第十一訓 2



「《えー今日は通常の番組内容を変更しまして江戸中で異常発生している巨大ゴキブリについて徹底討論していきたいと思います》」






書類仕事の合間の休憩時間。
お茶とお茶菓子をもらいに行って、執務室でいただくのは恒例のことになっていた。


執務室に置いてあるテレビでニュース番組をつけたら急にそんな声が聞こえてきて驚く。






「隊長。巨大ゴキブリなんて見たことあります?」






巨大ゴキブリ≠ネんて、到底信じられない言葉だ。
生まれてこの方そんなもの見たことがない。

隊長に聞けば隊長も首を横に振った。



番組には央国星のハタ皇子がゲストとして呼ばれている。
宇宙中の動物の権威って、誰が認めてるんだろうか。






「《さっそくなんですが皇子、アレは本当にゴキブリなんですかね?》」

「《ゴキブリには違いないが地球さんではあるまい。おそらく地球に入ってきた異星の船とともに江戸に入り込んだのじゃろう》」





なんて傍迷惑な話だ。
宇宙ゴキブリだなんて、そんな迷惑なものどこの船が持ち込んだんだろう。





「嫌ですね〜。まさかウチにはいないとは思いますけど………、熱っ…」

『大丈夫?』

「ひゃい…らいじょうぶれ…」



ドタン、バタンッ



「………」『今日は朝から騒がしいですZ』

「んー…そーですかぁ…?いつもこんなんだと思いますけど…」





あぁ、でも。
確かに今日は朝から煩いかも知れない。














*     *     *















「なんでィ、アレ。なんであんなんいるんでさァ」

「あれホントにゴキブリなの?」

「知らん」






あたしたち5人はなんとかかんとか避難してきた。
あの巨大ゴキブリは一体なんだって言うんですか。
あんな巨大なゴキブリ20ウン年生きてて初めて見ましたけど。






「知らんって、アンタの部屋だろーが。ありゃあアンタが作り出したバケモンじゃねェのか」

「あなたの私生活があんな悲しいモンスターを生み出したんじゃないんですか、近藤さん」

「アレェ!?ここ君たちも住んでるよねェ!?」






………まぁいいでしょう。
これ以上局長を責めても何も出てきませんから。






「こいつァ仮説ですが、俺ァおそらくコレが関係してんじゃねェかと思いまさァ」

「そりゃ俺のマヨネーズじゃねーか。………、減ってやがる」

「恐らくマヨネーズを食することによってなにか予測できねェ超反応が起こってあんなことに…」

「んなもん起こるかァァァ!!」






いや、もしそうだったとしたら?
そうだったとしたらあたしたちはとんでもないモンスターを生み出した張本人。
アレが街に逃げたらあたしたちは袋叩きに遭うんじゃあ…。






「と、兎も角なんとしても俺たちで退治しなきゃなんねェ。あんなもんが街に出たとなりゃあ一般市民に何が起こるかわかんねェからな」

「なんとしてもこの屯所から出すな」

「総悟くん、亜希。殺虫剤は?効かないような気もしますけどないよりはマシです」

「「あっ…あっちおいてきちゃった」」





なにしてんですか。
取りに行かなきゃどうにもなりませんよ。

アレ、屯所にある最後の2本なんですから。






「………。
何してんだィ土方さん」

「ほ、ホントだよ〜。これだから土方さんは〜」

「なんで俺だァァ!!お前らが置いて来たんだろーが!!!」

「ダメじゃないかトシ。総悟と亜希はまだ20もいかない子供なんだからゴキブリが怖いのは自然の摂理だ。仕方がないな。俺がとってこよう!」

「イヤ、元はといえばアンタが原因だからな!?」

「まぁまぁ。俺に任せとけ!」

「アンタが一番不安だっつってんだよ!!」





(ホントですよ…)


……って、本当に行くんですか。

部屋を出て局長の部屋の前に置き去りにされた殺虫剤を取りに行くなんて勇者ですね。
あたしには絶対真似できません。
局長の勇気に敬礼を捧げなければ 「ぎゃああああああ!!」 ………。






「「「「………」」」」






頬がヒクリと引きつる。



や、やられた……!
コレ、絶対やられてるんですけどぉぉぉ!!!








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