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事件ホイホイ×2(1/2)






「京都に行ってくる?」



沖矢はりゅうの言葉を読んでいた本から目を離して繰り返した。



「うん、なんか蘭ちゃんとボウヤからお誘いがあってね」



昴も行く?と聞けば彼は何かを考え込んだ。



「他に誰が行くんですか?」



「毛利さんとあと、園子ちゃんとかっていう蘭ちゃんの・・」



一応知ってはいるが、向こうからしたら会ったこともない他人、知らないふりをする。



「あぁ・・彼女ですか」



沖矢がポンッと頭に誰かを思い浮かべたようで。



「知ってるの?」



「一度この家に来られましたよ、あなたがまだ私に気がついてない時にね」



「へぇ、そう」



「メンバーはそれだけですか?」



「うん、そうだよ、どうかした?」



「いえ、だったら私の事は気にせず行っておいで」



ニコッと笑う沖矢。



「え?でも・・・」



「折角誘って頂いたんですから、それに蘭さんもあなたと出かけたいと前に言ってましたし」



だったら私は居ない方がゆっくりできるでしょう?と言う沖矢にりゅうは首を傾げた。



「じゃぁ何で最初は迷ったの?」



「あぁ、それはコナン君がいるならもしかして・・と思いまして・・・」



苦笑いしながら言う沖矢にりゅうは察した。



「あぁ、安室さん?彼なら来ないから大丈夫」



そもそも来るのなら私行かないし、と言えば沖矢は「そうですか」と笑った。



心配・・・してくれているんだろう、そう思うと心が温かくなった。




「!!・・・りゅう?」



本を再度読み始めた沖矢の後ろに回ってギュッと抱き着いた。



一瞬驚いたような表情を浮かべた沖矢だったがすぐに、前に回っているりゅうの腕を片手でポンポンと優しく撫で名を呼んだ。




「・・・ありがと」



素っ気ないが、そのお礼の言葉に沖矢はクスッと笑って、首だけを後ろに向けて口づけた。



「っ・・・・」



いきなりの事に吃驚して咄嗟に回していた腕が出そうになったが、その事を予想済みの沖矢は彼女の腕を片手で抑えていた。




スゥッと沖矢の目が開かれ、翡翠の瞳とぶつかれば一気に顔を真っ赤に染めるりゅう。



「んっ・・・・はっ・・・ちょっ・・んぅ・・」



その表情に沖矢は満足そうに笑み、りゅうの口を割って舌を差し入れ深い口づけを落とした。



こうして目を開けばりゅうの手が飛んでくることはないだろうと腕の拘束を外し、代わりに逃げようとするりゅうの後頭部をガシッと掴んだ。




暫くすれば沖矢は満足したのか、チュッとリップ音を小さく鳴らし離した。



離されるとりゅうはすぐさま沖矢と距離を取り、恨めしそうに睨みつけるも、顔が真っ赤で多少涙目になっていて。




「ククッ・・・誘っているように見えますが?」



逆効果ですよ?と意地悪そうに笑む沖矢にりゅうは「うっさい!」と手に持ったクッションを投げつけるも彼は難なく受け止めた。




「まぁなんにせよ、お気を付けて。何かあったらすぐに電話すること、いいですね?」




「・・・うん」




そんな事を話していれば外からクラクションが鳴った。



「あ、来たみたい」



「迎えですか?」



「なんか駅までタクシーで行くから拾ってくれるって・・・」



「なるほど」



「じゃぁ行くね」



カバンを手にして出て行こうとするりゅう。



「りゅう」



「え?」



そんな彼女の背を見ていた沖矢が名を呼べば振り返るりゅう。



沖矢はもう一度チュッと小さく口づけをすれば急な事過ぎて一時停止するりゅうの姿。




「気を付けて行ってらっしゃい」



動かないりゅうの背を軽くポンッと叩けば、彼女はハッとして小さく「行ってきます」と呟き出て行った。















電車に揺られている間、ボーっと外の景色を眺めていた。




私の向かいの席にはボウヤが座っていて、通路を挟んだ隣の席には毛利さん、蘭ちゃん、そしてさきほど初めましてをした園子ちゃんが座っていた。




「・・・・ねぇ、なんで今回私誘ったの?」



先ほど、何しに京都に行くのか聞けば、ある事件の事で毛利さんが呼ばれ、それに着いていくと言ったボウヤや蘭ちゃんの言葉に激しく後悔したばかり。



「気分転換にもなれば、と思ってさ!ほら、前の時なんだか思い詰めたようだったから・・・」



コナンが困ったように言えばりゅうは、そう言えば前回、昼食を一緒に取ろうとして私が急にボイコットしたのだ。



「ねぇ、もしかして安室さんって・・・」



「気分転換だというのならその話しないでくれる?」



「・・・うん、わかった」



りゅうの言葉にコナンは小さく頷いた。




「・・・それにしても、ボウヤからの誘いならすぐに断ったのに・・・」



「ははっ、だと思って蘭ねーちゃんに誘ってもらったんだ!」



ニコッと笑うコナンに、ジト目で返すりゅう。



そう、ボウヤからの誘いであれば絶対に断った。事件に巻き込まれる可能性が高いし・・・けれど今回、誘ってきたのは蘭ちゃんで・・・



返事に渋れば、「やっぱ嫌ですか?」と困ったような寂し気な表情の蘭に、行く、と答えてしまったのだ。




答えた後の蘭の表情はパァッと明るくなって、「じゃぁ明日迎えに行きますね!」と嬉しそうだった。



明日かよ!?随分急なんだけど・・・と思ったが、蘭のその表情を見ていたらなんだか「まぁいいか」と思ってしまって。




「事件関係で行くとか・・・フラグ立ちまくりじゃん」



「あ、でも小五郎のおじさんが解いてる間、僕たちは観光って事になってるよ!」




「へぇ、ボウヤも毛利さんとその事件の話聞くんじゃないの?」



「話だけはね!」




「へぇ・・・で、面白そうだったら参加する、と?」



「えへへっ・・・バレた?」



「バレバレ」



なぜ照れる?と呆れたように見ていれば蘭ちゃんから声が掛かった。



「りゅうさんとコナン君って、仲いいんですね!」



「え・・・」



「ちょ・・・りゅうさん、何で嫌そうなの?」



蘭の言葉に顔を顰めるりゅうにコナンがツッコむ。



「事件ホイホイと仲良くなりたくない」



りゅうの言葉に園子はあはは!と笑い出した。



「確かに!そのガキンチョは事件ホイホイだわ!」



「・・・・(ほっとけ)」



コナンがムスッと不機嫌な表情をしたのを見てりゅうは小さく笑った。








お寺へと着けば、住職とそのお弟子さん、あとは剣道仲間と呼ばれる人たち3人が居た。




特に興味もないのでボーっと景色を見ていれば耳に入ってきた言葉。



「12年に一度、一般公開されるものがあるんですよね?」



蘭の言葉になるほど、と納得した。


恐らく蘭ちゃんたちがついてきた理由は丁度明々後日から一般公開されるその如来様を目的できたのだろう。



「(まぁ、ボウヤと違って蘭ちゃんは事件には本当はあまり関わりたくないんだろうからね)」



しかしその話の最中、何処か気まずそうなお弟子さんの表情に首を小さく傾げた。



なにかあるな、と思ったが、知らぬが仏・・・と言う言葉がある通り、知らない方がいいだろうとあえてツッコまなかった。



のだが、すぐにその理由が分かった。



なんでもその明々後日一般公開される薬師如来様が賊に盗まれているらしい。



警察に通報しようとしたが、住職に止められたらしい。



なんでも「縁があったらまた戻ってくるやろう」と・・・



毛利さんも言った言葉だが、随分と悠長な・・・;



それから8年の月日が流れて、一般公開もいよいよ明々後日に近づいた五日前に寺にある手紙が届いたそうで。



「切手はなし・・・差出人もなしか・・・」



差し出された紙を見て小五郎が呟き、手紙を開ければ。



「この絵の謎を解けば仏像の在処が分かる・・か」



そしてもう一枚、絵がかいてある紙を見ている小五郎やボウヤを横目にりゅうは寺の庭をボーっと眺めていた。




そこから暫く絵とにらめっこが始まったようで、ボウヤと蘭ちゃんと園子ちゃん達が声に出している言葉が耳に入ってくる。




「一番上の五段の上に書かれてるのは蝉と天狗と金魚だね」



「その下の四段目には鶏と・・・ドジョウかしら?」



「黄色いドジョウなんて気持ち悪ーい・・・」






「・・・・・・」



どんな絵だよ・・・;と気になってしまい、縁側に腰かけていたが、立ち上がり毛利さんが難しそうな顔で見ている絵を後ろから覗き込んだ。





「ねぇ、お父さん。これ明々後日までに解けるの?」




「しっ・・心配すんなっ・・・こんな絵っ・・オレ様にかかれば謎でも何でもねぇよっ・・」



そう言う小五郎の表情は強張っていて・・・




睨めっこしているのを邪魔しちゃ悪いと思い、もう一枚コピーしていたその紙を見ている蘭たちの後ろへと移動した。




ーーーパシャ



「え?あ・・写メですか?」



携帯のカメラで取れば蘭が首を傾げて聞いてきた。




「家で暇してる奴にね、頭使わせてやろうと思って・・・」



ピッピッと操作しながら言えば、コナンが「昴さん?」と聞いてきたので頷いた。




「そっか!昴さんも新一君と負けず劣らずな推理力だもんね!」



園子がパンっと手を叩いて顔を明るくさせた。



「・・・まぁ、小五郎さんだけでも大丈夫だと思いますけど、彼の暇つぶしとして・・ね」



毛利さんへとフッと笑って言えば彼は「おお!俺だけでも構わねぇが暇ならドンドン送ってやってくれ!」



そう言った後、私に小さく耳打ちをしてきた。



「もし何か分かったらこっそり教えてくれないかな・・・;りゅうちゃん・・・」



「ふふっ・・分かりました」



毛利さんの言葉につい笑ってしまった。




「あ・・・・(また笑った・・・りゅうさんって本当に最近よく笑うようになったなぁ・・・)」




そんな様子を見ていたコナンが嬉しそうに笑った。




「ねぇねぇ!仏像探しはプロと昴さんに任せてさ!私たちは京都見物しようよ!」



園子の言葉に小五郎が真っ先に声を上げた。



「あー、そうしろそうしろ!お前たちは居ても邪魔なだけだ!あ、りゅうちゃんは居てもいいけど!」



「いえ、私も居ても何もお役には立てないと思いますので」



「和葉ちゃんが明日京都を案内してくれることになってるんだぁ、服部君は何か用事があるみたいで来れないみたいなんだけど・・・」



蘭の言葉に、おっと・・と苦笑いが漏れた。



これあれか?もしかして映画のテーマになかったか?内容なんて覚えちゃいないが・・・



なんにしろ、またしても関わりたくないフラグが立ちそうだ。



「(出来るだけ一人行動しよう)」



そう心に決めながらお茶を飲む。



「彼女が決まってる男は居なくてOK!」



園子の言葉に蘭は苦笑いした。



「ふーん・・・(あいつはこないのか・・・)」



コナンがその話を聞きながらポカンとしていた。



「コナン君も一緒に行くでしょう?」



蘭がコナンへと問えばコナンは「あ・・」と困ったような表情をした。



「僕はいいよ、近所の子と釣り行く約束しちゃったし・・・」



「あら?もうお友達ができたの?でも一人じゃ駄目よ、危ないわ」




「大丈夫!りゅうさんも一緒だから!ね!」



おい、待て、確かに蘭ちゃん達と行く気はなかったが、お前とは更に行動を共にする気はない・・・



「ね?さっきそう約束したよね?」



「・・・・・・・・」



お願い、と言わんばかりのボウヤの姿に冷めた目で見つめる。



「・・・・・・・蘭たちと離れたら別行動でいいから(ボソッ)」




「私が見てるから安心して?」



コナンの言葉にすぐさまに表情を切り替えて蘭へと言えば蘭は何処か残念そうな表情をした。



「りゅうさんも一緒に観光するとばかり思ってました」



「ごめんね?私どっちかっていうと一つの場所で景色を見ている方が好きだから、基本ここに居るわ」



毛利さんもここに居るようだし、と言えば蘭は「そうですか」と頷いた。



「・・・この依頼が終わったら、皆でご飯でも食べに行きましょうか」



蘭の何処か寂しそうな表情に、りゅうは罪悪感が生まれ、言えば蘭は嬉しそうに顔を明るくさせた。



「はい!」



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