4、本当の姿って?
「!」
同じクラスの男子生徒が携帯ゲーム機を学校に持って来ていたのを目にして、すぐにクロに確認したら別に学校に持ってきても没収されないらしい。(授業中は除く)
それを知ってから次の日には、鞄の中に携帯ゲーム機を入れて持ってくるようになった。
休み時間や暇な時間に携帯ゲーム機を鞄から出してやりかけのゲームを立ち上げる。おかげでクエストがすいすい進む。
学校に持って来てもいいなら、早く持ってくれば良かった……と思いながらボタンを押して操作してクエストを進めた。
「(……つよい)」
次々とクエストを進めていけば、今までとは明らかに強いモンスターが出てきた。決して弱い装備ではないから倒せると思ったけどいつもギリギリで負けてゲームオーバーになってしまう。クエスト失敗の画面を見てまたため息が出た。
強くても、このモンスターのどこかに弱点があるんだろうなぁ……と、もう一回同じクエストに挑んだ。しかしまたゲームオーバー。
何回やっても、こいつが倒せない。
キークエストになってるから倒せないとランクが上がらないし、正直困った。こういう場合は何回かやって、モンスターの弱点を見つけるしかないな……そうじゃないと先に進めない。こんなところで立ち止まっている場合じゃないなと、再び指を動かした。
※※※※
昼休みになり、
私はいつもの友達と一緒にご飯を食べていた中庭から教室に戻ると、その光景に驚いて思わず目を開いた。
だって隣の席の孤爪君が、携帯ゲーム機を持っていたから。しかもそのゲーム機は今私は夢中になっているやつだった。
「(え、学校に持って来てもいいの?)」
知ってたら私も持ってきたのに!
やりかけのクエスト進めたいし、ランクも早く上げたい。帰宅するまで我慢してたのに!
って、そういえば孤爪君は何のゲームをしているんだろう?何かムッとした表情だし。なんだか難しそうな顔をしている……弧爪君ってこんな表情するんだ、いつも眠そうな表情だったからちょっと意外。
あ、手が止まった。
……もしかして行き詰まってる?
そーっと、後ろから孤爪君がやっているゲームの画面を覗いた。孤爪君はゲームに夢中で私に全く気が付いていないようだ。
「(……あ!)」
ゲーム画面を見て、思わず声が出そうになった。
だって孤爪君がやってるゲーム、最近発売されたゲームで今私が夢中になっていて、毎日のようにやっているゲームだったから。
孤爪君もこのゲームやってるんだ。
なんだか嬉しかった。
「……。」
どうやら孤爪君はモンスターが倒せなくて手こずっているようだ。確かにこのモンスターは癖があって弱点が見つけにくい。私も正直手こずった。
けど、今は違う。
「今、そのタイミングで音爆弾使って」
「……え?」
「フラフラしてるから今のうちに頭狙って。そこの防御力弱いから」
孤爪君は、私が急に後ろから話しかけてきたから凄く驚いていたけれど、すぐにゲーム機を操作してモンスターの弱点を攻撃していた。
「(あ、孤爪君、凄く上手い)」
「あ」
しばらくしてモンスターは倒れ、
画面にはクエストクリアの文字。
「やった! その武器強いね!すぐ倒せたし」
「え。この武器、イベントをクリアすると作れるようになるけど……」
「え!? そうなの? 知らなかった……」
今の武器は凄く強かったし、帰ったらすぐにイベントクエストやらなきゃなぁ、今日中に作りたい! また寝る時間がなくなりそうだけど。
ああ早く帰りたい!!
「……ねえ、もしかして如月さんもこのゲーム持ってるの?」
「うん、持ってるよ。今一番ハマってるゲームだし、寝る暇なくやってるよ。学校にゲーム機を持って来てもいいなら私も持ってくれば良かったなぁ」
「……なんか意外」
如月さんがこのゲームをやってるなんて、
さっきもなんか凄いゲームに詳しそうだったし、さっきのモンスターの弱点も知ってたし……もしかして結構やってる?
「あ、もし良かったら一緒にやろうよ。集会所クエストやらない? あれって一人じゃ受けれないクエストもあるからなかなか進まなくって……」
「……いいよ」
「やったー、私の周りでこのゲームをやってる人居なくて」
「……俺の周りもいない。これ、発売されたばかりだし」
「面白いっていうか、やり込み感あるよね」
「……ああ、それわかる気がする。クリアしたいからいつの間にかずっとやってるし」
「おかげで寝不足……」
「でも強い装備欲しいし」
「だよね!」
「うん」
あれ?
如月さんてこんな人だっけ?
もっと違う人だと思ってた。
(いつも儚げな様子で)
(真面目で優等生なんて言われていて)
(ゲームの話になると、普段と違う笑顔を見せる)
(……あれ?本当に如月さん?)
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