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未だ癒える事のない憎しみ(1/3)





「ちょっとっ・・・絶対上見ないでよ!?見たら抹殺よ!」



「見ねぇって・・いいから早くしろよっ・・・」



ヘッドフォンをしたまま散歩している日中、面白いものを目撃した。



哀ちゃんとボウヤだ。



二人が居る分には知らないふりして通り過ぎる所だが、何分その二人の状態が面白くてつい近寄った。



すると聞こえてくる哀ちゃんの声と疲れたようなボウヤの声。




公園のベンチの背もたれに立っているボウヤにそのボウヤの肩に乗っている哀ちゃん。



ボウヤは木を支えにして立ってはいるが小さい体の分大変そうだ。




「・・・・新しい遊び?」



ニョッとボウヤが手で支えている木の横から顔を出せばビクッとするコナンの姿。



「わっ!!?・・・なんだー・・・りゅうさんかー・・・」



ホッとするボウヤに、哀ちゃんがちょっと!!と怒鳴り声を上げた。



「いきなり動かないでよ!危ないでしょ!!?」



「あー?しゃーねーだろ・・・あ・・・」



「あ・・・・・」



「えっ・・・?」



哀ちゃんの声にボウヤが咄嗟に上を向いてしまいスカートの中をバッチリと見たのだろう。


しまったと思いつい、あ、と声を上げた所、私も、あ、と言ってしまった。



二人分の声に哀ちゃんは首を傾げながら下を向けば上を向いてるコナンの姿。




「っ〜〜〜!!!!?」



すぐさま真っ赤に顔を染める哀ちゃんは飛び降りそのままーーー



パチンっ!!!



「いっ・・てぇーー!!?」



ボウヤの頬を思いきり平手で叩いた。




「・・・・なんかごめん?」



そんな二人を見ながらちょっと罪悪感が生まれボウヤに謝れば頬を摩りながらジト目で見られた。




「りゅうさん・・・あの、お願いが・・・」



そこで漸く私に気がついた哀ちゃんが木の上を指しながら言いずらそうに言ってきた。




その指を追う様に視線を上げれば猫の姿があった。



あー、この子猫を見て放っておけなくてさっきの行動に移ったわけね・・・・




「たくっ・・・たまたま通り過ぎただけなのに散々だぜ・・・」



ボウヤが悪態を吐けば哀ちゃんはギロッと彼を睨み、何処か意地悪そうに笑んだ。



「江戸川君に頼んだんだけど必要以上に小さくて届かなかったの・・・」




「へぇいへぇい・・・誰かさんのおかげでな」



ハッと疲れたように言ったボウヤに哀ちゃんは慌てていた。



「ちょっ・・・・」



「あっ・・・・」



そこで漸く私が居たことを思い出したボウヤが口に手を置いてこちらを向いた。



しょうがない・・・知らないふりしてやるか・・・




「誰かさんって・・・親が小さいの?」



不思議そうに首を傾げれば、ボウヤはあははは、そうなんだぁー・・・と笑った。




そんなボウヤを見る哀ちゃんの目が冷たい気がするが・・・




「それよりも・・・私も身長高い方じゃないから届かないかも・・・あ・・・」



うーんと考えた後、思いついたと言わんばかりに哀ちゃんを見れば彼女はキョトンとしたまま首を傾げた。





「よいしょっと・・・・」



「わっ・・・・だっ・・大丈夫なの・・・?」



「哀ちゃん軽いから、このくらいなら問題ないよ・・・あ、嫌だったらごめんね?」



「べっ・・別に私はいいけど・・・・」



そう言ってソッポを向く哀ちゃんの表情は紅く染まっていた。



今私は哀ちゃんを肩車してベンチへと立ち上がったのだ。



少し恥ずかしそうな哀ちゃんだが、すぐ目の前に子猫の姿を捉えて嬉しそうに微笑んだ。




「ほら・・・怖くないからおいで・・・」



子猫を抱っこしたのを確認してベンチから降り哀ちゃんの脇の下に両手を差し込んで降ろした。




「よいしょっと・・・・」



「あ・・ありがとう・・・」



「どういたしまして・・・」



子猫をしっかり抱いて上目遣いに言う哀ちゃんに内心ではかわいいな、と思いながら無表情で返した。



そしてすぐに離れようとすればボウヤが、子猫の飼い主探すの手伝ってと言ってきた。




「いや」



「あ・・相変わらず即答だね・・・;」



「自分に正直なの」



「でも・・・りゅうさん暇でしょ?」



確かに暇だけどもっ!


君に関わると事件が必ず起こるのよっ!


その言葉が喉まで出かかってやめておいた。



ボウヤの言葉に少し無言でいれば。



「・・・暇なのね」



哀ちゃんがボソッと呟いた。



「・・・・・・・」



ミャァーっと哀ちゃんに抱っこされてる子猫が私の肩に乗ってスリスリしてきた。



「わっ・・・・もう・・くすぐったいから・・・ちょっ・・舐めるな・・ふふっ、可愛い・・・」



ペロッと頬を舐められれば、口元が緩んだ。



猫は好きだ。


可愛いし、気まぐれなのに甘えん坊だし、可愛いし・・・・




「あ・・・(笑った)」




猫がじゃれ付く様を見ていたコナンと灰原はりゅうが少し困ったようにそれでも柔らかく笑った事に目を見開いた。




「猫・・・好きなのね」



フッと同じく柔らかく笑う灰原。




ハッとしたようにボウヤと哀ちゃんを見れば、ボウヤは未だにキョトンとしていた。




「・・・・・まぁ、可愛いしね」



「そうね、可愛いわよね」



「・・・・今回だけだから」



そう言いながら子猫を肩に乗せたまま哀ちゃんと歩き出す二人。



「あっ・・ちょっと待ってって!」



そんな二人を漸く我に返ったコナンは追いかけ始めた。



「・・・・・随分呆けてたわね」



追いついたコナンに灰原が意地悪そうに言えばコナンは、はははっと半目で笑うしかなかった。




「・・・・・(りゅうさんが笑ったところを初めて見てしかも見惚れちまったなんて・・・言えねー・・・;)」




子猫の飼い主を三人で探し始めれば、ある場所にある喫茶店のマスターが慌てて出てきた



今は哀ちゃんの腕の中で納まっている子猫をマスターが茶々と呼び、足を怪我していて手当をした哀ちゃんたちにお礼と言って喫茶店で何か飲み物を御馳走してくれるらしい。




「じゃぁ私はこれで・・・・」



その様子を横目で見ながら退散しようとすれば、ぜひあなたも・・・なんて言われ、哀ちゃんとボウヤに手を引かれながら渋々店の中に入った。




「ちょっと賑やかなお客さんが一人いるけど気にしないで」



そう言ったマスターの視線の先にはイヤホンで競馬を聞いているであろう毛利さんの姿。



ボウヤに毛利さん・・・もうこれ事件が起こる気配プンプンするんだけど・・・・;





はははっと内心で苦笑いするしかなかった。



席について冷たいドリンクを出されて三人で飲んでいれば店先の扉が慌ただしくあいた。




「マスター!!」



その声にマスターが慌てて出てきた。



何事だと首を出せば、50代そこそこの女性が息を切らせていた。




おいおい、まさか・・・・;



「たっ・・大変っ!早く来てっ・・・かっ・・金丸さんがぁ・・・」




その言葉に慌てて出ていくボウヤとマスターの姿。




そしてテーブルで項垂れる私・・・・



「どうかしたの?」



哀ちゃんが追いかけようとして私へと目を向けた。




「ビンゴ・・・ボウヤに関わると何かしら事件に巻き込まれる・・・・」



疲れたように言えば哀ちゃんはフッと笑った。




「本当・・・飽きないわよね、彼・・・・」




楽しそうですね・・・・



「・・・これが事件じゃなきゃね」



「行かないの?」



「警察がくるでしょうが、パス」



「そう言えばあなた嫌いだったわね・・・・」




ヒラヒラと手を振れば溜息を吐きながら諦めたように店を出て行こうとする哀ちゃん。



その後ろをトコトコ着いていく茶々が、こちらを振り向き、ミャァーと鳴いた。



「・・・・・・」



ミャァーミャァー



暫くその姿を見ているが茶々は鳴くばかりで・・・



「一緒に行こうって言ってるわよ?」




「・・・・・・」



哀ちゃんの笑みに、茶々の鳴き声。



負けました・・・・・



ボウヤの後を追う様に私も哀ちゃんと茶々と共に向かいの「カネマル」と言う事務所へと向かった。




そこには案の定・・・男の人が頭から血を流したまま息絶えている姿があった。




・・・遺体よりも私はあるものが気になって仕方がなかった。



「・・・何個あんのよ・・招き猫・・・・」



オフィスの居間にはズラッと並べられている招き猫の置物があった。




そしてすぐに警察のお出ましだ。



そこには目暮と佐藤と高木の姿。



「・・・・お馴染みの顔ぶれ・・・」



ハァっと疲れたように溜息を吐き、壁を背に凭れ掛かって事の成り行きを傍観しようと決めた。





この事務所は金貸しの仕事をしているらしく、社員は0で、社長の一人で営業していたとの事。



死因は固い鈍器なようなもので強打したため、まぁ恐らくこの中にあった招き猫の置物だろうとの事。




そんな説明を聞いていれば、目暮と佐藤、高木が私に気がついて驚いたような表情をした。



佐藤と高木は何処か気まずそうだ。



まぁそりゃぁそうだろう・・・前回この二人に会った時は犯人を殺そうとしていたし、キスまでしようとした所を見られているのだから。




「りゅうくん・・・最近よく会うようだ」



困ったように言う目暮さんに私はそうですね、と答えた。



「まぁ、今日は事件ホイホイが二人同じ場所に居合わせた時点で、少し諦めがついてましたけど・・・」




「ははは・・・コナン君と毛利君か・・・確かに事件ホイホイのようだな・・・;」



私の言葉に目暮さんは的を射ていると呆れたような視線をボウヤ達に向けた。




「まぁ、私はボウヤとたいして証言も変わらないので口は出しませんよ」



素っ気なく言えば目暮は、あぁ、と困ったように笑った。



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