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「(あっつ……)」



昼過ぎになると、朝よりも気温が上がり体育館は凄く暑くなっていた。室内だからとか関係ない。きっと昨日より今日は暑い。


額から頬へと、汗が流れた。


暑いのは苦手だ。体が弱くなる。
この白い肌を最後に焼いたのはいつだっただろうか。




「はぁ」


タオルで汗を拭いても次から次へと流れてくる。多分、私だけじゃない。


練習試合をしているみんなの方が大変なのは分かってる。サポートしている私がこんな所で休んでなんていられない。



「……。」
















「……葵ちゃん!」

「!」


やっと参加させて貰えた練習試合でトスを上げようとしたその時、クロが突然大きな声を上げた。



すぐに、葵の方を見れば




葵は倒れていた。






「……葵?」





倒れた葵を抱き起こしているのは、梟谷の赤葦だった。目を覚まさない葵の名前を必死に呼んでいる。





「如月さんっ!」

「葵ちゃん!」

梟谷の部員や、クロ達が葵の所に集まって呼びかけていた。







俺は、動けなかった。






葵の側にいるのは赤葦だった。
俺の足は止まったままで、すぐに葵の所に行きたかったが動けなかった。






赤葦が羨ましかった。



すぐに葵の所に行ったし、
すぐに葵を心配していた。


俺なんかよりずっと葵の事を見てる。






きっと赤葦は、


葵の事が好きなのかもしれない。

そう思った。









じゃあ俺は?












「ん……」

「葵ちゃん!」

「(クロ先輩の声が聞こえる)」


どこだろう、


真っ暗で見えない。





「如月さん!」

「(赤葦君?)」


あれ?練習試合は?

記録、付けなくちゃいけないのに。




あれ?





「……け、……くん」

「!」

「なんだ赤葦?如月ちゃんはなんて言ったんだ?」

「すみません、聞こえなかったです」

「ん……」


あれ?
少し視界が明るくなってきた。


あれ?赤葦君?クロ先輩?
夜久先輩に山本君に木兎先輩とあとみんな





え?

え?



「……何事?」

じゃねーよ!大丈夫か葵ちゃん!?ちゃんと見えてる??俺誰か分かる?」

「え、クロ先輩……?」

「よし、大丈夫そうだ。いきなり倒れたから心配したんだぞ!」

「え……倒れた?私、倒れたんですか」

「覚えてないの?」

「赤葦君、ううん、暑くてボーっとしてたから……よく覚えてない、かも」




そっか、私……

倒れちゃったんだ。



どうしよう、みんなに迷惑かけちゃった。もしかして練習試合を中断させちゃった?





私のせいで……。







「如月の顔色がまだ悪いな……なぁ黒尾、少し休ませた方がいいんじゃないか?」

「そうだな、葵ちゃん立てるか?」

「は、はい、ごめんなさい!夜久先輩、クロ先輩!私大丈夫です!」

「……ごめんなさい?」

「あ、あの、もう大丈夫です!すぐに立ちます!だから試合をすぐに……!」



私を支えている赤葦君の腕から抜け出して、勢い良く立ち上がった。






……くらっ



「……っ!?」

「危ないっ!」


また目眩がして、
赤葦君が私の身体を支えた。




「ご、ごめん……ありがとう」

「無理しないで」

「……ごめん」



どうしよう、不甲斐ないばっかりだ。

こんなにも体がついていかないなんて……






私にマネージャーなんて

最初から無理だったんだ







もうこの場から逃げたい。














「葵」

「!」



呼ばれて、頭を上げると

研磨君がしゃがんで私を見ていた。






「……研磨君」

「……大丈夫だから」

「!」

「葵が頑張ってるの、みんな分かってるから」

「……え」

「葵がまだマネージャーの仕事とかに慣れてないのも知ってる」

「……う」

「俺達が頑張ってるのも葵は知ってる」

「も、勿論!みんな凄く頑張ってるし、強いし、かっこいいし!」

黒「そこまで言われると照れるなぁ」

「……だから、無理はしないで。」

「うん……」



研磨君に目を逸らされて言われたけど……
なんだか凄く、安心した。







「あのさ、葵」

「……ん?」

「上手く言えないけど」

「……うん」

「音駒のバレー部に……葵は必要だから」

「!」





必要。



今私の気持ちを安心させるには

十分な言葉だった。





「……ありがとう、研磨君」

「!」





小さく笑った葵は。


泣いていた。






黒「研磨が泣かした

「えっ」

山「ああ、今のは研磨が泣かした」

「えっ」

夜「どんまい、研磨」

「!」






(俺にどうしろって?)
(ぐすっ、涙止まんない……)
(え、いや、葵……泣かないで)
(泣いてない!これは目からポーションが)
(え、ポーション?)
(ごめん赤葦、スルーしていいから)
(……なんか二人、仲良いね)



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