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「「「お疲れっしたー!!」」」
合宿に参加している全員で挨拶して、合同合宿1日目の練習が終わった。
疲れて体育館に寝転がっている者や、ぐったりしている者、練習し足りないのか再びボールを持つ者など、さまざまだった。
「お疲れ、如月さん」
「お疲れ様、赤葦君はこれから自主練?」
練習が終わったのにも関わらず、ボールを持っている赤葦君に聞いてみた。
「木兎さんが練習に付き合えって言ってるから」
「木兎さん?」
「ほら、あそこではしゃいでる人」
「ああ、凄いスパイク打つ人」
音駒は練習試合であの人の攻撃に苦戦していたのを覚えている。バレー初心者の私でもあのスパイクは凄いっていうのはよく分かった。
「自主練なんて凄いね」
私なんて疲れてもう、くたくたなのに。
「俺もトスの練習したいし、それに早くあの人に合ったトスを上げれるようになりたいから」
「赤葦君ってセッター?」
「うん、どうして?」
「ごめんね、私まだバレー初心者で……トスを上げるのがセッターだよね?」
ルールもまだ危ないところがあるから
早く覚えないと。
「あってるよ」
「良かった、駄目だね私、覚えなきゃ」
「あのさ、俺で良かったら教」
「葵、集合だって」
「研磨君!ごめん、すぐ行く」
少し向こうにいる研磨君に呼ばれたので、赤葦君に『お疲れ様、また明日も練習頑張ってね』と言って、音駒の集合場所に向かった。
※※※※※※※※※※
「……以上だ」
音駒の部員が集合し、監督とコーチから簡単に宿泊施設の部屋割りの説明をされ各自自由行動となった。マネージャーは各校合同部屋とのこと。
食堂で早めの食事をしてもいいし、体育館で自主練をしてもいいし、浴場に行ってもいいらしい。
「……自由」
これから自由行動と聞いて、私はワクワクしながら隣にいる研磨君のTシャツをくいくいっと引っ張った。私の頭の中にはゲームという言葉が浮上していた。
「葵、早めに食堂に行って、んでお風呂入ったらこっちの部屋に集合ね」
「うん!」
私の言いたい事はもう研磨君には伝わっていたようで、私はキラキラした目で頷いた。少し疲れが取れ気がする。
食堂で軽く晩御飯を食べて(暑くて食欲が無い)
お風呂に入り(他マネちゃんとお喋りして逆上せた)
私服の猫のワンポイント刺繍が入っている黒の半袖のパーカーと黒のジャージズボンに着替えて、一度部屋に戻って、ウキウキしながら鞄からPSPを出し手に持って音駒の部屋に向かった。髪は面倒だから結んでない。
途中でお茶を買おうと自販機に立ち寄ると、見覚えのある顔を見つけた。
「木兎さん早く選んで下さい」
「ポカリか、お茶か……迷う」
「ポカリで良いじゃないですか」
「しかしお茶も捨てがたい!」
「その二択って悩みますよね」
「!?……如月さん?」
「ん?」
「こんばんは赤葦君」
「こんばんは」
「赤葦!この子は確か音駒の子だ!」
「!?」
いきなり近くで大きな声で言ったので凄く驚いた。きっとこの人はこういう人なんだろう。
「えと、こんばんは、音駒高校一年の如月葵です、マネージャーをやっています」
「木兎光太郎だ!2年だ!よろしく!」
手を掴まれてブンブンと握手をされた。
凄くテンションの高い人だ。明るくて良い感じの人だけど、隣にいる赤葦君が困ったような表情をしている。なんだか苦労してそう。
「如月さんも飲み物買いに?」
「うん」
「じゃあ先に買うといい!俺はもう少し悩む!」
「いや早く決めて下さい」
「私はお茶かなぁ」
木兎先輩の好意に甘えて、先に飲み物を買わせて貰った。あ、そろそろ行かないと研磨君を待たせてしまう。
「それじゃあ私はこれで」
「あれ?マネージャーの部屋ってそっち?」
「マネージャーの部屋はあっちだよ?」
赤葦君に呼び止められたので、マネージャーの部屋を指差して教えた。
「え?」
「ん?(赤葦君どうしたの?)」
「なぁなぁ、如月ちゃんは今からどこに行くんだ?」
結局ポカリに決めた木兎先輩に言われて、ああそういう事か、と気がついた。
「えっと、今から音駒の部屋に行くんです」
「なるほど!」
「え、女の子が男の部屋に行くのってどうなの?今からミーティングでもあるの?」
「んー、ミーティングではないんだけど……あ、ごめん約束しているからちょっと急ぐね、ではまた明日!」
「おう!」
「……気を付けて」
二人に見送られ、私は部屋へと歩みを進めた。いざゲームをしに!!
(……葵、遅いなぁ)
(どーした研磨?浮かない顔して?)
(え?そんな顔してる?)
(してるー、(ニヤニヤ))
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