の近くだ)
(え)
(意外と近所だったりして?)
(……でも小、中って違うよね)
(だよねぇ)



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