Heart in Trust


とりあえず掃除も終えたところで、俺たちは全員でプチンプチンと庭の草をむしる。




プチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチンプチン




「………俺がブッチンっていきそうなんだけど!?」

「何言ってるんですか、隊長。文句言わずに清掃活動してください」

「いやいや、今ルキアの極刑止めようって話なんだよな?!なんで俺ら呑気に草むしりしてんだっけ!?」




隊舎の掃除は活動拠点だし仕方ないから掃除したけど!

祐樹の横で胡座をかいて地面に座り込めば、氷の音とともに水が差し出された。
それを受け取って、ぐっと飲み干す。




「だって景観悪いじゃないですか」

「えっ、この草むしりって景観の問題だったんですか…!?」




ガーンとショックを受けた様子の白鳥がふらりと倒れかけ、翠に支えられる。
手ぬぐいで手の汚れを落として白鳥の額に触れれば微妙に熱があるような気もしなくない。
無理するとすぐぶっ倒れるのは変わってねーんだな。

白鳥を背負って室内に入れば守里が真剣そうな表情で行く手を阻む。




「ねぇ奏司ちゃん」

「?」

「そろそろちゃんと考えよ?守里たちがこれから歩んでいく道だから、ちゃんと考えよう?誰と喧嘩するのか、誰と決別するのか。



―――今度こそ、真実を選ぶのか。」




 … … … … … 。




「あの日守里たちは逃げちゃった。何もできずに、何もせずに。もっと正面から向き合うことだってできたはずなの。でも出来なかった。
出来なかったのはここが強大な組織だったから。組織の一片を崩すことになるような判断を下すことができなかったから。
守里たちはここを守るためにいるのに……守らずに、守れずに、それを捨てて…逃げた。それに対しては誰よりも奏司ちゃんが悔やんでるはずなの。


だから、今度こそ後悔しない道を選びたいの…!」

「守、 ズ……ッ …!?」




重たい霊圧が肌を撫でる。
デタラメな霊圧だけなら俺だって当てはまるし、山爺だって当てはまる。
だけどこれは違う。
これは、ただ垂れ流しにされているだけの霊圧だ。
本気で霊圧を放とうものならこれ以上の重さで俺たちに語りかけてくるはず。


……なんなんだ?これは。





「懺罪宮辺り、でしょうか」

「……っ、一護…と岩鷲?」

「一護に岩鷲?誰なの?それ」

「えっと確か…ルキアちゃんが力を譲渡した人と…。もうひとりは…?」

「黒崎一護と志波岩鷲、俺と一緒に来た旅禍だ」




馬鹿でかい霊圧ともう1つ感じた一護の霊圧。
近くには岩鷲の霊圧もあって、もう1つある霊圧は知らないヤツのものだ。
そこまででかくねぇから隊長格じゃないだろう。

一体懺罪宮で何してんだ…?!
現世に来てたヤツとは決着がついたんじゃねーのかよ…?




「!
今度は八番隊方面だよー、奏司。旅禍ってのは奏司含めて戦闘狂ばっかな訳?」

「オイ、俺を戦闘狂に入れんな。それに別に俺ら全員戦闘狂ってわけでもねーよ」




八番隊方面から感じるのはチャドの霊圧だった。
チャド……か。
そういえばアイツとはあの時知り合ったんだったか。














*     *     *















「なんであんなボ――ッとしてたんだよ!?チャド!」

「…茶渡だ」

「そのネタはもういいんだよ!今回はたまたま俺らが近くにいたから良かったけどよ、あのままだったら大怪我してるとこだぞ!」

「なんであんな強いのに絡まれっぱなしで手を出さないんだ?」

「…………決めてるんだ。俺は、自分のために拳は振るわない…。…アブウェロとの約束だ」

「アブ…なんだって?」

「アブウェロ=Bじいちゃん≠フことだ。名前はオスカー・ホアキン・デ・ラ・ロサ」

「何人だよ?汗」

「メスティーソ。メキシコ人だ」




ここに来る前はメキシコにいたんだ。

そういうチャドだったが先月の自己紹介の時は沖縄出身だと言っていた。
どういうことだと言えば「そうだったか?」と首をかしげる始末。
毎度毎度テキトーなことばっかり言いやがって。

もう助けてやんねーぞ。




「…そういやその首の、いつもつけてるな。大事なもんなのか?」

「…ん?…ああ…そうだな。大事だ。…多分命よりも

「…………外国のコインみたいだな、それ。どこのだ?」

「メキシコだ」

「メキシコねぇ……」

「…そろそろいくか。男3人こんな川べりで喋ってることほど無駄な時間もないだろう」




そう言って腰を上げるチャドのズボンにはだれかの携帯が引っかかっていた。
さっきの連中のだというのなら遠慮する必要はないだろう。
仕方ないかえしてやるか、なんて優しい心を持つチャドとは違って俺と一護は携帯を蹴り飛ばし破壊。
返してやる必要なんかあるか、とチャドに言い放っていた。




「なぁチャド」

「…ム?」

「俺も昔は悪ガキだったんだ。理由もないのに兎に角全部が気に食わなくて、力の限り暴れまわってさ、母親に心配ばっかかけて怒られてた。
……今は、違うよ。お前と一緒でなんの理由もなく暴力は振るわない。お前と一緒でさ、大事な人が教えてくれたんだ。


人は自分のためだけには強くなれない。人を想い、想われ、支え、支えられ、やっと強くなれるんだ―――って。」

「……そうか」




後から聞いた話ではチャドは沖縄で生まれてメキシコに行っただけでどっちも嘘じゃなかったらしい。
両親が早世してほかに親類のいなかったからメキシコにいたじいちゃんに引き取られただけ。
当時のチャドはどうしようもない甘ったれで体のでかさに任せて少しでも気に食わないと相手を殴り倒してたらしい。
そんな自分をいつも力強く叱ってくれたじいちゃんのおかげでマトモになれたというチャド。

そんなチャドを2度目の暴力が襲ったのは1日と経たない次の日だった。
チャドの大事なものをペンチでぶった切ろうとしてたのかおろうとしてたのかは当の本人にしかわからない。
けど大事なものを壊そうとしてたのは分かった。

一護と一緒に飛び蹴りを食らわして川へと吹っ飛ばして、更に顔を踏んづけて川に沈めてやった。
そいつがなにちんだったかは忘れた。

……あ、横ちんだっけ?
まあそんなことはどうでもいい。


チャドの大事なものを奪還したあと男のポケットをあさって携帯を取り出した一護は救急車を5台要請。
5台っていうのは横ちん(不良)の仲間の人数で携帯を放り投げた一護と共に俺も殴り合いに参戦。
殴れば殴り返されそうになるけど、それを軽々と交わして脳天に足蹴りを食らわせてやればどいつもこいつも沈んでいく。




「そうだ、こうしねえかチャド。お前は今までどおり自分のために誰かを殴ったりしなくていい。
その代わり俺らのために殴ってくれ。俺らはお前のために殴ってやる。
お前が命かけて守りたいモンなら俺らも命かけて守ってやる。」

「前も言ったけどさ、人は自分のためだけには強くなれないんだぜ。人を想い、想われ、支え、支えられ、やっと強くなれんだ。
だからお前もそうしろよな」

「「約束だぜ」」

「―――…ああ…」














*     *     *















「―――!!」




チャドの霊圧が消え……、いや生きてる。
微かだが霊圧が存在している。

ならすることは分かりきってるじゃないか。




「守里、蜂陳。八番隊で倒れてるヤツ、連れてこい」

「「!」」

「守里なら造れんだろ。んで、蜂陳なら知られることなく連れてこれるだろ」

「あは、そこまで信頼されちゃあ仕方ないの。行ってくるねっ」

「分かりました。そこまで仰るのなら」




目の前から消えた2人を見送って、一護たちのほうへと意識を集中させる。
一護は一体、誰と戦ってるんだ―――?




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