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独りじゃないからーーー(2/2)






世良の病室へと行けば人の気配がして扉の外で壁に背を預けた。




声からするに蘭と園子のようだ。



少しすると病室にコナンがやってきて「あれ?」とりゅうを見るなり首を傾げた。




「中に入らないの?」



「・・・タイミングを逃したし、このまま帰ろうかなって思って」



命には別状はないみたいだし、と答えればコナンは「そっか」と小さく笑った。




そんな彼と視線を合わせるようにしゃがみ、ツンッとボウヤの頭を突いた。



「あいてっ・・・」



「そんな顔しないの。いつもの不敵な笑みはどうした。探偵君?」



フッと笑えばコナンも同様に笑う。



「・・・・ありがと、りゅうさん」




「じゃあね」



そう言って去ろうとすれば「ねぇ!」と呼び止められた。



「んー?」と後ろを振り返れば「一つだけ聞いていい?」と尋ねてくるボウヤ。




「君は相変わらず、一つだけ聞いていい?と何度も聞いてくるね」



りゅうの言葉にコナンは苦笑いした。




「なに?」




「あのサイコロ、どうしてカウントダウンじゃないと分かったの?」




「・・・・カウントダウンは通常0までがカウントダウンでしょう?」




「・・・・・!!」




「気づいた?そう、ハンターが自分自身を‘0’と数えて自殺するシナリオなら納得はできた。でも彼は途中で死んでしまった。だとしたら0はどうやって表すのか?」



そう思った時、違う見方ができるんじゃないかと思ったの。そう言うと彼は首を傾げた。




「違う見方・・・?」



「カウントダウンじゃなく、違う意味があるんじゃないか・・・そう思っただけ」



まだその謎は解けてないからなんとも言えないけどね?と言えばコナンは「ありがとう」とお礼を言って世良の病室へと入っていった。




その様子を見た後、小さく笑いエレベータへと向かえば前からくる人物に少なからず驚いた。




「昴?」



そこには花束を手にしている昴の姿があった。




「りゅう、お前も怪我をしたと聞いたが・・・」



「掠り傷よ。心配しないで?」



心配そうな彼へと困ったように笑い言えば彼は少し待っていろ。と残し私が今来た廊下のほうへと歩いて行った。



すぐに戻ってきた彼に苦笑いしながら一緒に車へと向かう。




エレベーターの中、二人きりの空間で・・・




「ボウヤから聞いた。真純の頭にあった標準をお前がずらさなければ危なかったと・・・」




「・・・間に合ってよかった、けど・・・ごめんね。」




「なぜ謝る?」



「目の前にいたのに・・・私、しっかりと護れなかった・・・」



結局は撃たれてしまったし、重傷であることには変わりない。そして今回は護れたけれど、もしもあと一歩っ・・・遅かったなら・・・



そう考えると怖くて仕方がなかった。




手をギュッと握りしめて顔を俯かせるりゅうをグイッと自分の方へと引き寄せて頭を胸元へと強く押し付けるような形で抱きしめた沖矢。




「お前は護ったよ。お前のおかげで真純は生きてる。だから・・・そんな顔をするな」




頬に手を置き、泣きそうなりゅうの表情にフッと寂しげに笑う沖矢。



チュッと額に口づけを落とした後、もう一度ギュッと強く抱きしめた。





それから無言のまま、車へと行き助手席へと座ったりゅう。



家に帰っている最中、外の景色をボーっと見ていたりゅうが小さく言葉を発した。




「ねぇ、昴・・・・」




「はい?」




「・・・・護りたいものが増えたって言ったら、護れなかった人たちはどう思うのかな?」




「・・・・・・・」




りゅうの言葉に沖矢は何も言わずにただ、彼女が吐き出す言葉を静かに待った。




「愚かだと・・・どうせ護れないと呆れるかな?やめておけと・・・どうせまた失うと・・・私を止めるのかな?」




「りゅう・・・・」




「ねぇっ・・・どうしようっ・・・私っ・・・いつの間にか大切だと思ってるっ・・・」




失いたくないものがいつの間にかどんどん増えていってる・・・・




独りの時はこんな思いしなかったのにっ・・・



誰がどこで死のうがどうだってよかったのにっ・・・




キキッーーーと車を道路の端に停め、肩を震わす彼女を後ろからソッと抱きしめた。




「それが‘普通’なんだ。りゅう・・・」



「普通・・・?」



首元に回っている腕をギュッと掴みながら、りゅうの肩に顎を乗せてコンっと頭同士をぶつけながら頭を撫でられる。




「生きていれば、大切なものが増えていく。人に関わっていけば護りたいものだって増えていく・・・・」



耳元で聞こえる沖矢の声に目を閉じながら一言も漏らすことなく聞き取ろうと耳を傾けるりゅう。




「独りが楽だとそう思っていても、いつの間にか背負ってしまう。その背負うものがどんどん重くなっていっても・・・独りの時以上に楽しいと思わないか?」




「楽しい・・・?」



沖矢の言葉に浮かんでくるのは子供たちの無邪気な笑顔に蘭や園子、小五郎、世良にコナン、そして安室さんだったり梓さんだったり・・・



そんな人たちを思い出しながら最後に目に浮かぶのは赤井の・・・秀一の姿でーー



そして‘りゅう’といつも傍にいて名を呼んでくれる昴でーーー



「・・・うん。そうだね。楽しい・・・のかな?」



そんな感情・・・もうないと思ってたのに・・・



言われて気づいた。




私、赤井に出会ってーーー



あんなに関わりたくないと願い続けたボウヤに出会ってーーー



沢山の人に出会ってーーー



大嫌いなはずの警察官である目暮や佐藤たちと話すようになってーーー



忘れていた‘楽しい’という感情を、取り戻していたのかもしれない。




「・・・これが・・・普通か・・・」




「・・・あぁ。大切なものがあるということは、それと同時に失う怖さも確かにある」



沖矢の言葉に、静かにまた目を閉じるりゅう。



「失わないように・・・今度こそ護り通せるように・・・俺が強くなる。お前もお前が護りたいと思うものも全て護り通せるようにーーー」




「・・・・ふふっ、ばーか」



彼の言葉に小さく笑みが零れた。



「それじゃああんたが参っちゃうでしょう?」




「・・・・?」



りゅうの言葉に、沖矢は首を傾げた。




「私も強くなる」




「!!」




「強くなって今度こそ、大切な人たちを護りたい・・・・独りじゃ・・ないよ?私がいる。私にも・・・あなたがいる。独りでは無理なことでも二人いればーーーね?」



横にある彼の顔を見ながらフッと笑えば彼も同じくフッと優しく笑った。




「あぁ、そうだな。今度こそ必ずーーー」




「・・・うん」



「「あなた(お前)と一緒に、護り通すーーー」」




独りじゃないからーーー
(・・・・さっきからずっと思ってたんだけどさ)
(なんだ?)
(口調戻すなって言ってんでしょ?)
(ククッ・・・そうだったな)
(・・・・ワザとか)
(お前も大分慣れてきただろう?)
(・・・まぁ、最初のころに比べると・・・ね)



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