第二訓 3 「え?局長がストーカー?」 「……そうです」 あんなことがあってから数日。 あたしは非番が重なった里美と昼食を摂りに来ていた。 里美は年が同じだからか話しやすい関係で、こういった悩みだってすんなり話せる。 「あたしはその一般女性に申し訳が立たなくて……」 「……あー。警察がストーカーだもんねぇ」 あたしの上司がそこらにある会社のただの上司だったなら、今頃警察に通報しているところだ。 でも残念ながらその上司がただの上司≠ナはない。 武装警察たる真選組の局長≠ニいう地位なのだから、簡単に通報できないでいる。 ストーカーは女性の心に傷を残し、後々の生活にまで影響を与えてしまう卑劣な行為。 中にはその男の影に怯えて前と同じ生活を送れなくなる人だっている。 そういう卑劣な行為は早くやめてもらわ 「ストーカーめェェ!!」 ない、と…? (何、この叫び声) 「どこだァァ!!成敗してくれるわっ!!」 突然銀髪の男が立ち上がり、叫ぶ。 店内に響いたその声に、あたし以外にもストーカーのことで悩んでいる人がいるんだな、と感慨深くなった。 何かあるのならぜひ協力してあげたい。 「なんだァァァ!!やれるものならやってみろ!!」 ………感慨深くなったのもつかの間だった。 現れたストーカーっていうのがあたしの上司でなかったのならよかったのに、銀髪男の呼び掛けに机の下から出てきたのはあたしの上司たるその人以外には見えない。 これは協力する≠ニかそんな話じゃなくてどうにかする≠カゃないと済まない気がする。 「ストーカーと呼ばれて出てくるとはバカな野郎だ。己がストーカーであることを認めたか?」 「人は皆、愛を求め追い続けるストーカーよ」 それ、あたし以外にも言っちゃうんだ。 てかカッコよく言ったって無駄だって言ってんのに、どうして言っちゃうんだろう。 もう一回鏡見て出直せよ局長。 「ときに貴様。先程よりお妙さんと親しげに話しているが、一体どーゆー関係だ。うらやましいこと山の如しだ」 「許嫁ですぅ。私この人と春に結婚するの。もうあんな事もこんな事もしちゃってるんです。だから私のことは諦めて」 「あ…あんな事もそんな事もだとォォォォォ!!」 いや、そんな事までは言ってないでしょ。 「いやっ、いいんだお妙さん!君がどんな人生を歩んでいようと、俺はありのままの君を受け止めるよ。君がケツ毛ごと俺を愛してくれたように」 「愛してねーよ」 「オイ白髪パーマ!お前がお妙さんの許嫁だろーと関係ない!お前なんかより俺のほうがお妙さんを愛してる!」 いや、だから。 それストーカーの言うことだから。 愛してるから何ら問題ない、関係ない、なんてそんな言い訳通じないから。 「決闘しろ!!お妙さんをかけて!!」 「決闘しろ、じゃねーんですよ!!」 「ぐがふッ!?」 思わず飛び蹴りを食らわせてしまった。 飛び蹴りで吹き飛んだ局長は壁に頭をぶつけて失神寸前。 里美は背後で困ったように笑うばかり。 「見損ないました。今後私の前に姿を現さないで」 「えっ、ちょっ、継美!?それ結構無理がない!?」 背後で騒ぎ立てている局長のことを無視して支払いをする。 その間も「ねぇ!」と煩かったけど無視を決め込んだ。 もうこれ以上付き合いきれません。 「やっぱ継美って俺のことキライだよねェ!!?」 ← → ×
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