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合宿二日目の今日は特に暑かったらしく、私だけでなく生川のマネージャーも熱中症で倒れたらしい。
ちなみに私はあの後、もう大丈夫だと何度も言ったが、クロ先輩と研磨君に「休んで」と強く言われてしまったのでご好意に甘えてしばらく休んだ。
しかし、本当にしばらくだけ休んだ。
時間はおよそ1時間くらい。
体育館に戻り、再びマネージャーの仕事をしているとすぐに研磨君に見つかってしまった。
「葵、もう大丈夫?」
「うん、大分楽になったよ。ありがとう」
「そっか、でみ何かあったすぐに俺かクロを頼って」
「……。」
「どうかした?」
「ううん、赤葦君にも同じ事言われたなぁって思っただけ」
「……。」
「研磨君、そんなに私って危なっかしい?」
「そんな事ないと思うよ。心配なだけ」
「そう?良かった。じゃあ何かあったら研磨君に頼っちゃうね」
「うん」
研磨君はもう少しで音駒と梟谷の練習試合が始まるから一緒に行こうと言ってくれて、二人でコートに向かった。
コートに向かうと案の定、たくさんの人に心配された。なんとか休んで回復した事を伝えると、良かった!と言って貰えた。
たくさんの人に迷惑かけちゃったなぁ……と少しだけいじけてしまった。
もっと頑張ろう私。
「如月さん」
「赤葦君!さっきはありがとう」
「もう大丈夫?」
「おかげさまで、さっきは本当にご迷惑をおかけしました」
「まだ少し顔色が悪いみたいだから、無理しないでね」
「ありがとう、気をつけるよ」
「ところでさ」
「ん?」
「孤爪と如月さんって付き合ってたりする?」
赤葦君に突然そんな事を小声で聞かれた。
「私と研磨君が?付き合ってないよ?」
「本当?」
「うん、友達だけど、どうしたの?」
「いや、気になっただけ」
「?」
どうしたんだろう?
どこをどう見て、私と研磨君が付き合っているように見えるんだろう?
研磨君が嫌な思いをしちゃうじゃないか。
「……うん。」
「赤葦君?」
「あの時さ、」
「え、あの時?」
「……ごめん、やっぱりなんでもない」
「え、あ、うん?」
一体、赤葦君は
私に何を言いかけたのだろう。
「(どうしてあの時、如月さんは倒れた時に「研磨君」って呟いたの?)」
赤葦は純粋に気になった。
「お疲れっした!」
今日の練習試合の日程も全て終わり、私は片付けをしていた。あれから私も体調が悪くなる事もなく、いつもどおり、マネージャーの仕事をした。
「葵、」
「研磨君、どうかした?」
「手伝う」
「……え、でも研磨君は疲れてるでしょ?私もう少しで片付け終わるから」
「じゃあ待ってる」
「うん、あ、じゃあ一緒に御飯食べに行こう」
「わかった」
二人の様子を、
黒尾はニヤニヤと見ていた。
「あの研磨が女の子に話しかけてる」
そのままあの二人、付き合ったりしないかなぁと思ったが、研磨は何せ、恋愛事に凄く疎い。
葵ちゃんが研磨の事を好きになってくれれば、話はスムーズに進むだろうけど、葵ちゃんが研磨の事をどう思っているのか謎だ。
「というわけでどう思うよ、赤葦」
「なんで俺に聞くんですか」
「お前、葵ちゃんの事狙ってるだろ?」
「はい?狙ってませんよ。あと、俺は今木兎さんの世話で手一杯です、彼女を作るどころじゃありません」
「そうなの!?」
「はい」
「え?だってお前、葵ちゃんに彼氏いるかとか聞いてなかった!?」
「ああ、梟谷の先輩が如月さんの事を気に入ったみたいで、彼女に彼氏がいるか聞いて来て欲しいって頼まれてたんです」
「で?彼氏いないって答えた?」
「逆ですね。如月さんに彼氏がいるって言っておきました」
「なんで?」
「あの二人、どう見ても相思相愛じゃないですか。俺のせいで二人の関係を悪くしたくはありません」
「……。」
「なんですか」
「いーんや、気を使わせたみたいで悪かったな」
「……別に」
「でもあの二人は、誰かが背中を押さないとくっつきそうにねぇぞ」
「俺は御免ですよ」
「それはどうかな、研磨も危機感を感じたら行動に出るかもしれねーし、ってちょっと待て赤葦どこ行くの」
「木兎さんが呼んでるので失礼します」
「……あ、そう」
どうすっかなぁ、
あの研磨を行動的にするには。
葵ちゃん、結構モテるみたいだからそれを利用するか?でもモテるのは研磨も知ってるしなぁ。そもそも葵ちゃんてどういう奴が好みなんだ?
(葵ちゃん、好きな男のタイプは?)
(なんですかいきなり)
(いいからいいから)
(うーん、私のお父さんみたいな人かなぁ)
(……うん、分かりにくい)
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