独りじゃないからーーー(1/2)
病院に着き、すぐに手術室へと運ばれる世良をコナンがジッと見つめていた。
「手当てしますのでこちらへ・・・」
「え?別にこのくらい自分で・・・」
上着を脱いで破ってしまったため、りゅうは今タンクトップ姿で、右腕は地面に叩きつけられた時に負ったであろう擦り傷だらけで所々血が流れていた。
大丈夫だと断ろうとしたが、救急箱を手にしている看護婦さんに椅子へと座らされた。
そして丁寧に手当てされて、右腕に包帯を巻かれたのだが・・・
「こんなに大げさにしなくても・・・;」
「りゅうさん、大丈夫?」
心配そうなコナンにポンポンと頭を撫でてフッと笑った。
「ボウヤは怪我はない?」
看護婦さんの言葉に「うん」と頷くコナン。
「でも血が・・・」
「僕のじゃないから・・・」
そんな会話をしていれば手術室とは反対の扉が開いたのが分かった。
「コナン君」
「目暮警部」
コナンが後ろを振り向けばそこには目暮の姿とジョディ、ジェイムズの姿があった。
内心で「げ;」と思うがこの場から逃げるにはちょっと無理そうで・・・・
「ちょっと話が聞きたいのだが・・・りゅう君!?」
「・・・・どうも」
立ち上がりながらペコリと頭を下げ、横を通り過ぎようとした。
「怪我を・・したのかね?」
「別に・・・」
「りゅうさんが居なかった危なかったよ・・・」
ありがとう。とコナンにお礼を言われて「どういたしまして」と一言返した。
「りゅう君っ・・・」
通り過ぎようとすれば目暮さんに呼び止められて振り返れば困ったような表情の目暮。
「・・・・話ならコナン君と一緒だと思いますけど?」
「・・・そうか。ひとついいかね?」
「なに?」
「なぜ・・・その事件現場に?」
「・・・・たまたま」
「そうか」
苦笑いの警部を通り過ぎる際に、ジェイムズと目が合ったが、お互いに知らないフリをした。
「りゅうっ!?」
折角この場から逃げようと思ったのにうるさいのが来たとげんなりした。
「ちょっ、どうしたの!?怪我してるじゃない!まさか巻き込まれたの!?」
大丈夫なの!?とガーっと一気にマシンガントークをしてくる佐藤に耳を抑えながらいやそうな表情を向けた。
「・・・・うるさい」
「うるさいって!失礼ね!心配してるんでしょう!?」
「頼んでない」
佐藤と共に足を外に向ければ苦笑いの目暮とコナンはゆっくりとそのあとに続く。
「あの・・・彼女は?」
ジョディが口を開けば目暮が「彼女はまぁ・・・あれだ。警察には協力はしないよ」と困ったように笑いそれ以降口を閉ざした。
「ちょっと!りゅう!こっち!」
帰ろうとすればグイッと引っ張られて目暮たちの方へと連れていかれた。
「・・・あのさ」
「別に証言しろなんて言わないから、ね?」
それに渡したいものもあるし、と言われて首を傾げながらも着いて行った。
「・・・・・・目暮さん」
「りゅう君!?帰ったんじゃっ・・」
庭に出てベンチに腰掛けるコナンと目暮、そして違うベンチにはジェイムズが座っていてその周りにはジョディとキャメル、白鳥に高木、千葉の姿があった。
りゅうがげんなりしながら目暮へと声を掛ければ彼は驚いたような表情を浮かべた。
「あんたの部下、どうにかしてくんない?」
うるさいし、強引だしうざい。と言えば目暮は「ははっ・・;佐藤君のことかね?」と苦笑いした。
「うるさいうざいって私のこと!?」
「強引の言葉は敢てツッコまないって事は自覚あり?」
「もうっ!りゅうってば!」
苦笑いしながら怒鳴る佐藤はあるものをりゅうに渡した。
「なに?」
「上着。私ので悪いけど、ないよりはいいでしょう?」
差し出されたものは薄手のパーカーで、タンクトップの私に気を利かせて車から持ってきてくれたのだとすぐに分かった。
「・・・・ありがとう。借りるわね」
とりあえず、なにか着たかったし彼女の好意はありがたかったので素直に受け取り、羽織った。
そして「じゃあ」と帰ろうとすれば佐藤になぜか腕を持たれて「まぁまぁ、聞いて行ってもいいでしょ?」と笑顔で言われた。
「・・・一般人に捜査情報提供してどうすんの」
「けれど君の推理には些か興味がある」
我々では思いつかない事を君は思いつくだろう?と聞いてきたのはジェイムズで・・・
「ジェイムズ、知り合いなんですか?」
ジョディが驚いたような表情で言えば彼は「少しな」と笑う。
頼むから・・・これ以上変なフラグを立てないで欲しい・・・
「あー・・・話を進めたいのだが、いいかね?」
目暮がコホンっと咳払いをして言えばみんなの表情が引き締まった。
なんだかなー・・・;そんな事を思いながら渋々コナンと目暮が座っているベンチの背もたれに背を向けて寄りかかった。
「コナン君、あれは無差別殺人じゃなく、最初からマーフィーさんを狙って・・・?」
目暮の言葉に小さく頷くコナン。
「ありがとう、それを確かめたかったんだ」
目暮の言葉にコナンが少し驚いたような表情をした。
「やはりハンターと犯人は共犯ということですか」
ジェイムズの言葉に動揺し始める刑事達。
目暮がFBIの協力により判明した事実を説明した。
ハンターは8年前に受けた頭の傷が原因で狙撃できる身体ではないということ、ハンターが残した日記は捜査の攪乱のため嘘の日記であること、そして犯人に自分自身を殺すことをも依頼していたという事。
「最重要人の自分を射殺することで捜査を撹乱するためだけでなく、次の標的であるマーフィーさんを油断させ射殺しやすくするため」
キャメルの言葉になんだか聞いたことがある内容だな、と思いジェイムズをチラッと見ると視線が合って彼はフッと笑った。
あー、そう言えば私が言った言葉をジェイムズにも言ったと昴が言っていたな、と思い出した。
次にジョディが近距離だったにも関わらず外した理由を話した。
「本人からの依頼とはいえ、躊躇したから。そしてこの射撃だけ別の銃の軽いものに変えた理由はハンターの遺体を出来るだけ傷つけたくないという犯人の気持ちの表れだったんじゃないでしょうか・・・」
「じゃあハンターがよく見えない目で相手を撃ったのも最初から相手を狙撃するつもりで撃ったのではなく・・・」
「犯人の気持ちを察したハンターから犯人へのメッセージ」
ジョディの言葉に高木、佐藤が続けばジョディが頷いた。
「えぇ、そう考えると凄腕のスナイパー同士が近距離にも関わらず一撃ずつ外した異様な現場にも納得がいく」
その事はあくまで憶測であって、それで捜査を進めるのは危険ではないかと白鳥が言った。
しかしジェイムズがそれを裏付ける証拠があるという。
それは第一狙撃現場である場所で、ベルツリータワーから撮影されたビデオに犯人らしき人物とスポッターらしいハンターが映っているとのこと。
「・・・・・・・・」
りゅうはその内容を聞きながらジッと考えた。
なるほどねぇ・・・・
だとしたら・・・・
「サイコロの目は?」
「え?」
突如発した言葉に驚きの表情を向ける皆の視線。
それをすべて無視し、今回捜査にあたってたであろう千葉へと視線を向けているりゅう。
「サイコロの目、今回の狙撃現場にもあったんでしょう?サイコロの目と薬莢が」
「はい・・・確かに残されてはいたんですが・・・それが・・・」
言葉を濁す千葉に目暮が「どうしたんだ?」と問う。
私はそこまで聞いてその場から立ち去ろうと足を病院内へと進めた。
「ちょっ・・りゅう!?」
佐藤の声にスッとそちらを向けば聞かないのか?という視線で・・・
「そこまで聞けば大体わかる。サイコロの目は今回1でなかった事。それとカウントダウンではなかったということが」
「えっ!?」
「そうなのか?千葉君!」
驚く佐藤達に目暮が慌てて千葉へと問えば彼は驚きながらも頷いた。
「たっ、確かに彼女の言う通り今回のサイコロの目は1ではなく、5の目で・・・」
「ちょっと、あなたなんでそんなことがっ・・・」
分かったのか?と聞きたげなジョディが横を通り過ぎ際にりゅうの腕を掴んだ。
「別に、ただカウントダウンにはどうしても思えなかった・・・ただそれだけよ」
それだけ残してりゅうはその場から立ち去った。
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