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緋色の帰還(2/2)








「もしもし。遅かったな」



電話を取る安室はスッと椅子に座った沖矢とりゅうから離れた。




その様子を横目で見ながらテレビにすぐさま視線を戻せば工藤優作がマカデミー最優秀脚本賞を受賞している場面だった。




「ぎりぎり間に合いましたね」



「そだね」



沖矢の言葉に短く返しながら返事をし、袋から出した先ほど買ってきたお酒の缶の栓を開けるりゅう。




ジュワァァァと泡が噴出し「ぎゃっ・・」と咄嗟に缶を机の上へと持っていく。




「・・・・最低ー・・・」



噴出した泡はりゅうの手にかかり、ビチョビチョで心底不機嫌そうに言葉を発するりゅうに沖矢は苦笑いしながらテーブルを拭いた。



「先ほど勢いよく落としましたからね」




手を洗ってくるとその場を立ち去る際に、安室が「赤井が銃を発砲した!?」と大きな声を上げていて、通り過ぎる際にちらっとそちらに視線を移したが、足早にそこから立ち去った。




そしてすぐに戻れば安室は「赤井っ・・・貴様っ・・・」と悔し気に歯を食いしばっていた。




その表情を見て「相当憎まれてそうだな」と心の中で呟いた。



椅子に座り沖矢がテレビを見ている横でりゅうも視線をテレビに移せばそこに映っているのは工藤優作。



スピーチの最中に流れた言葉の中で「妻が彼に夢中でして・・イケメンで礼儀正しくてクールでダンディでもぉ〜、FBIに置いておくのもったいないくらーいって・・・」と言った。



飲もうとしていたお酒を危うく吹き出しそうになる。



「ぶっ・・・・・」




「大丈夫ですか?」



ゆっくりと背をさする沖矢。




「うん、ちょっと器官に入った・・・;」



そんな言葉を交わしながらも呆れたように彼へと目を向ければ沖矢も苦笑いを零していた。




そして電話が終わったであろう安室がこちらを向いたため、沖矢もりゅうも彼を見た。




「すみません、何か勘違いだったようで・・・帰りますね」



「えぇ」



安室が去っていくと同時に沖矢も立ち上がった。




「帰る前に一つ聞いてもいいですか?」




「なんでしょう?」




「どうして僕のような怪しい人間を家に入れたりしたんです?」




「怪しい人間だなんて思ってませんよ。あなたには彼女を助けていただいた恩もある」




沖矢が座ったまま二人を見ているりゅうへと視線を向ければ安室とも目が合ったので小さく頭だけ下げた。



「それに・・・是が非でも話がしたいという顔をされていたのでつい・・・随分話好きな宅配業者の方だなぁと思ってましたけど・・・」




「はぁ・・・そうですか・・・;」



沖矢の言葉に安室はキョトンとした顔をした。





「・・・宅配業者ってさっきから何の話・・・?安室さん探偵の仕事で来たんじゃないんですか?」



それともバイトの掛け持ちですか?と問えば安室は、ははっと苦笑いした。




「・・・・りゅうさん、この間の事」




安室が言葉を紡いだ瞬間、この間のことが何かすぐに分かったりゅう。




「忘れました」




これ以上何も言うなと言わんばかりに即答し、冷めた眼差しで彼を見れば彼は悲しげな表情を浮かべた後「・・・そうですか」と一言残して帰って行った。





沖矢が安室を玄関まで送りに出て行った時、携帯が鳴った。




「もしもし?」




≪立場は違うが本質は俺たちと同じ。奴らに噛みつこうとしている狼たちだよ≫




電話口から聞こえてくるジョディの声の後に赤井の声が聞こえてきて、電話を掛けるのなら話を済ませてから掛けろ、と小さく零した。




≪すまない、そっちの首尾はどうだ?≫




「今帰った所。工藤さんが安室さんを見送りに行ってるよ。そっちは?」




≪こちらも問題はない。というかノイズが酷いが・・・≫




「あぁ、今盗聴器の類がないか機械で調べてるからじゃない?ってか用が済んだなら切るよ?」




≪くくっ・・随分と釣れないことを言う≫




「・・・・はいはい」




ってか電話口から聞こえてくる「ちょっと!?聞いてるの?シュウ!!」というジョディの声にそっちで話をするかどっちかにしろ。と言って電話を切った。




「例の彼からですか?」



安室が完全に立ち去った事を確認し終わった沖矢が後ろからゆっくりとりゅうへと近づいてきた。



「あ、はい」



「盗聴器の類は?」



「なさそうです」



言われた言葉に調べていた機械を見せながら言えば彼は二階へと顔を向けた。



「おーい、もういいぞ?」



そう言うが二階から何も返答がなく、二人で顔を見合わせて首を傾げた。



そして二階へと彼が上がり始め、りゅうも後を追い、ある部屋の扉を開けた。




するとそこには机に項垂れているコナンの姿があった。




「あー・・・ち(つ)かれた・・・」



そんな様子を見ながらクスッと笑う沖矢。



電気を点けながら「お疲れさま」とコナンへとりゅうが言った。



「たくっ・・打ち合わせ通りやってくれよな・・・;」



「上手く言ったじゃないか」



呆れたような疲れたようなコナンに沖矢はゆっくり近づきながら笑みを零した。



「基本はこのマスクに仕込まれた変声器で私が喋りマスクを取れと言われたり、答えにくい質問の場合は二度咳払いをした後、変声器に内蔵されたスピーカーを通してお前が答える」




眼鏡を取り、マスクへと手を掛ける沖矢の姿をコナンはジト目で見ていて、りゅうは壁に凭れながらその様子を見ていた。



「そして私が喋りたくなったら一度咳払いをする・・・・」




声が沖矢のものから工藤優作のものへと変わり、変装マスクをビリッと破り捨てる彼。




「上出来じゃないか。助演男優賞を貰いたいくらいだよ」




ウィンク一つして笑顔で言う工藤さんに、コナンが「へいへい」と素っ気なく返した。



「まぁ、この賞をもっとも与えたいのは今もモニターの中で頑張ってる彼女だろうけど・・・」




テレビの向こうでは受賞のスピーチをしている工藤優作の姿。そう彼は工藤有希子さんだ。




「しかし・・・母さんに感謝するんだぞ」




「わーってるよ・・・」




「まぁ、りゅう君にもお礼を言うんだな。彼女に有希子顔負けの変装術がなかったら出来なかった計画だ」



優作がりゅうの方を向いて笑顔で言えばコナンは「ありがとう、りゅうさん」とお礼を言ってきた。



「いや、お礼を言わなきゃいけないのはこっちだよ。秀・・赤井の為に態々工藤さんにも、有希子さんにもとんだご迷惑を・・・」



そう言いながら頭を下げようとすれば工藤さんに止められた。



「なに、私たちは進んでやったことさ。謝る事じゃない」



「ありがとうございます・・・・」




「それで・・・彼はまたここに戻ってくるのかな?」



優作が聞けばコナンは頷きながら隣の博士の家を見た。



「あぁ、護んなきゃいけねー奴がいるからな・・・」








緋色の帰還
(ところでりゅうさん・・・アドリブすごすぎ・・・)
(え?)
(俺笑い堪えるの必死だったんだけど・・・)
(私もつい笑ってしまったよ)
(あー・・・(一瞬本気でそう見えた・・とは言わない方がよさそうね)



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