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避けることができない必然(1/2)



あれから早11年


私は25歳になりました☆



☆・・・じゃなくてっ・・・・



りゅうは頭を抱えた。



目線の先にはゴホゴホと咳をしている見覚えのある髭の生えた老人?と心配そうにそれを眺める3人の子供。



そして通路を挟んで横にいるのはこれまた見覚えのある茶髪の女の子に、黒淵メガネの少年の姿。



バスに乗ったのが間違いだった。



そう思うも後の祭りで、関わらなければいいだけの話だと見なかったフリをしようと首に下げていたヘッドフォンを耳に当て音量を上げた。


寝てしまおう、そう思ったところでハタッとあることに気が付いた。


この席って・・・・


自分が座っている席を思い出した。



一番後ろの窓側、窓に頭を預けたまま、はははっと苦笑いしか出てこない。



「(赤井秀一・・・だっけ?確か乗ってくる話じゃないか?この話・・・)」



だとしたらこの席は完全にアウトだ。


そう思うが、今更席を座りなおせばメガネの少年が不審に思うはず。



「(・・・・あー、もうこのままでいいか。確か赤井秀一より、ボウヤの方が厄介だった・・・はず・・・)」



うーんと考えながら目を瞑り、一度しか読んだことがない本の内容を思い出す。


思い出そうとした。



「・・・無理だわ・・・(覚えてるわけがない、ってか赤井秀一がFBIってとこまでしか知らない)」



だから彼がどんな人物で、ボウヤよりも厄介なのか、そんなことまでわかるわけがない。



・・・よし、知らないフリしよう。


私は何も見なかったし知らなかった。



うん、寝よう。



そう心に決めて寝ることにした。







原作に突入したのは恐らく今年だろう。



最近10億円強盗事件?のニュースを見たばかりだ。



ここ何年かで活発化してきた組織の行動。


調べまわり、邪魔できることはことごとく邪魔してきた。


もちろん自分の顔も名前も悟らせはしない。


記憶が戻ってすぐ、必死に身に付けた変装術。



変装しては邪魔をして、ヤツラがこちらに気が付くころにはトンズらこいて、さぞ苦虫を潰しているだろう。



邪魔しているのはもちろんほぼジンがメインだ。



よくもまぁ、ここまで私だと悟られず嫌がらせをしてこれたなぁとつくづく思うも、その反面、当たり前かとも思う。



銀りゅうはこの世界からすれば‘ただ’の一般人に過ぎないのだから。



この11年、キャラ達との接触がないように心がけてきた。



事件ホイホイのボウヤとはぜひ、お近づきになりたい・・・わけがない。



そんなことをすれば嫌でも表舞台に立つことになる。


少なくとも銀りゅうの存在がヤツラに気づかれるのは時間の問題だろう・・・多分。



そんなことを考えていれば横に誰かが座る気配がして薄っすら目を開けて盗み見た。



「(はははっ・・・・;ビンゴ)」



黒のニット帽にクルッとした前髪がのぞいていて、目もどこか鋭いような・・ってかぶっちゃけ悪い。


マスクをしていて、さきほど見かけた老人と同じようにゴホゴホと咳をしていた。



「(寝たふり寝たふり)」



気づかれる前に目を閉じた。



どれだけ目を瞑っていただろう。


暗い闇の中、耳から聞こえるのは音楽のみで知らないというか、気が付かないようにしていたにもかかわらず不穏な空気に気が付いてしまった。



恐らく原作通り、バスジャックなるものがはじまったんだろうなぁと心の中で思うもあくまで目を閉じ、寝たふりを通す。



だから気が付かなかった。


バスジャック犯と、隣に座った赤井秀一のやり取りに。







「携帯だせっ!」



「こほっ・・・すいません、持ってないんですよ、携帯・・・」



犯人が拳銃片手に乗客たちの携帯を集めていて、赤井秀一へと詰め寄っていた。



「けっ、シけた奴だな!おい!女!!さっきからうるせーぞ!!」



赤井秀一の逆隣りに座っている老人の補聴器に文句をつけた後、更にその隣に座るガムをクチャクチャ噛んでいる女へと銃を向けながら怒鳴る。



「はぁ?ガム噛んでんだから当たり前でしょ?」


女性は怖くないのか、挑発的な態度をとるが、銃を一発発射され、おとなしくなる。




「おい!そこの女っ!携帯出せ!!」




「・・・・・・」



「聞いてんのかっ!!?」



チャキッと銃口を向けるも犯人は無反応の女に苛立ちを覚えた。



その銃を向けられたのが自分だと気配で気が付きはしたが、声なんて一切聞こえていない設定なので、知らないふりをする。



「あの、恐らく彼女何も聞こえてないと思いますよ?」



「あぁ!?」



今にも発砲しそうな犯人に口を出したのは、赤井秀一だった。



「僕がここに座った時から寝てましたし、ヘッドフォンから少し音が漏れてるので相当大音量で聞いていると思いますので・・・」




「おい、聞こえてないし寝てんならほっといていいんじゃねーか?」


もう一人の犯人が前の方からそう声を掛けるが、銃を向けている男は納得がいかないようで、銃を振り上げ、ヘッドフォンを勢いよく振り下ろした銃でフッとばした。




ーーーーガンっ!!



ヘッドフォンが飛んだと同時に頭を窓に強打した。



「っ・・・」


痛いなぁ!そう思いながら今痛みが走った原因であろう人物を睨みつけた。



一瞬ビクッと怯む犯人だったがすぐさま銃口を向け携帯を出せっと怒鳴る。



「持ってない」


「あぁ!?」


「聞こえなかったの?持ってないって言ってんの」


「んなわけあるか!」


いや、なんでだよ。


つい突っ込みそうになるもそれはやめておいた。


「今時若い女が携帯持ってねーなんて事あるわけねーだろ!」



悪かったな、今時の若い女が持ってなくて。



そう心の中で毒づくも、意外に目立ってしまったため、これ以上は御免だと思い控えめにコメントした。



「・・・家に忘れてきたの、悪い?」


痛む頭に苛立ちが隠せず、睨みながら言えば、男は舌打ちをして去って行った。



その後姿を見ながら痛む頭に手を置きハァーと溜息を吐いた。




「大丈夫ですか?」


スッと差し出されたものに驚き、つい見てしまう。



「(あ、ばかだ。横から差し出されてんだからこの人だって分かれよ、自分・・・)あ、はい。大丈夫です、すいません」



後悔してももう向いてしまったのはしょうがない、差し出されたハンカチを受け取ったが首を傾げてしまう。



なんでハンカチ?



その様子を見ていたのだろう、彼、赤井秀一は自分のおでこを指しながら言った。



「血が出てますよ」



「あぁ、なるほど」


血が出てるって・・・どんだけ強打したんだよと思いながらハンカチを当てれば確かに少しだけ血が出ていたようだ。



そんな会話をしていれば、ズサァっと音がしてそちらを見ていれば先ほど私を銃で殴ってくれた犯人が転んでいた。



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