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見た事のない笑顔(2/2)








佐藤とりゅうは救急車で運ばれ、目暮が手術室の前にいると、沖矢、コナン、小五郎、妃、高木、白鳥、蘭と園子も病院へとやってきた。



「目暮警部、佐藤さんの容体は?」



「弾の一つが心臓近くで止まっている。助かるかどうかは五分五分だそうだ」



「そんなっ・・・」


驚く高木と白鳥。


蘭は目に涙を溜めて息を飲んだ。



「警部さん。りゅうの様子は?」



沖矢が尋ねた。



「幸い外傷はありませんが、まだ意識が戻らずっ・・・巻き込んでしまって申し訳なかった」



頭を深々下げる目暮に沖矢は「あなたが謝る事ではないですよ」と困ったように笑った。



そしてすぐに病室を聞いた後、コナンと目を合わす沖矢。その視線に気がついたコナンはコクンと小さく頷いた。



沖矢はこの場を離れるが、後でここで聞いた内容を教えて欲しいという事だ。



沖矢の後を追う様に蘭と園子もついていけば妃もその後を追った。






病室へと着いた沖矢はベットで寝ているりゅうの隣に腰かけ、布団から出ていた手を優しく握った。




「んっ・・・・・」



「りゅう?」



すぐに目を薄っすらと開けたりゅうを心配そうに覗き込む沖矢。



「りゅうさん!」



「大丈夫ですか!?」



蘭と園子も彼女が気がついた事に気づき、直ぐにベッドへと駆け寄った。



「・・・・・・・」



目を開けるりゅうを、心配そうな表情の三人が見つめた。



「・・・りゅう、大丈夫ですか?」



優しく声を掛ける沖矢をゆっくりと見るりゅうの言葉に沖矢達は息を飲んだ。




「・・・あなた、誰?」



「っ!!?」



「え?」



「・・・りゅうさん?」




ゆっくりと身体を起こすりゅうに沖矢が気がついて慌てて身体を支えた。



「・・・ここどこ?」



キョロッとゆっくりと周りを見渡しながら言葉を発するりゅうに、沖矢が「病院ですよ」と穏やかな声で話しかけた。



「病院・・・・?」



沖矢の言葉をゆっくり繰り返すりゅう。




「りゅう・・・さん?」



蘭が驚きを隠せないまま名を呼べば、彼女は「私の名前・・知ってるの?」と小さく笑った。



「私です、蘭です!覚えてませんか!?」



「蘭・・さん?初めまして・・・ですよね?」



必死な蘭に困ったように笑いながらも優しげな雰囲気のりゅうに蘭と園子は顔を見合した。



「わっ・・私ちょっとおじ様たち呼んでくる!!」



園子は病室を出て行き、蘭はどこか興奮気味にりゅうへと話しかけるが、彼女は困ったような笑みを浮かべるだけ。



そんな蘭を妃が小さく制止する為「蘭・・・」と肩を掴むが、蘭は悲し気な表情をした。



「じゃっ・・じゃあ!昴さん!私の事は覚えて無くてもっ・・・昴さんの事は覚えてますよね!?」



蘭はベッドを挟んで座っている昴の後ろへと行き、グイッと彼をりゅうへと少し近づけた。



「すばる・・・さん?えっと・・・初めましてですよね?」



困ったような表情を浮かべているものの、小さく笑う彼女に少し違和感を覚える沖矢。




「・・・・えぇ、そうですね。初めまして。沖矢昴といいます」



握っていた手をソッと離し、反対の手をゆっくりと差し出せば、ニコッと笑うりゅう。



「沖矢昴さん?初めまして。りゅうといいます」



差し出された手を握り返した彼女の笑みは年相応な・・・いつものどこか陰のある笑顔とは違う、無邪気な笑みだった。



「そんなっ・・・昴さんはりゅうさんのっ・・・」



蘭がショックを受けたように言葉を発すれば沖矢はそんな蘭へと向けて自身の口元に人差し指を当てた。



シッ。と小さく呟いて。




「どうしてっ・・・・」



そんな沖矢に蘭は困惑すれば沖矢はスッと立ち上がり、蘭を少し離れた位置に連れて行った。




「・・・恐らく一時的な記憶障害だと思います、そんな時に無理に思い出させようとすれば恐らく酷い頭痛に襲われかねない・・・」



今の彼女は万全ではないし、あんな事があった直ぐ後に、わざわざ苦痛を伴わせるのは・・・と言う沖矢の言葉に蘭は納得はしたものの・・・




「でもっ・・・昴さんの事もっ・・・」



まるで自分の事の様に傷ついている蘭へと困ったように笑う沖矢。その手は自然に彼女の頭を撫でた。



「そんな顔をするな。大丈夫ですよ。私は忘れられたとしても、彼女の手を離すつもりはないですから」



彼女を支え続けると誓いましたから。と言う昴に蘭は「昴さん・・・」と悲し気に顔を俯かせた。



「?」



そんな二人を見ていたりゅうは小さく首を傾げるも妃が気を利かせて話しかけた。



「りゅうさん、初めまして、妃英理と言います。あそこにいる蘭の母親です」



手を差し出されてその手を握り返すりゅうは笑って自己紹介を返した。



すると慌てて病室に入ってきた園子とコナン、小五郎に目暮、高木、白鳥といつの間にか居た千葉刑事の姿。




「りゅうさん!!」



コナンが名を呼べば彼女は困ったように笑った。




「ボウヤ・・・誰?私を知ってるの?」



その言葉に大きく目を見開く病室に入ってきたコナン達。



「りゅうっ・・・君・・・・?」



名を呼ぶ目暮に視線を移したりゅうは、顔を明るくさせた。



「目暮さん!お久しぶりです!お元気でしたか?」



ニコッと笑うその姿を見て目暮は更に大きく目を見開いた。



「目暮警部の事!分かるんですか!?」



蘭が慌てて聞けばりゅうは困惑しながらも頷いた。



そして蘭が小五郎たちに事情を話した。自分の事も彼氏である昴さんの事も覚えていないという事を・・・



「・・・記憶喪失?」



コナンが小さく呟くが小五郎が「だがっ・・・」と言葉をすぐに発した。



「彼女は自分の名前もっ!ましてや警部の事も覚えているんだぞ!?」



記憶喪失だなんてっ・・・とすぐさま否定した。



沖矢はそんな様子をジッと見つめていたが、不安そうなりゅうをみて「大丈夫ですよ」と優しく笑いかけた。



するとどこかホッとしたように小さく笑い返し頷くりゅう。



その表情を見て沖矢はニコッと笑いながらも心情は複雑だった。



彼女のそんな笑みは初めてでーーー




「おや?先生じゃないですか。どうしたんですか?皆さん勢ぞろいで・・・・」



聞こえてきた声に皆がバッと振り向けばそこには・・・



「安室さん!!?」



コナンが驚いたような声を上げれば小五郎が「おめー、何でこんな所に・・・」と呆れたような表情を浮かべた。



「知人が怪我で入院しまして、そのお見舞いに」



ニコッと笑いながら言う安室。そして「なにかあったんですか?」と尋ねる彼にコナンは困ったような表情を浮かべて後ろを向いた。



コナンの視線を追う様にそちらへと視線を向けた安室は目を小さく見開き息を飲んだ。



「っ・・・コナン君っ、りゅうさんどうかしたのかい!?」



「え?あっ・・ちょっと気を失って運ばれただけで怪我とかは無くて・・・」



コナンの言葉に安室はホッとした表情をして、すぐにハッとし、踵をかえす。




「おい、どうした?」



そんな安室の様子に首を傾げた小五郎だったが、安室は「・・・彼女の前に姿を見せるわけには・・・」と言いかけてすぐに言葉を遮られた。



その声は安室の予想外の人物で・・・しかもその言葉が・・・




「お兄ちゃん!!」



だった。バッと振り返れば顔を明るくさせて自分を見ているりゅうの姿だった。



「・・・・・・・」



その無邪気で綺麗な笑みは沖矢は見た事もなかった笑顔で・・・



安室・・・いや、降谷や目暮からしたら昔懐かしい、彼女の優し気な笑みだった。







見た事のない笑顔を向けた相手は・・・
(え?お兄ちゃん?)
(そういえば・・いままで気がつかなかったが、安室君はりゅう君のお兄さん、白夜君にそっくりだ・・・)
(((えぇっ!!?)))
(っ・・・・・)

(昴さん)
(・・・これは少し、気長に彼女の記憶が戻るのを待つということは出来そうにありませんね)
(・・・うん。記憶がない状態で安室さん・・・バーボンである彼に近づくのは危険だよ。降谷さん自身も、りゅうさんも・・・)
(・・・そうですね)



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