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痛み分け(2/2)







「・・・・何やってんだ?お前ら」



雨宮が倒れているりゅうとその上に覆いかぶさっているユウナを見て呆れたように言えば「なんでもない」と上からどくユウナ。



「爆弾の構造は?」



起き上がりながら雨宮が手にしている爆弾に視線を向けるりゅう。




「俺達はマトリで警察ではねーからな。サッパリだ」



ただ、時間通りだとすれば後30分程ある。と言いながら床へと置けば一つを手に取りあちこち見るりゅう。




「複雑な使用ではあるけど・・・解体できない事はないか」




ただ時間がない。一つだけならまだしも、四つ解体となると30分だけでは恐らく足りない。




とりあえず、仲間に電話して来い。と雨宮がユウナへと携帯を渡した。



「え?だ・・・雨宮が電話すれば?」



「ばーか。お前ピッキングできねぇだろ?」



「でも・・・開かないんでしょ?」



「牢の鍵が開かなくても・・・拘束されてる鎖の鍵なら・・・・・」



雨宮はそう言って沖矢の背に回り、繋がれている鎖を手に取った。




「取れそうですか?」



「まぁ、牢のよりは・・・な。とりあえず俺とオニーさんと・・・」



「沖矢昴と言います」



「沖矢サンね。俺と沖矢さんとりゅうの指示通り爆弾が解体できれば・・・」



「だったらボウヤの鎖も外してくれる?」



「あー?」



雨宮の言葉に爆弾をあちこち見ながら言えば雨宮は怪訝そうな顔をした。




「爆弾解体くらいその子なら出来るから」



蘭ちゃんと園子ちゃんは後で鎖取るから待っててね。と言えば「はい」と笑顔で頷いた。



「このガキが?」



「ははっ・・・;(ガキで悪かったな)」




雨宮の言葉に半笑するコナン。




まぁ、りゅうが言うなら大丈夫だろうと雨宮は沖矢の鎖から外しに掛かった。



ユウナは電話の為少し離れた位置に居た。なんでも地下である為、電波が悪く少しでも電波のいい所を探しているとかなんとか・・・



ユウナが聞こえないであろう距離に居る事を確認した後、りゅうは小さな声で話し始めた。




「・・・ねぇ、授業中、私をみんなの前で態々振ってくれた人」




りゅうの言葉にゴン!と頭を思いきりぶつける音がした。



「なっ・・ななっ・・・」



お前覚えてた訳!?と雨宮が驚いた様に声を上げた。




「さっき思い出した。大方あの時の私の状況から覚えていないと踏んでたんでしょうけど・・・残念」




爆弾から視線を外さずに言えば雨宮は「あー・・・」と頭を掻いた。



「あの時は悪かったよ。もっと別の・・・」



「それはユウナに聞きました。ってか・・・バカじゃないの?」



呆れたように、心底馬鹿にしたように言うりゅうに、グサッと何かが刺さる雨宮。




「この11年、ずっと引きずってるとか・・・・バカじゃないの?」




「繰り返すな!」




「11年とか・・・まじ気持ち悪い」




「ぐっ・・・本当容赦ねぇな・・・;お前・・・」



沖矢の鎖の鍵から視線を外さずにやり取りしていたのだが、りゅうの毒舌に相当ダメージを負ったのか、その場で項垂れる雨宮。




その様子をコナン達は「・・・・・(りゅうさん、きつい・・・;)」と内心ハラハラしていた




「容赦?なに?してほしいの?あんたは容赦なく時と場合も考えず振った癖に?」




「だーー!悪かったよ!あの時は本当に悪かったと思ってる!」




「思い立ったらすぐ行動するのはあんたらしいけどね。授業中あんた何考えてんのよ」




「・・・・・・・」




もうこれ以上何を言おうが容赦なく言葉が返ってくると思った雨宮はとりあえず、鎖の鍵に視線を戻して無言で聞いていた。




「・・・ってかそんなことどうでもいいの」




「・・・どうでもいいと言いながら相当言ってたよな・・・;」




「うっさい。そんなくだんない事でユウナ泣かしてんじゃないわよ」




「・・・・・・・・・」




「あんただって気づいてるでしょ?あの子はガキの時から・・・それこそ小学校からあんたの事だけを見てたのよ?」



「・・・あぁ」



「・・・・分かってるならなんでまだ待たせてるの?私と別れて11年間・・・ずっと隣であの子は笑っててくれたんじゃないの?」



「・・・・あぁ」



「11年て・・・・」



「お前、11年を随分強調するな・・・;」



「当たり前でしょう?待ってる方の身になれっての。11年は・・・長すぎるでしょう」



「・・・お前との事があったのに、中途半端であいつの所に行けるかよ」




「律儀なのか、頭が固いのかただのバカなのか・・・・」



「・・・もう何とでも言えよ;」



「私ならなんとも思ってないわよ。あの後、授業中振られた女とレッテル貼られたり、普段厳しいあの時の教師が今日は帰るか?って言われたりしたけど全然!気にしてないから」



ニッコリと笑って言えば雨宮は頬を引きつかせた。



「「「(((絶対嘘だ)))」」」



コナン、蘭、園子は口出しはしない方がいいと思い噤んでいたが、その時三人は一緒の事を思っていた。




「・・・嘘。本当に気にしてない。ってかさっきまで忘れてたくらいだし・・・」



それくらいあの時、あんた達の事なんて考えられなかったし、最低なのは私の方・・・



「・・・なんでお前が、そんな顔すんだよ」



「・・・あんたがどうしてそうしたか・・分かってたよ。会ってからユウナがあんたの事を名字で呼んでるのも気づいてた」



何度も最初に「だ・・・」と言いかけて「雨宮」と言い直していた。




あんた達に私は今も気を遣わせているんだとつくづく思ったよ。




「・・・・・・お前」




雨宮が少し驚いた様に目を見開いた。




「・・・少なからず私はあんたに振られてホッとしたもの。あなたの名前を呼ばなくて済むことに・・・」



名前を呼ぶたびに必ず思い出される。違うって分かってるのにどうしたってあの苗字が・・・あいつの顔が出てくる。




「・・・あんたが気にする必要なんてない。最低なのは私。あんたに最低な事をさせたのは私のせい・・・」




「・・・お前のせいじゃねぇさ。ガキなりに・・・俺が考えてやったことだ。そのやり方が合ってたかどうかは今も分かんねぇけどな」




「じゃあさ・・・・」



「おう」



「「痛み分けって事で」」




そう言ってお互い爆弾と鍵から視線を外してニッと笑った。



「・・・・・最初に戻るけど、私の親友泣かせんな」




「・・・・悪かった」



この件が終わったら、今まで想ってた事全部伝えるとするよ。と雨宮は照れたように笑った。








痛み分け
(だ・・・雨宮、携帯返す)
(・・・・おう)
(?何??)
(あのさ、ユウナ。気を遣うの止めていいから)
(へ!?別にりゅうに気なんて遣ってないよ!?)
(・・・名前で呼んでるんでしょ?雨宮って呼ぶ前に毎回「だ」って付いてる)
(うっ・・・・;)
(・・・俺が言ったんだよ。お前の前で俺の名前を呼ぶなって)
(ユウナ、あんたのお願い、ちゃんと叶えたから)
(え?)
(散々言っておきました)
(散々容赦ない言葉を言われました。待たせて悪かったな。ここから出れたら・・・話がある)
(っ・・・・)
(・・・・おい)
(俺のせいじゃなくねぇっ!?ちょっ・・ユウナ、泣くな!俺がりゅうに怒られる!)
(ふっ・・うぅっ〜・・・)



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