5、ゲーム友達ってやつ







確かになった事がひとつある。





如月さんは俺が思っていた人と

全然違っていた。





きらきら世界の住人で、物静かで、大人しい人かと思ってたけど……本当はゲームの話になれば明るく喜んで話すし。

文庫本を読んでる姿とか似合いそうなのに
彼女の手には俺と同じ色違いの携帯ゲーム機。



「(本当、意外すぎて困るんだけど……)」




今はこうやって俺の机に椅子を持って来て座り、一緒に同じゲームのクエストをやっている。まさかこんな事になるなんて思ってなかった。だって俺と一緒にゲームをするなんて想像がつかないじゃん、だって如月さんだよ? ゲームとかしなさそうじゃん。なのになんで俺と一緒にゲームをしてるの?





「孤爪君、そっち行った」

「罠仕掛けてあるよ」

「流石! 早いねー」

「どうする? 捕獲?」

「捕獲の方がレア出るから捕獲で」

「わかった」


お互いに携帯ゲーム機を操作して、夢中になっているゲームのクエストをクリアしていった。そんな日々が毎日のように続いた。

昼休みだって、如月さんはお弁当を食べ終えるとすぐに携帯ゲーム機を片手に俺のところにやってくる。最初はそりゃ俺も戸惑ったけど、今ではそんな感情はどこかへ行ってしまった。



いつの間にか、如月さんとはよくゲームをする仲になっていた。まさかゲーム友達になるなんて思ってもみなかった。だって如月さんだよ? だいたい如月さんって、きらきら世界の住人じゃなかったの?






「本当、意外だよね。如月さんて」

「何が?」

「……ゲームとかさ、やってるイメージない」

「そうかな、別にゲーム好きを隠してたつもりは無いよ。ただ今までゲームの話しをする相手が居なかっただけ」


お互い自分のゲーム画面に視線を向けながら、二人は話していた。話しながらも、画面の中のクエストは順調に進んでいた。最初こそはそんな二人の様子に驚いていたクラスメイト達だったが、毎日のように続けばそれが当たり前になっていき、今までは気にする人なんて居なくなっていた。





「俺、如月さんとは絶対関わらないと思ってた」

「え……そこまで?」

「だってどう見ても、違う世界の人間だし」

「それって今も?」

「……まさか。もう形も影も残ってない。ちょっと前まで遠くで見つめていたい存在だったのに、どうしてくれるの」

「私さ、友達に「黙ってれば可愛いのにね」ってよく言われるんだけど、そういう事?」

「だと思う」

「そっか、どうも私はゲームの事になると素が出ちゃうみたい」




私から「ゲーム」というジャンルを抜けば、いたって普通の女の子が出来上がる。友達曰く私は「儚げな美少女」らしい。黙っていればの話だけどね。


そもそも「儚げ」って何?
もしかしたら、その時はたまたま徹夜でゲームしたから眠くて……他の人には儚げに見えただけだと思う。いや、きっとそうだ。







「あ、弧爪君の希望なら今からでも「美少女」を演じようか? 頑張るよ?」

「いやもう無理でしょ」

「そう?」

「だって今の如月さんが本物なんでしょ? 今更、偽物を見せられても困るし」

「うーんと、なんかごめんね」

「俺は……こうやってゲーム出来るからそれでいいし、別に謝る事じゃないよ」

「孤爪君は優しいね」

「………罠、仕掛けたよ」

「じゃあ爆弾行きます」

「うん」



本物とか偽物とか、別にどっちでもいい。
だって今が「如月葵」なんでしょ。

俺の知ってる如月さんはゲーム好きの女の子。
俺と気兼ねなく話せる……ゲーム友達。



「私、孤爪君と友達になれて良かった」ってこの間言っていたから、友達って事で良いんだと思う。別に俺も否定しなかったし。




なんていうか……。



如月さんと一緒にいるのは、楽……かな。





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