趣味は盗聴(2/2)
「ここですね・・・・」
沖矢があるビルを見上げればシャッターが下りていた。
開けようとすれば何かに引っ掛かって開かず、どうしようか?と沖矢へと視線を向ければちょっと失礼、と私がやったようにシャッターへと手を伸ばす。
が、やはり開かないようだ。
フゥっと彼は深呼吸して先ほどより幾分か力を入れて持ち上げたシャッターはガラガラっと開き始めた。
「・・・・力技ですか・・・」
私には無理だわ、と呆れたように溜息を吐けば、沖矢はクスッと笑った。
「鍵が閉まってる手応えではなかったので恐らく何かで塞いでいると思ったんですよ」
だったら力技で開くと思いまして・・・・
そして中を歩けばなんだか話し声が聞こえてきた。
沖矢は階段を上る際にスッとりゅうを背に隠して話している男へと肩を叩いた。
「!!」
ビクッとして振り返る男に素早く鳩尾へと拳を繰り出す沖矢。
「うっ・・・・」
男はドサッと倒れ、りゅうと沖矢はさらに上へと足を進めた。
「・・・・数人の気配がする」
「博士以外にもやはり子供たちが居たんでしょう」
沖矢が4階の奥の部屋の扉を開ければ扉の向こうには身構えているコナンの姿とその後ろで怯える哀ちゃんの姿。
更に後ろには物陰に隠れている子供たちの姿があった。
「すっ・・昴さん・・・?どうしてここに・・・?」
コナンがいち早く我に返り、沖矢の姿に目を丸くした。
「いえね、夕方になっても博士の家の明かりが点かないので気になって様子を見に行ったら玄関の鍵が開けっぱなしで入ってみたら博士もその子も居なくてね、どうしたものかと思案していたら電話が鳴ってね・・・」
電話に出て見たら父親は預かった、助けてほしくば1億用意してここに持って来いと言われてね。
「え?じゃぁ誘拐されたじいさんってまさかっ・・・」
沖矢の言葉にコナンが驚きに目を見開けば沖矢は、えぇ。と頷きロッカーへと近づいた。
そして先ほど気絶させた奴から奪った鍵を指して開けた。
「君たちもよく知っている、阿笠博士だよ」
ロッカーを開けばそこにはグーグーと寝息を立てて寝ている博士の姿。
「「「博士!!?」」」
その姿に子供たちは驚きの声を上げた。
「玄関の鍵が掛けてなかったという事は犯人は恐らく宅配業者を名乗り博士を攫ってここに監禁したんでしょう。博士は色々なものを発明していますから、相当稼いでいると勘違いしてね・・・」
沖矢が博士を引っ張り出し、拘束しているテープを剥いで行く。
沖矢の言葉を聞いてコナンは半目で呆れたように笑った。
「(だろうな・・博士の発明品は殆どガラクタばっかで本当はジリ貧だけどな・・;)」
「じゃぁたまに電話に出る中学生って・・・」
「灰原の事だったのかよ」
「哀ちゃん声も話し方も大人っぽいから・・・」
光彦の言葉に元太と歩美も笑顔で話す。
「・・・あれ?でもさっき目の前で電話してる時、電話に出たのは・・・」
コナンがフと疑問に思ったことを口にした。
「・・・一度目は若い男が出たって驚いてたけど二回目の電話では出たみたいだけど、私ここに居たわよ・・・」
どこか警戒したように言う哀ちゃんに沖矢は、あぁ、それは・・・と扉の方へと目を向けた。
それにつられてコナン達も扉の方へと目を向けた。
「りゅうさん?!」
コナンが驚いた様に言えばりゅうはゆっくりとコナンへと近づいた。
ズイッとコナンに顔を近づけてソッと頬に手を当てる。
「えっ・・・?」
いきなりの事に顔を少し朱に染めるコナン。
「・・・青くなってる。殴られたの?」
「あっ・・いやこれは・・・(自分の蹴ったボールが跳ね返って気絶したなんて・・・)」
カッコ悪くて言えねぇーっと口を閉じるコナン。
「(そういえば・・・)沖矢、私ちょっと先行く」
博士の拘束しているものを子供達と取り終わって起こそうとしている彼に声を掛ければ沖矢は首を傾げた。
「どちらに?」
「すぐ追いつくから、じゃぁね」
そう言ってりゅうはそのビルを一人で先に出て行った。
「えー!りゅうお姉さんともっとお話ししたかったのにぃー!!」
すぐ居なくなったりゅうに歩美が残念そうに言う。
「また明日にでも遊びに来ますか?カレーを作ったので博士の家にお裾分けしようと待ってたんですよ」
沖矢が歩美へと視線を合わせて言えば歩美はパァッと顔を明るくしてうん!と元気良く頷いた。
「カレー!?」
「僕たちも明日遊びに行ってもいいんですか!?」
元太の声と光彦の声にも沖矢はえぇ、と笑顔で頷いた。
灰原だけはそんな様子を警戒したように見ていた。
沖矢が送っていきますよ、と言えばまだ明るいから大丈夫だと言って手を振りまた明日!と去って行った。
帰り道が一緒のコナン、灰原、博士と沖矢は同じ方向へと歩き出した。
「・・・・・・・」
少し先にあるコンビニの前で、りゅうが壁に背を預けて待っているのが目に入った。
「りゅう」
沖矢が声を掛ければ気がついたようで、ゆっくりとした足取りで近づきコナンの前でしゃがんだ。
「え?・・・つめたっ・・・」
コナンはいきなりの事に驚いたが次の瞬間頬にヒンヤリとした冷たさに思わず後退った。
「・・・ほら、自分で手に持って・・・」
「あ・・うん、ありがとう・・・」
りゅうが手に持っていたのは氷を袋に入れてタオルで包んだもの。
コナンの頬が青くなっているのをみて、近くにコンビニがあったことを思い出し、用意しておいたのだ。
「子供たちは?」
立ち上がり沖矢へと問いかければ帰りましたよ、と答える彼。
「夜遅いんだから送ってきなさいよ・・・」
呆れたように言えば彼は「そのつもりだったんですが・・・」と苦笑いした。
「まだ明るいからって散り散りに走り出しちまったんだよ、アイツら・・・」
コナンが助け舟を出す様に言えばりゅうは、そう、と返事を返して歩き出す。
「ねぇ、さっきから不思議だったんだけど・・・」
灰原の言葉にりゅうが振り返る。
「・・・私の声は中学生に聞こえても、りゅうさんの声とは全然違う、中学生には聞こえない」
「あぁ・・・・」
チラッと沖矢を見れば彼は困ったように笑うだけ。
趣味は盗聴?(・・・ごめんなさいね?あなたの声借りたわよ?)
(((!!!)))
(・・・キッド以外にも変声機なしで・・・)
(凄いもんじゃのぉ・・・)
(・・・・自分じゃないのに声が聞こえるとか変な感じ・・・)
prev
back