寂しさを埋められないーーー(1/2)
自己嫌悪・・・・・
予想以上に私の精神は参っていたらしい。
疲れに加え、トラウマのフラッシュバック・・・そして赤井秀一を相手にする精神的疲労。
気を付けていたのに、気を張ってたはずなのに・・・どうして?
あぁー・・・・っと、もうこの世の終わりかのように落ち込む私。
その向こう側ではそれはそれは楽しそうな彼の喉を鳴らす声が聞こえてくる。
「いつまでそうしてるつもりだ?」
「放っておいて頂けますか・・・・」
そしてもう二度と、関わらないでもらえますか・・・・
「コーヒーが冷めるぞ?」
聞いちゃいないよ、この男・・・
恨めしそうに睨めば彼はそんな視線をものともせずにコーヒーを飲む。
「・・・・・」
ムスッと不機嫌そうな表情のままコーヒーを口に含めば・・・咽た。
「コホッ・・・苦っ・・・」
ぅぇーっと舌を出せば彼は、なんだ、コーヒーが飲めないのか?と尋ねてきた。
「コーヒーだけは苦手でね」
「生憎コーヒーしか置いてない」
「別にいいわよ」
そう言いながら少しづつ口に含めば、意外と優しい言葉を掛けられた。
「無理して飲む必要はない」
「・・・・飲むわよ、私に作ってくれたんでしょう?」
私なんかの為に、作ってくれたもの、それがいけ好かない相手でも嬉しく思うのは事実だから・・・
「意外と律儀なんだな」
「意外とは余計よ」
ピキッと青筋を立て、返す私の言葉に彼はまた喉をならした。
この男は私の神経を逆なでするのがお好きな様で・・・・
相手をするだけ疲れるだけだと、もう諦めがついてきた。
もういい、完全に諦めがついた。
いや、ちょっと前に諦めが肝心だとは思ったけどもっ・・・・
彼がこのまま私のさっきの言葉をなかったことにしてくれるわけがない・・・多分。
一応聞いてみるか・・・
「ねぇ」
「なんだ?」
「さっきの話、いや、いっその事今日の事全てなかった事に・・・・」
「生憎記憶力には自信があるんだ」
「・・・ですよねー」
はい、撃沈ー。
チーンと自分の中で空しくカネが鳴った気がした。
「・・・・・・」
膝を抱えたまま顔を少し上げて赤井秀一を見れば彼はコーヒーを飲みながら、カチカチと携帯を触っていた。
どの位そうしていただろう。
ただ携帯を触ってる彼の横顔を眺めていた。
夢見が悪かった・・・でもそれはよくあることで。
だけどその後は毎回毎回気分が急降下していって闇に落ちそうになる。
夜が明けるまでただずっと膝に顔を埋め、自身をギュッと抱きしめてやり過ごすしかない。
その時間が無限にも感じられて、長くて長くて1時間が、一日以上に長く感じられて。
「(なのに今は気分が急降下してたのに、いつの間にかそんな事も忘れてたーーー)」
ただ目の前にいる男の存在に振り回されて、疲労感が半端ないがーーー
それでもーーーー
ただ夜が明けるだけを待つよりは・・・気分が楽。
カチカチカチっと小さな携帯を触る音が聞こえ、スゥっと静かに目を閉じた。
独りじゃ・・・・ないーーーー
赤井は今まで感じていた視線を感じなくなり、チラッと彼女に目を向ければ膝を抱えたまま、目を閉じている姿。
先ほどと同じように、ただ音を聞くために目を閉じているのか?とも思ったがパチンと携帯を閉じ、音がしなくなっても彼女の目が開かれることはなかった。
「・・・・・」
スッと立ち上がり彼女に近づけばピクッと動く彼女の指にピタリと足を止めた。
「(・・・随分と気配に敏感だな)」
その様子にバスジャックでの出来事を思い出した。
「(・・・あのバスの中では寝たふり・・か)」
ゆっくりと近づき、彼女の前でしゃがみこみ、スッと頬へと手を伸ばせば、彼女の表情が少し柔らかくなった気がした。
その様子にフッと目を細め笑い、頭を撫でてみるが、起きる気配はなかった。
「寝た・・・か」
静かに聞こえてきた、スゥスゥと言う寝息に赤井は大丈夫だろうと判断し、りゅうを抱き上げた。
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