避けることができない必然(2/2)
ははは、ざまぁみろと内心笑ってしまった。
転んだ男は怒鳴りながら立ち上がるが、外人さんの英語の謝罪攻撃でタジタジになり、もういい!と握られた手を振りほどきもう一人の犯人の方へと戻って行った。
そういや、この話自体うろ覚えだけども・・・
あの外人さんって確か・・FBIの人だよね?いや、それよりさっき手を握りしめたけどあれって・・・・
「・・・セーフティ?」
無意識だった。
言葉に出ているなんてちっとも考えていなかった。
しかもその小さな呟きを、まさか彼が拾っていたなんて。
そこからはまぁ、ほっといても確かなんとかなるだろうと思って放っておいた。
案の定何とかなったけども・・・・
ボウヤのおかげで、実はもう一人いた仲間を暴き、男二人の犯人も、麻酔針と、外人さんの強烈なケリで片が付いた。
ただそのあとが問題だ。
急ブレーキのせいで爆弾のスイッチを押してしまい、爆発まで残り1分もないそうだ。
皆が慌ててバスから降りていく中、私はあることを思い出し、席を立ったところですぐ立ち止まった。
赤いフードを被ったまま俯いている少女の姿に、ハァーっと溜息を吐いた。
出口に行くには距離がありすぎる。
だったら・・・・・
「お嬢ちゃん、脱出するわよ」
消火器を片手に少女の腕を掴めば、彼女は驚いたように顔をあげ、私の顔を見上げた。
「わっ・・・私行かないっ・・・」
「はい?」
バッと腕を振りほどかれまた座り込んでしまった少女を見てもう一度溜息を吐いた。
「あなたはっ・・はやくっ・・・逃げて・・・」
「あのねぇ・・・・」
言葉を続けようとしたが、少女はフッと笑った。
「バカだよね・・・組織を抜けたときから分かってたのに・・私に居場所なんてないってわかってたのに・・・バカだよね・・・お姉ちゃん・・・」
少女のお姉ちゃん、という言葉にジンに撃たれ地面へと崩れ落ちる女性の姿が頭に過った。
「居場所がない?私からしたらあなたには居場所がある様に見えたけど?」
そういながらグイッと少女の腕を引っ張り抱き上げた。
「え?」
いきなりの事で驚く少女にはお構いなしに、手に持っていた消火器を後ろの窓に向かって投げつけた。
ーーーパリンッ
と割れたと同時に走り出し、割れた場所へと足で蹴り飛ばしながら外へと飛び出したと同時に大爆発を起こした。
爆風から少女を護るため、ぎゅっと抱きしめれば少女の口から、お姉ちゃん・・・?と声が聞こえた。
「残念だけど、私はあなたのお姉ちゃんじゃないわ」
その言葉と同時に地面へと身体を叩きつけられた。
「っ・・・・・怪我は?」
痛む体に鞭打って少女を抱き起し立たせて言えば、彼女は、ゆっくりと、ないわ。と答えた。
「そう、よかった。ねぇ、お嬢ちゃん?」
「?」
「居場所がなかろうと、あろうとそんなことは関係ないわ」
「え?」
「ただ、死んだら悲しむ人がいる人は、一生懸命生きなきゃいけない。例えそれが・・・茨の道でも・・・あなたにはあなたを大切に思ってくれる人がいるじゃない」
フッと笑って言えば少女は驚いたように目を見開いた。
それからすぐに、灰原さーん!と言う声や哀ちゃーん!という声が聞こえてきた。
その声と同時に少女から離れれば小さな声で、あ、ありがとう・・・と聞こえてきた。
その言葉にフッと笑った。
さてさて、事件ホイホイの彼とは極力関わりたくない。
話しかけられる前に、と刑事さんへと話しかけた。
「あの・・・」
「はい?」
知らない顔だ、いや、キャラとしては知っている顔だけども。
確か名前は高木刑事。
「あの子、赤いフードの・・・」
「あぁ、哀ちゃん?」
「そう、その哀ちゃん、怪我してるから病院に連れってってあげてください。事情聴取ならメガネのボウヤ一人いれば十分でしょう?」
そう言えば、彼はえぇ!?と慌てて哀ちゃんと言う子に走り寄り、病院へと急いだ。
その様子を少女もボウヤも驚いていたが、少女が私の方を向いたから、手だけ振っておいた。
ばいばい、もう会いませんように・・・そう心で呟いて。
少女が車で去って行ったのを確認して、ボウヤがこちらに来る前に、知らないフリをしながら警察の車へと乗りこんだ。
「(なーんか言いたそうだったな、あのボウヤ・・・)」
そう思いながら少し割れたヘッドフォンを耳に着けようとすれば、いきなり腕を掴まれた。
「あ・・・・」
ボウヤから逃げることに必死でこの人の存在忘れてた。
赤井秀一、同じパトカーかよっ・・・そう思うも、同乗者を確認せず、慌てて乗り込んだ自分が悪い。
諦めにも似た溜息を吐いた。
「あの・・・?」
「怪我、しているだろう?」
話し方が先ほどとは違うが、そんなことを突っ込んでいる余裕はない。
「怪我?なんのこと・・・っ!!」
惚けようとすれば、掴まれている腕を思いきり掴まれ、顔を顰めた。
するとその反応に彼はフッと笑う。
「(このっ・・・ドSですかっ・・・)」
痛む腕を無理やり動かし振りほどいた。
「おっと・・・痛むだろうに無茶をする」
振りほどかれたことに少し驚いたような表情をした赤井秀一だったがすぐにその表情はニヒルな笑みを浮かべる。
彼の言葉に、フンと効果音が付きそうなほど業とらしく顔を背け、ヘッドフォンを耳に着けた。
喋りかけるな、というように。
「ふっ・・・・」
その様子を見ていた赤井秀一は微かに笑い、前を向いた。
どうやらもう話しかけることは諦めたらしい。
避けることができない必然(勘弁してよ、事件ホイホイにもFBIにもかかわりたくないっつーの)
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