×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

未だ癒える事のない憎しみ(2/3)






事件の詳細が徐々に分かってきたところで高木は毛利へと死亡推定時刻やら目撃者が何時に来たやらと話していれば目暮に叱られていた。



「君は誰に報告しているのかね?私にするべきことだろうっ!!」



「すっ・・すいません!ついっ・・・・」



そしてすぐに犯人らしき女性が浮き上がって来たらしくその女性を他の警察官が追っているとの事。




「しかし・・・被害者の金丸さんは珍しい趣味ですな・・・招き猫のコレクションとは・・・」



はははっと困ったような表情で言う毛利。




「コレクションというより欲深いだけでしょうよ」




毛利さんの言葉につい口を挟めばボウヤや哀ちゃんを含め、全員から視線を受けた。




「欲深い?」



ボウヤが首を傾げながら聞いてくる。このこ知識は凄いあるのに招き猫の意味は知らないのかね?




「招き猫ってなんで手を挙げてるか知ってる?」



「・・・福を呼び込むためでしょう?」



私の言葉に哀ちゃんが答えた。



「一般的にはそうよ、でも手を挙げている方によって意味が違うの」




「どう違うの?」



佐藤もどこか考え込むように聞いてきた。




「右手はお金を呼び込むものとされてる、左手は千客万来、人を呼び込むもの・・・・」



そこまで言えば、皆招き猫を見た。



「全部右手を挙げた招き猫・・・・なるほど、だから欲深い・・・か」




目暮がフムっと顎に手を置いて考え込んだ。



「金を招く・・・なんて知ってたか?」



「いいえ」


ミャァー



コナンが呆れたように哀ちゃんに聞けば哀ちゃんも知らないらしかった。



そして哀ちゃんの腕の中で甘えるように鳴き声を上げる茶々。



ほうほう、ボウヤにも知らないことが・・・なんかちょっと優越感・・・



そんな事を思いながらボウヤの横にしゃがみ豆知識を教えた。




「ちなみに両手を挙げてる招き猫も居るけど欲張りと言う事であまり好かれてはないわよ。後三毛が定番な招き猫だけど最近じゃいろんな色の招き猫もいるのよ」




「色んな色?」



「黒だったり、金だったり・・色々、でも真っ赤な招き猫もいるわ」




「真っ赤って・・・気持ちわりぃな・・・;」



私の言葉に真っ赤な招き猫を想像したボウヤが苦笑いを漏らした。



「あら?ちゃんとした役割があるのよ?」



黒い招き猫は厄除け。



赤い猫は病除けの意味がね。



そんな話をすれば二人ともへぇーっと相槌を打った。



「まぁ、ただのおまじないと同じだから信じるも八卦信じないも八卦・・・だけどね」




そんな話をしていれば第一発見者の女性が、もう掃除もしなくてもいいとの言葉でボウヤは何かに気がついたようだ。




そして掃除機のごみパックがない事に不信感を持ったようだ。



その間に容疑者の一人で浮かび上がっていた女性が連れてこられた。



その間、ボウヤは掃除機が何を吸ったのか・・・気になっているようだった。



ボウヤが何かを見つけ、見ている後ろから覗き込めばそれは招き猫の手の部分のようだった。




「手だねー」



「うわっ・・びっくりしたー」



驚くコナンをよそに、毛利さんがあっちからここまで飛んできたんだろうとあまり気にした様子はなかったが、ボウヤは気になる様で。




「・・・・それ、左だね」




ボソッと言えばボウヤはえ?と振り向いた後、自分で持っているものを見た。



「そうか・・・この手・・・この事務所にあった招き猫じゃない、左手だ!」




それから哀ちゃんが、ボウヤに60/1の証拠があると呟いた。




その言葉にパタパタ時計へと視線を向けた。



なるほどね・・・・



「あら、分かったのね」



時計を見ていた私に気がついた哀ちゃんがフッと笑いながら言えば、まぁね、と素っ気なく返す。




「・・・やっぱり教える気はないのね」



「警察に?当たり前でしょう。教える義理もない」



目を閉じてまた最初と同じように壁を背にして立っていれば哀ちゃんも横に並んだ。




「でも、教えれば早く解決するのよ?」



「でも私は探偵じゃないから」



それに・・・と続ければ哀ちゃんもオウム返しでそれに?と首を傾げた。



「・・・・人を殺すのってそんなにいけないことかな?」




「え?」



私の言葉に驚き、目を見開く哀ちゃんだったが、話しすぎたか・・・と思って口を閉ざした。




「・・・・・・」



哀ちゃんは探るような目つきでこちらを見ていたが、見ないふりをした。





そして先ほど連れてこられた女性が犯行を自供したのだが、納得しないボウヤが、毛利さんを麻酔針で眠らせて推理ショーを始めた。




犯人は女性ではなく、女性が殺してしまったと思い込んでいることを利用して、殺害した喫茶店のマスターだった。



証拠としては先ほどボウヤが見つけた左手の招き猫の手のかけらと、そしてパタパタ時計の分の方の‘59’を示すカードに血が付いていたこと。



そして茶々がこの現場に居てそこの窓から外へと逃げた足跡が発見されたこと。



マスターはそこまで突きつけられて観念したように話し出した。




殺した動機が妹を自殺に追い込むほどの取り立てをしたこと。



その借金が実は妹の物でなく、妹の承諾もなしに保証人にし、でっち上げられた借金だったこと。



その妹の自殺直後に母が病に倒れ、生きることに絶望したままこの世を去った事。




「許せなかったっ・・・何も悪くない妹をっ・・・自殺に追い込んだ奴がッ・・・病と闘う気力すら無くし、絶望のまま死んでった母を思うとっ・・・・」



そこまで言って彼はキッと刑事たちを睨みつけた。




「死んで当然だろう!!?こんな奴!!生きてたってまた同じことを繰り返す!!また妹と同じような被害者が出る!!だからっ・・だから俺が裁いてやったんだ!!」




「ふざけんじゃないわよっ!!!」



コナンが毛利の声のまま言おうとした言葉は佐藤の言葉に過られた。



そして佐藤はグッとマスターの胸ぐらを掴みかかった。




「この世に死んで当然の人間なんて居ないわっ!!裁いてやった!?あんた何様のつもりなの!?どんな理由があっても!人が人を殺すなんてっ・・・・」




ーーーパシッとマスターの胸ぐらを掴んでいる佐藤の腕を掴んだ。



「あなたっ・・・・」



腕を掴まれマスターから腕を離さざる得ない佐藤が驚いたような表情を浮かべた。




「間違ってる?」



「え?」



「人が人を殺すのは・・間違ってるとでも?」



「当たり前でしょう!!?」


無表情に淡々と言えば、佐藤はカァとなり怒鳴った。




「そんなにいけない事?復讐は・・そんなにいけない事なの?」




「復讐なんてっ・・・・」



そこまで言って佐藤は口を閉ざした。



少し前に犯人を復讐心と言う名の元、殺そうとしたのを思い出したのだろう。




「・・・いけない事です。りゅうさん、復讐は憎しみだけが残る。そして憎しみの連鎖は切れることはない・・・・」



佐藤の言葉に続く様に毛利さんが言う。



ボウヤが言っているのは知っているが・・・




「その復讐の連鎖を何処かで断ち切らなければならないって?」



「えぇ・・・・」



「でもそのどこかが・・・自分じゃなくてもいいわよね・・・」



「・・・・・・」



「人を殺しちゃダメ?そんな事・・・マスターだって分かってるわよ、生まれたての赤ん坊じゃないんだから・・・・でもね・・・」



「でも?」



「そんな綺麗事で片付けられない感情だってある」



強い目で真っすぐに毛利を射抜く様な眼差し、そしてその雰囲気は堂々としていた。




「りゅうくん・・・・」



目暮がりゅうの名を呼ぶが、りゅうは止まらなかった。




「一度、全てを失ってみれば分かるんじゃない?その感情が・・・殺してやりたいほどの憎しみがっ・・・・・」



ブワッと殺気立つりゅうに、灰原は怯えたようにペタンとその場に座り込んだ。




「・・・それでも、殺しはダメですよ。人間が自分勝手に裁くもんじゃない・・・法の下でしっかりと裁かれるべきです」



毛利の声が、静かに落ち着いた声が聞こえるが、それさえも今は苛立つ。




「裁かれなかったらっ・・・警察にさえ取り合ってもらえなかった親族は!!怒りを!!憎しみをどこにぶつければいい!!?」



りゅうと出会って初めて聞いた彼女の大声にその場に居たものは口を閉ざすしかなかった。



怒りと憎しみの中に・・・悲痛な叫びとも聞こえる声ーーーー




「法だってそうだ!!殺人を犯したにも関わらず無罪になった奴らなんてこの世の中何人だっている!!反省なんてせずに出所してまた同じ過ちを繰り返す奴だってっ・・・・」



そこまで言ってハッとして我に返った。




そして顔を俯かせてグッと拳を握りしめた。




「・・・・・ごめん、忘れて」



そう言ってその場を逃げるように走り去った。





未だ癒える事のない憎しみ
(目暮警部・・・・りゅうさんに昔なにがあったの?)
(・・・・後で毛利君の家に行こう)
(・・・・工藤君、私もいいかしら?)
(お前も気になるのか?)
(彼女のあの殺気・・・相当憎しみが強いのね)




          あとがき→



prevnext

back