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見た事のない笑顔(1/2)








「あれ?りゅう」



「げっ・・・・」



トイレから出れば鏡の前で化粧直しをしていた佐藤とかち合わせた。



「げっ、とはなによ、げっ、とは・・・。それにしても久しぶりね!」



呆れたような言い方から一変。ニコッと笑い、背をパァン!と叩かれた。



「いっ・・・全く;あんたはいつも元気ね」



「元気が取り柄だからねー。それよりもしかして会場に居たの?」



「居たけど・・・」



佐藤の言葉に嫌そうな表情をするりゅうに彼女は苦笑いした。



「だったらさぞ、警察官だらけのパーティに嫌気がさしてるでしょうね」



「えぇ、もちろん」



直ぐにでも帰りたいくらい。と即答するとカラカラと笑う佐藤。



「・・・・刑事が二人撃たれたって聞いたけど・・・」



「あぁ、知ってたのね。もうその事で今皆ピリピリしてんのよ」



「・・・気を付けなさいよ」



「なぁに?心配してくれるの?」



りゅうの言葉にニヤニヤし始める佐藤に「馬鹿じゃないの?」と呆れたように返すりゅう。



「あははっ、まぁ大丈夫よ。私タフだから!」



「拳銃相手にタフも何もないと思うけどね」



溜息を一つ吐きながら答えればいきなり電気が消えた。



「・・・停電?」



「おかしいわね。ちょっと様子見てくるからりゅうはここに居て」



「ここに居ても何も、何も見えないのに無暗に動かないわよ」



目が慣れるまでは・・・



佐藤が手さぐりに歩き出したところで、なんだか光が視界に入りしゃがみこんだ。



おそらく洗面台の下。そこを開ければ懐中電灯が点けっぱなしで置いてあって・・・




「・・・なんで懐中電灯?」



それを取り出して立ち上がれば佐藤も気がついたようでりゅうを見た。



「あら、気が利くじゃない」



「いや、私じゃなくて、光が点いたままこの中に・・・」




「え?・・・・りゅうっ!!」




りゅうの言葉に首を傾げる佐藤だったが何かに気がつき慌ててりゅうへと駆け寄ってくる。



りゅうは「え?」とそちらを向けばーーー



ヒュンヒュンッーーーとサイレンサー付きの発砲音が聞こえ、目の前で佐藤が撃たれた。


その後も三発程発砲した弾は水道、りゅうの顔横、懐中電灯を掠め、水が噴き出し、懐中電灯は宙を舞った。




「っ・・・・」



その光が犯人の顔を映し出したが、すぐに佐藤の身体が倒れ掛かってきて慌てて支えようと手を伸ばすが、突如の事で支えきれずその場に共に倒れた。




そしてすぐに停電時の予備電灯が点き、薄暗くはあるが、周りが見える程度の明かりが灯された。




頭を床へと打ち付けたりゅうだったが、撃たれた佐藤の様子を見るために慌てて身体を起き上がらせた。



「佐藤っ・・・・」



自分の膝で倒れ込んでいる佐藤の身体を触ればグッタリとしていて眼も閉じられていた。



自分の足元には佐藤の血が流れ、吹き出る水と、その彼女の血で、血溜まりを作り始めていて・・・・



支えていたりゅうの両手も真っ赤に染まった。




「あっ・・・・あぁっ・・・・・」



思い出されるのは佐藤が自分を庇う様に前に立ち、撃たれて倒れていく姿。



ドクンッーーーと身体中の血が沸騰するような熱い感覚が駆け巡った。




ーーーりゅうっ・・・・ーーー



ーーーおにぃ・・ちゃん・・・?ーーー



ーーー・・・・くっ・・りゅうっ・・・怪我っ・・ないか?ーーー



ーーーないっ・・・ないけどっ・・おにぃちゃんがっ・・・ーーー



ーーー俺はっ・・・大丈夫っ・・・お前が無事でッ・・・よかっ・・・ーーー




一気に駆け巡る身に覚えがない記憶。



兄が私を庇って大怪我を負った出来事。



「あっ・・・お兄ちゃっ・・・私のせいでっ・・・ちがッ・・・桜・・・?おばあちゃっ・・・・違う・・・佐藤っ・・・佐藤っ!わたっ・・私を庇ったっ・・・?私がッ・・・懐中電灯なんかっ・・私のせいでっ・・・」



私のせいでお兄ちゃんがーーー



桜が、おばあちゃんがーーー



私のせいで佐藤がーーーー



駆け巡る記憶と、今の惨状、そして真っ赤に染まるその出来事に過去の事件の記憶も呼び起こされてーーー



早く佐藤をーーー


救急車を呼ばなきゃいけないのに身体も動かない。



頭がっ・・・割れそうなほど痛いっーーー



今がどこなのか、駆け巡る記憶で誰を助けたいのかも分からなくなってーーー



ただ一つだけ確かなのは、自分のせいで誰かが傷ついたと言う‘罪悪感’。




「やっ・・・いやっ・・・ごめんなさっ・・・ごめんなさいっ・・・ごめんなさいっ・・・・!!!」








「りゅう!!」



「佐藤さん!!」



沖矢達が駆け付けた時には二人とも床に倒れていた。



慌ててりゅうを抱き起す沖矢と、佐藤を支える高木。



「・・・・りゅうは外傷はないようです」



「気を失ってるだけみたいだけど・・・佐藤刑事は・・・」



「重症ですね・・・至急救急車をっ・・・」



沖矢とコナンが言えば目暮が慌てて電話を掛け始めた。



するとすぐに警察関係者、小五郎たちもその場へとやってきた。



「・・・・・・」



「・・・・・・」



沖矢とコナンは辺りを見渡し、洗面台の下が開いている事に気がついた。




「昴さん・・・・」



「あそこに落ちている銃は・・・」



「弾は空、9m口径のオートマチック・・・サイレンサー付きだよ」



「なるほど・・・それにしても懐中電灯・・・ですか」



「なんでこんな所に・・・りゅうさんが持ち歩いていたとか?」



「いや、りゅうはさすがに懐中電灯は持ち歩いてはいないかと・・・」



その後すぐに、ホテルの出入り口は封鎖され、そこに居た警察官含む全員は硝煙反応を調べる事になった。



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