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緋色の帰還(1/2)







「ただいーーーー」



ガチャッと沖矢が居るであろうリビングの扉を開けて「ただいま」を言おうとして目の前の光景に言葉を中途半端な所で切ってしまった。



それだけでなくまさかの光景に動揺し、手に持っていた袋をガシャンと落としてしまう。




リビングの椅子に座っていた沖矢が視線をりゅうに向けたと同時に、沖矢の前に腰を少し屈めて立っていた安室もパッとそちらを向いた。




「あ・・・・・」




そう小さく言葉を漏らしたのは安室でりゅうは慌てて扉を閉めようとした。




「ちょっ・・まっ!」




安室は今の自分のしていた行動に漸く気がついた。



彼は沖矢へと詰め寄り、首元の服を捲っていたのだ。



しかも今今帰ってきた彼女からすれば位置的に丁度、安室が沖矢へと覆い被さろうとしていたようにみえ・・・なくもなかったのだろう。




何処か焦ったような表情を浮かべて慌てて扉を閉めようとするりゅうに安室は慌てて沖矢から離れ、扉が閉まる前に何とか足を挟むことが出来た。




「いっ!?」



「あっ・・すみませんっ・・でも足をいきなり出す安室さんが悪いんですよ!?」



ギリギリと足を蹴飛ばしながら扉を必死に閉めようとするりゅう。




「ちょっ・・蹴らないでくださいっ・・・まず話をっ・・・」




挟まってた足を引っ込め、代わりに手で閉まりそうな扉を必死に開ける安室。




「大丈夫です!私見てませんから!っていうか言いませんから!!」



ただ昴は私の彼でもある訳で、出来れば違う方とするか、もしくは私に分からないようにしてもらえませんか!?



と少し大きめの声で言うりゅうに安室は頬を染めた。



「ちがっ・・・ちょっと!誤解ですって!!」




力ではやはりどうしても安室には敵わず、扉は開け放れた。



「あー・・その、うん。大丈夫です。そう言う趣味の方とかいるっていうのは頭の端っこにはあったので・・・その・・・」



まさか安室さんが昴目当てで私に話しかけてきてただなんてちっとも!思ってませんから!!





「はぁっ!?」




りゅうの言葉につい呆気にとられたような声を出す安室。




「くっ・・・くくっ・・・・・」




部屋の奥で聞こえてきた喉を鳴らすような笑い声に安室もりゅうもそちらへと視線を向ければ顔を俯かせたまま肩を震わせ、笑いを耐えている沖矢の姿。




「昴・・・・?」



あんた頭大丈夫?それともあんたも同じ趣味を・・・・?と物凄く嫌そうな表情を浮かべながら言うりゅう。




「僕にもありませんから。それよりも・・・笑ってないで誤解だとあなたも言ってくれませんかね?」




りゅうの言葉に呆れながら溜息を吐き言い、沖矢へと言葉を向ければ彼は「失礼」と言って顔を上げた。




「りゅう、私‘は’ちゃんと女性が好きなので誤解しないでくださいね」



ニコッと笑顔を浮かべて言う沖矢にりゅうはあからさまにホッとした表情を浮かべた。




「あの・・・・僕にもありませんから」




沖矢の言葉に頭に青筋を浮かべながらもニッコリと笑顔で言う安室。



そして内容を軽く聞いた。




「あー、その・・変声器?っていうのを確かめたかった・・・ってこと?」




「えぇ」



「そうです・・・・分かって頂けましたか?」




にこやかに返事を返す沖矢とどこか疲れたような安室の返事。




「そうですか。私はてっきり見張りまでつけて家の中で何をしようとしてるのかと思ってました」




全く紛らわしいですね。と呆れたように呟きながら先ほど落とした袋の中身を拾い始めた。



「・・・・・そういえばよく入れましたね」




中には誰にも入れないように言ってあったのに・・・と安室が拾うのを手伝いながら目を細めて探るような目つきで言ってきた。




「・・・・玄関は諦めました」




「あぁ、だから玄関が開く音がしなかったんですね」



裏口を使ったんでしょう?と沖矢が言えばコクンと頷くりゅう。




「裏口には2人程人が居たと思うんですが・・・」




「・・・・・・りゅう」




安室の言葉に沖矢が何かに気がついたのか、やれやれと言ったように名を呼ぶ。



その事にビクッと肩を動かし、ポリポリと頬を掻いた。




「?」




首を傾げる安室にりゅうはあるものを取り出した。



「ペン・・・ですか?」




「博士が護身用にと彼女に作ってくれたのはいいんですが、どうにも怪しい影があると多用する様で・・・」



そのペンをあちこちから見る安室。そしてペンをヒョイっと取り上げて小さなボタンを押せばバチバチっと電気が走った。



「!!」




「スタンガン。気を失う位で死ぬほど強い訳じゃないから今頃はただ寝てるんじゃない?」



素っ気なくそう言った後、立ち去ろうとすれば後ろからそのペンを取り上げられた。



「え?」




「これは没収します」



「は?」




後ろを振り返れば沖矢がそのペンを取り上げている姿が目に入った。




「安室さんや外に居る方々は宅配業者の方ですよ?無暗に使うべきじゃないでしょう?」




「宅配業者?いやいやいや・・・それでも外にあんな囲んでたら家にも入れないし・・・」




「とりあえず没収です」




「えぇー・・・・・」




沖矢の言葉に不満そうなりゅう。




「ほら、マカデミー賞見るんでしょう?そろそろですよ?」




そう言われて渋々拾った袋の中身を持って椅子へと向かった。




「安室さん、すみません。彼女があなたの仲間に手荒な事をしてしまったようで・・・」




困ったような表情で安室へと言葉を発する沖矢。




「私が悪いんかい」




りゅうが小さく呟くもスルーされた。





「いえ・・・・女性からしたら家に帰ったら知らない男たちが居たらそりゃあ不審がりますよね」



すみません、りゅうさん。と困ったように言う安室に「いえ・・・」と返せば机に置いてあった携帯が鳴りだした。




「安室さん、携帯鳴ってますよ」




そう言われて安室は慌てて携帯を取った。



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