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夏休みも近くなり、教室内は夏休みについての話題でてんこ盛りだった。勿論俺も夏休み中に葵とゲームをたくさんする約束をしている。
夏休みといえば高校生の一大イベントで
学生お待ちかねの長期休暇。
葵もまた夏休みを心待ちにしていた。
「やっと毎日ゲーム出来るよ研磨君!」
「葵は毎日してるでしょ?」
「え?……本当だ!」
「あ、でも夏休みは部活の合宿あるよ」
「うん、コーチから聞いたよ」
「ゲームする時間ないけどいいの?マネージャーをお願いしたけどやっぱりゲームの方が良いんじゃ……?」
「研磨君がいるでしょ?」
「え?」
「ゲームの話が出来ないわけじゃないし、大丈夫だよ。」
「……。」
「あ、勿論マネージャーの仕事はちゃんとやるよ??夏休みには他校生と合同合宿なんでしょ?いつもより頑張るよ私」
葵はマネージャーの仕事を楽しんでいるらしい。無理に誘ってしまったと思ってたけど……思ったより楽しんでいるみたいで良かった。
でも、貴重な夏休みを
俺とゲームする時間や部活に使ってしまってもいいのかな?せっかくの夏休みなんだから……やりたい事もあるんじゃないかな。
夏と言えば、海とか花火大会とか祭とか。
「クロ、葵って彼氏いるのかな」
「俺じゃなくて、葵に聞け。どうしたんだ急に」
「……気になった。」
「休日も放課後も研磨と四六時中一緒にいるようなもんだろ?居ないんじゃねぇか?」
「四六時中は居ないよ。たまにゲーム誘うと断られる事もあるし」
「え、マジか」
そんな事もあんのか。意外だな。
いっつも一緒にいるかと思ってた。
「夏休みにゲームする約束したけど、もし葵に彼氏がいるなら……遠慮した方がいいかなって思ったんだけど」
「あー、それは大事だな。でも流石に俺も葵ちゃんに彼氏がいるかは知らねぇなぁ。気にした事なかったし、むしろ研磨の方が仲がいいだろ?本人に聞いたらどうだ?」
「……。」
「そりゃあ、聞きにくいよなぁ」
葵ちゃんにもし彼氏が居たら、嫌だろうなぁ。
「そうだよな。研磨の気持ちも分からなくない」
「もし葵に彼氏が居て、夏休みにゲーム出来なくなるの嫌だ」
「ゲームかよ」
葵よりもゲームをする方が大事か。
そりゃまぁ、研磨と似たようなゲーマーはそこらへんに居ないからなぁ。
「確かに葵ちゃんからゲームを取ったらそこそこ可愛いからなぁ。居そうだな、彼氏とか」
「……、」
「そんなに気になるなら頑張って聞いてこい。」
「うん」
「駄目だったら俺が代わりに聞いてやるって」
「……うん」
クロに背中を軽く叩かれて、教室に戻った。
すぐに葵を探して、見つけた。
彼女はクラスの男子と仲良さそうに喋っていた。まさかそいつが葵の彼氏?なんて思った。
「あ、研磨君おかえり」
葵は俺を見つけてすぐに顔を向けて話しかけてきた。葵と話していた男子がつまんなそうな顔をしていた。
……なんで俺を睨むの?
「研磨君はどこに行ってたの?」
「……クロのとこ」
席についてそう葵に言うと、
「あのさ、如月さん」
何故か対抗するかのように俺を睨んでいた男子が葵に話しかけていた。
「如月さんて彼氏いんの?」
「!!」
思わず、顔を上げてしまった。
俺が散々聞こうか悩んでいた事をこんなにも簡単に言うから正直驚いた。
葵の方を見ると、
「彼氏?居ないよー」
「マジで?」
「……。」
彼氏は居ないみたいだ。
てっきりいると思っていたのに。
「如月さんてモテるから居ると思ってた!」
「(モテる?)」
何それ初めて知った。
「忙しいから恋愛している暇がなくて。私そんなに器用じゃないし」
「えー?そうなんだー」
「(器用じゃない?あれ、この間PSPとスマホゲームを一緒にやってた気が)」
「ゲームしたり、やりたい事多すぎて」
「え?ゲーム?なんか意外だなぁ。じゃあ俺にもチャンスあるって事だな」
「(うん?)」
「ん?チャンス?」
「あ、予鈴……やべ、課題やってねェ!」
クラスの男子は意味深な言葉を残して、慌てて自分の席に戻っていった。
「葵、彼氏居ないんだ?」
「居たことないよ。今までそういう事よりゲームする方が楽しかったし」
「……そうなんだ」
(ああ、でも違う世界になら彼氏はいるよ)
(それ乙女ゲーでしょ)
(氷室先生かっこいい)
(……授業始まるよ)
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