第八訓 5



綺麗にめかしこんだ女性たちが目の前で踊っている。
三味線の音に合わせて踊っている彼女たちはとても綺麗で華やかだ。






「トシ、継美、真由。総悟の奴がウンコしにいくつったきり全然戻らんのだが」

「あの野郎、またどっかでサボってやがるな」

「亜希の姿もないんですけど。総悟くんに連れて行かれましたかね」

「2人ともあの、なんていうか…子供?ですからね」

「トシ、継美、真由。ほかの誰を疑おうと構わんが仲間を疑うことは俺が許さん。俺は総悟と亜希を信じる。きっとウンコのキレがものすごく悪いんだ。亜希も連れションに付き合わされて待ってるクチだろう。俺はそう信じたい!」

「そんな信じかたされるくらいなら疑われた方がマシだと思うがな…」






確かに。
そんな理由で信じられてもイヤだ。






「それより山崎と里美、おせーな」

「なんだ?何かあったか?」

「いや…たこ焼きがくいてーってお上がよォ」

「え…?あの、里美さんは斉藤さんと食べるとかなんとか言ってました…けど」

「あ?俺、山崎と一緒に買いに行くとしか聞いて……。っあの野郎、別件じゃねーか!!」






副長、それ騙されてますよ。
あの里美さんがお上の命だからってたこ焼き買いに行くような人に見えます?
見えないでしょう。






「副長ォォ、山崎ただいま帰りました!」

「おせーぞ!マヨネーズもちゃんとつけてもらったろーな!…………、オイこれ」






山崎さんが持ってきたたこ焼きは食べかけの上に残り3個しか入っていなかった。
何故、と山崎さんを見てみれば口元には青のりがべったり。
たこ焼きが減ったのは疑いようもなく山崎さんのせいとしか考えられない。






「ふっ副長ォォ、これは違います。途中で食ったお好み焼きの青のりです!!」

「どっちでもいいわっ!オイどーするよ…って食ってる!?仲良く3人でわけあってんじゃねェよ!」

「そうカリカリするなよトシ。今日はコレ、きっと何も起こらんぞ!ハメはずそーぜ」

「ハメはずそーぜ、トシ!」

「は、はずそーぜ?」

「3人揃って何寝ぼけたこと言ってんだァァ!
この会場のどこかに高杉の奴が潜んでいるかもしれねーんだぜ。奴の手にかかって一体どれだけの幕吏がやられたと思ってんだ。最近起こった過激なテロのほぼ全てに奴が関わっていると言われてんだぞ」






確かに高杉晋助という男は油断ならない。
攘夷だなんだという思想とは違って騒ぎを起こすこと自体を楽しんでいるかのようにテロを起こしている。
そんな人がこんな場所を見逃すわけもないけれど、現に今のところ何も起こっていない。


あとはもう、最後に残された花火を見たらこの祭りも終わり。
将軍様はそれを見たら帰ってしまうご予定になっている。
ここまで来て何もないのだから、祭りでは何も起こらないのでは?






ドンッ…パァン!



「お、始まったぞ!江戸一番のカラクリ技師、平賀源外の見世物が」








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