琉輝「昔、昔のお話だ。とある財閥には子供が2人いました。


その財閥には怖いこわーい、呪いの噂があったとさ。
学校の皆に知られた2人の子供はその後………転落人生まっしぐら。


とある1人の女生徒に叩かれ、殴られ、罵倒され、嵌められ、苛められ、
学校中が敵になりましたとさ。


だが、それでは終わらない。
幼馴染でさえも、<信じていた>幼馴染でさえもが<裏切り>、苛めの道へと走ったのです」




その話をしている中で、琉輝の頭は妙に冴えていた。
話してしまった方が楽になるとはよく言ったものだ。


フィールドは<擬似>マグマでじりじりと溶かされている。




琉輝「おっと」




琉輝はフェンスへと飛び移った。




琉輝「誰もが敵、敵、敵。
その噂は何れ町内にも広がり町内全員も敵になりました。


家では両親が後継ぎ問題で騒ぎ、喧嘩し、罵倒しあう。


どこにも安息なんてない世界で子供たちが求めたのは片割れの姿でした。

いや、求めたのは片割れじゃない<自分>だったのかもしれません。
双子だった2人は酷似していたのですから。


片割れを自分に見立てて依存した。


おかしな話でもないでしょう?



その後2人は両親も事故で亡くしてしまいました。




―――ああ、違った。


事故に合わせて<殺した>んだったっけ?」




琉輝・亞琉・XANXUS以外「!!?」




琉輝「あーそうだった。訂正、訂正。


2人は数十km走ったらパンクするくらいタイヤを綿密に計算して削り、両親を殺したのです。



、だな。




それくらいもうどうでもよくなったんだよ、2人は。


<家族>とか!<血縁>とか!<世界>とか!


もうなんなんだろうな?あれは。縛り付けて押し付けて離さないなんつーの?<組織形態>っての?
ああしろこうしろ言うから大人しく従ってやったよ。でも<教師(あいつら)>は<いい子>なんか、求めてなかった。自分に従う人間がいれば、良かっただけだったんだ。


もう、なんだったんだろうな。ずっとずっと<いい子>で居続ける必要性が見当たらなくてさ、もうやめたよ。
あの日からずっと俺と鈴音の<世界>はぶっ壊れたまんまだ。


鈴音<だけ>いればいい。鈴音だけが<俺の世界>で、俺だけが<鈴音の世界>で在りたい。

それが、俺たちの<幸せ>だ。」

ラッド「狂ってる……、あんたたち、狂ってる…!!!」

琉輝「そうか?



それにさ、どうでもよくなった世界にもまだ未練があるんだよ。それすらも、お前らからしたら狂ってんのかな?


<報復>なんて、考えてるよ、俺は。

いつか絶対殺してやるって決めてんだ。殺したらどうするかなんて決めてない。
ホント………どうなんだろーな。全然考えてねーんだ。きっと、そいつら殺したら……捕まるよなー。


でも俺、それでいいよ。今は、鈴音を守ってくれそうな奴が1人いるから」

亞琉「!」




そう言って微笑んだ琉輝が亞琉をみた。




ツナ「(今のが琉輝さんたちの過去…?

殺したって…言ってた…。裏切られるのが怖いって…そういうことなのか…?

でも、なんか違う気がする……。まだ、別の何かがある気がする)」




ツナは琉輝を見つめる。
だが琉輝が気づく様子もなかった。




琉輝「そういえば財閥の名前くらい知ってるよな?お前ら全員知ってんだろ?
苗字で分かるよな?数年前に潰れた財閥」




シエラ「っ!!……お、音羽……って、まさか!」

マーモン「シエラ、どうしたんだい?」

シエラ「…ボンゴレと繋がっていた財閥よ…。私、九代目がずっとその子供たちを捜しているって聞いた事があるわ。そんな、まさか…!!」




リボーン「ちっ…俺もその件で調べてはいたが疑問が残ってたんだ。音羽財閥は娘2人じゃなく息子と娘1人ずつだった」

芽埜「え?それどういう……」

獄寺「聞いたことねーか?紀本。娘しか生まれなかった家が、そいつを男装させて後継ぎにしたっつー話もあんだろ」

シャラン「まあ大体は珍しいケースですわ。一夫多妻が認められていない国でやるような方法でしょう。養子をとることも可能ですし」




琉輝「ただ潰れただけなら別に俺だってここまで恨まねーよ?

でもさ、その後もぐちゃぐちゃなんだぜ?
親戚は親戚で俺たちのことなんだと思ってんのか変な手続きしやがってさ……。



俺たちが<世界>を<見限った>んじゃねぇんだ。<世界>が俺たちを<見放した>んだ。

そう、思うしかないだろ?


誰も助けてなんかくれなかった。手を差し伸べてくれるヤツなんていなかった。
助けを求めたってみんな無視するんだ。<お前らなんで生きてんだ>って顔で俺たちを見るんだ。


生きてるのが、バカらしくなったよ。



でも、


最近少しだけ<もういいかな>って思えたんだ」




     *     *     *




〔Side琉輝〕


聞いてくれるか?大嫌いな父さんに母さん。



もう、2ヶ月くらい前かな。
帰国子女として<六道骸>って名乗る奴が黒曜中にきたんだ。

そいつがさ、言うんだよ。
バカみたいなこと、いうんだ。




骸「良ければ…一緒に来ませんか?」




迷惑なんかじゃないって、言ってくれた。

初めてだったよ。
俺らに迷惑じゃないって言ってくれたヤツは。


それって<生きてていい>ってこと、だろ?
アイツはそんな意味で言ったんじゃないと思うんだ。

それでも、嬉しかったよ。




鈴音「勝手な事して、ごめんなさい…。


でも、初めてだったの…。分かってくれた人も…話を聞こうとしてくれた人も。
初めて見たから、嬉しかったの……!」

琉輝「勝手なことして…ごめん、な…?


でも、鈴音の言うとおり…だった、から……さぁ。


初めて…だったよ…。分かって、くれた…ヤツも…話を、聞こうとして、くれた…ヤツも。
初めて、見た……。嬉しか、…った……」





だから鈴音も俺もアイツを守ったんだ。




アイツが、俺たちの世界を現実と繋いでくれた。
そしたら、おかしなことが起こったんだよ。


俺と鈴音のことを名前で呼んでくれる人が増えたんだ。
何かあったら助けてくれる人が、できたんだよ。



そいつら全員、きっと馬鹿なんだよ。
無償で手を差し伸べて<仲間だから>なんて言葉をさらっと言っちまうんだから。
そいつらなら絶対助けてくれるって思っちまう俺も、俺なのかな…。




それにな、好きな人が出来たんだ。
鈴音にも出来たよ。


ほら、さっきも話した骸ってヤツ。
鈴音、ベタ惚れなんだぜ。
もう可愛いのなんのって……。



あ、そういえば俺の好きな人の話だったよな?


そいつ、バカみたいに甘いんだ。
喧嘩なんてホント弱いし、頼りないよ。
勉強も俺よりできないっぽいから、もっと頼りなさげに見える。


でもそんなのアイツの<一部>でしかないんだ。


アイツは格好良い人間だよ。
優しいし、仲間は大切にするし、優柔不断だけどやるときはやるしさ。
それに……



自分が怖いと思った相手を前にして逃げずに、仲間を守ろうとした。



<見捨てなかった>んだ。
俺がどれだけ酷いことを言おうとアイツは俺から目を離さなかったんだ。


アイツなら………<綱吉>なら、俺らのこと見捨てないでいてくれるかも…って思ったんだ。



なぁ聞いてるか?大嫌いな父さんに母さん。


俺たち、



今、幸せだよ。




     *     *     *




琉輝「―――…さん、母さん……俺と鈴音の世界に、人が増えたん…だよ、」




ふらり。
琉輝の体が傾くと同時に擬似マグマの上へと落ちていく。
あのまま落ちたら琉輝は死んでしまうだろう。




ツナ「あぁ…っ!琉輝さんが…!!」

チェルベッロ「あと3分で足場が全消滅します」

獄寺「っち。…おい、音羽!!!しっかりしやがれ!!


さっさとリング奪わねーと負けちまうぞ!!」

琉輝「…るせーな、わーってんよ」




腹部の痛みも知らぬ顔をし、宙で一回転すると残り少ない足場へと足を下ろす。

その衝撃で傷んだ傷。
出血のせいか頭がぼんやりとした。


これでは<アレ>がまともに使えない。




琉輝「ったく……俺をドMにさせんなよ、ちくしょう」




袖口から出した刃。
琉輝はそれを振りかぶると……




琉輝「〜〜〜〜っぁ゛…!!」

芽埜・ツナ「琉輝さん!!/くん!!」




自分の傷口をえぐるように突き刺した。
その行為にXANXUSを除く全員が目を見開く。




琉輝「やっば…やりすぎた。


でも、いーや。すっっっっげぇ痛ぇけど痛み通り越して、むしろ頭すっきりしたわ…!」




もしかすると<死>が近いだけかもしれない、と琉輝は思った。
走馬灯みたいに両親に語りかけてしまったし、死亡フラグを乱立していようなものだ。


だがこれを逃す手はなかった。
今の自分ならば、出来るだろう。
自分のできなかったことを、いまならば………




琉輝「吹き飛ばして…、おわりだ…!!」

芽埜・ツナ「Σ何アレ―――!!!」

シャラン「狼牙棒…!?」

チェルベッロ「あと1分で、足場が消滅します」

ツナ「そ、そんなあ!!!」

獄寺「音羽!!!!」

山本「早くしねえと…!!」

了平「空中戦は極限不利だぞ!!」

芽埜「琉輝くん!!!」



ツナ達が呼んでいる。
自分のことを心配して叫んでくれる<仲間>の存在が琉輝の意識を保たせていた。
普通ならば気絶してもおかしくない激痛。

それを感じても尚、立っているのは彼らのおかげだ。




ラッド「お前…!

自分の姉がどうなってもいいんだね!!!」

琉輝「…?」

ラッド「お前が自分の過去を話した事で音羽の時期後継ぎであった音羽鈴音はヴァリアーの一隊員に殺される!!!無様な姿で!!!」

琉輝「………鈴音は………」

ラッド「?」

琉輝「誰にも殺せやしない…よ…。お前らなんかに、殺せやしない。
どんなヤツでも鈴音は殺せない」

ラッド「はぁ?」

琉輝「だって、そんなヤツがいたら俺が身を呈してでも殺すから」




―――ブシャ…ッ!!!




ラッド「ッッッ!!!」




大きく振りかぶられた狼牙棒がラッドの腹部に当たり、隊服を切り裂く。
それと同時に切られたチェーン。




琉輝「鈴音は片割れで<俺>だって、言ったろ」




     *     *     *




「行かなくてよかったのか?」

「何で?」

「貴様の妹の対戦だろう―――鈴音」

鈴音「ふふ、琉輝は<僕>なの」

「…?」

鈴音「琉輝はもう1人の<僕>。血を分けたもう1人の<僕>」




     *     *     *




鈴音・琉輝「だから絶対負けないわ/負けないぜ」




     *     *     *




琉輝「リング……と、った」

ツナ「琉輝さん…!!」

琉輝「ごめ……つな、よ」

獄寺「おいっ!!!」



琉輝の腕から薙刀が落ちた。
それと同時に擬似マグマの海の中へと彼女は倒れこんでいくではないか。



芽埜「いやっ!!琉輝くん!!

しっかりして!!もう少しだよ!!!ねえっ!!!」

琉輝「(聞こえ、てるよ。

でも…もー無理なんだ。痛いし、辛いし、眠いし、


目を開けてんのも…だるい、)」




スローモーションのように見えたその動き。
あと少しで、彼女は灼熱の海へと溺れようとしていた。



リングは、確実にその手の中にあるのに。




双子の秘密



亞琉「沢田さん。


琉輝の命と勝利、どちらを手に入れたいですか。」

ツナ「!?、そ…そんなの決まってる!!


―――琉輝さんのほうが、大事なんだ!!!」

亞琉「では、今回の勝利は諦めていただきますね」

ツナ「え……?」




次の瞬間、亞琉が消えた。




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