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会いたくなかった少女(1/2)







「りゅう」


朝、外で朝食を食べようという事になって赤井と二人で食べていると、無言だったにも関わらず、いきなり名を呼ばれて目を向けた。



「何?」



「今日は仕事が長引きそうでな・・・」


赤井のそんな言葉に、そう言えば季節ハズレのハロウィンパーティがそろそろか、と思い浮かべた。



「・・・りゅう?」



「(あ、考えすぎちゃった・・・;)ごめんごめん、で、なんだっけ?」



「・・・・・・何か考え事か?」



どこか探るような目で見てくる赤井にギクッとするがそれは表に出さずに、何でもないと言い切った。



「・・・まぁ、いいが。今日は帰れそうにない」



まだ納得しきってはないが、話を戻した赤井。



「あぁ、最近忙しそうね」



「まぁな」



「・・・・組織絡みですかー?」



「・・・・それを答えたらお前が隠してることを話すか?」



「・・・隠してる事って何ー?」



そう言えば、赤井はフッと笑ってさぁな、と答えた。



ようはあれだ、私が話をしない限り話す気はない・・・って事ね。



「・・・・夜は大丈夫そうか?」



彼は毎度、夜自分が居ない時こうやって心配そうな表情をする。



「えぇ、大丈夫よ」


フワリと笑って言うりゅうに、赤井もフッと笑った。



「じゃぁ夕ご飯はどっか食べに行こうかな・・・」



自分一人分だけ作るのは面倒で、よく食べない事もあったが、彼と過ごすようになってからは必ず食べるし、彼が居ない日は食べずに居れば食えの一言・・・



お前は私の母親かっ!


まぁ、グチグチと毒を吐かれながら食べるのも面倒で、もう必ず食べる事にしたのだ。



ーーーピピピッ



突如鳴り響いた着信音に、携帯を取り出し一度だけ見た事がある番号に眉を寄せた。



「・・・ボウヤか?」



「まぁ・・・」




「ナンパされて乗ったお前が悪い、諦めろ」



「・・・・あんた、随分ナンパの言葉に拘るね・・・あー、諦めた・・・けどっ・・・踏ん切りがっ・・・・」



やっぱ関わりたくねー・・・・



うー・・・っと唸っていると、携帯が取り上げられてそのまま目を向ければ、ピッと通話を押し、投げて寄越した。



「なっ・・・」



口をパクパク開けて彼を見れば、彼は口パクでこう言った。



《うるさい》



あー、さいですか、着信音がずっと鳴ってて耳障りだと・・・・



半目で睨みながら渋々携帯を耳に当てた。



「・・・・もしもし」



《あ、やっと出た。僕だよ、分かる?》



「オレオレ詐欺こと、ぼくぼく詐欺ですか?」



《違うよっ!りゅうさん、分かってて言ってるでしょう?》



「あー、ごめんごめん、何分まだ尚諦めがつかなくて・・・」


《は?(諦め?)》



「あー、こっちの話。で?何か用?」



《この前の事覚えてる?》



「・・・・誠に残念ながら覚えてるわよ」



《残念って・・・;でさぁ、今日この後暇?》



それから数回会話を交わした後、電話を切ればハァっとため息が出た。




「・・・・夕ご飯の心配は無くなりました」



「そのようだな」



「私も食べるから、あんたもちゃんと食べなさいよ」



「・・・・あぁ」



「因みにコーヒーはご飯じゃないからね」



それに対し赤井は無言で朝食を取り始めた。



おいっ・・・図星かよっ・・・人には食えと脅す勢いで言う癖に・・・・







「じゃぁな、仕事が終わり次第連絡する」



「はいはーい」



そう言ってお互いに 別々の方へと歩き出した・・・・が、すぐにグイッと腕を引っ張られてバランスを崩しそうになる。



「わっ・・・あ、赤井?」



腕を引っ張った人物に目を向けながら首を傾げた。



「何かあったら電話しろ」



「え?」



「帰れないだけで、ずっと忙しい訳じゃない。この前みたいなことがあったらすぐに連絡しろ」



この前・・・恐らく爆弾に巻き込まれて耳を負傷し、歩けなかった時の事だろう。



「赤井しか電話できる相手が居ないって言ったの気にしてるんだったら別に・・・」



口が滑ってしまったようなもの、それが負担になり兼ねないので謝ろうとすれば、彼はフッと笑った。




「俺しか居ないんだろう?俺にとったら嬉しい限りなんでね、謝る必要はない」


「はっ・・・・・?」



ボッと頬に熱くなった。



その事で彼はククッと喉を鳴らした。



からかわれているんだろうか・・・そんな風に思って、半目で睨むも、顔が紅いぞ?とニヤリと笑われれば、バシッと彼の腕を叩いて置いた。



「まぁ、冗談は抜きにして・・・・」


こいつの冗談はなにが冗談で、いつから冗談か分かりずらい・・・表情を変えない人って言うのは厄介なものだ。



・・・・人の事は言えないが・・・私は内心では色々言ってはいるが、基本無表情を決め込んでいる。



私の無表情以外を見たのは多分、赤井だけだろう・・・



警察はもちろん、ボウヤや、子供達の前では冷たく振舞っているのだから。



「夜も・・・一人で余り出歩くな、出歩く位なら電話しろ」



あの時の様に公園前で座り込んで歩けなくなったら大変だと、本当に母親ですか、あんたは・・・;



だけど、その表情があまりに真剣で、瞳には心配そうな色を浮かべていて・・・・



分かった、と素直に頷けば彼は安心した様に笑った。



その微笑みを見るたびに、胸がトクンと跳ね上がり。



よく・・・こうやって微笑む様になったなぁー、なんて思いながら・・・・



最初の頃はどちらかと言えば挑発的に笑むか、意地悪そうな、人を小馬鹿にするような笑みばかりだったのに・・・・



「・・・・惚れた女・・・か」



今度こそ去って行った赤井の背をボンヤリ見ながらそんな事を呟けば、直ぐに浮かんだのは宮野明美の姿だった。



彼女は確か、私とは違って温厚そうで、優しい雰囲気で、よく笑っていたなぁと思った。



遠目で眺めるだけだったが、それでも彼女の人柄の良さは感じていた。



「・・・・・彼女にも・・・そんな笑みを浮かべてたのかな・・・」



あの愛おしい者を見るかのような目で、優しく微笑む赤井の姿を・・・・



「・・・・・赤井の奴、なんで私なんかがいいんだろうか・・・」



惚れた女・・・未だに謎だ。



「物好きな奴・・・・」



そう言ってフッと笑ったりゅうの顔は何処か照れているようだった。



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