第二訓 2



新撰組屯所に近所迷惑なゴリラに似た男がいるということで通報が入った。
街の刑吏でも対処出来ない男らしくて、ちょうど手が空いていたあたしが行くことになったんだけど……。

(何してんの、あの人)






「お妙さァァァん!!結婚してくれェェェ!!」






電信柱にしがみついて叫んでいるのはあたしの上司、近藤局長。
結婚してくれ、ってあの人何言ってるんだろう。
自分の人相を一度鏡で見てから考え直したらどうなんだろうか。
顔が悪いとは言わないけどゴリラだから、普通の女の人には強烈すぎるから。






「お妙さァァん!!顔だけでも出してくれないかな〜!!

……!
お妙さん!!」






嬉しそうな声を出した局長。
お妙さんとやらの顔が見れたんだろうか、と思った次の瞬間。
局長は目を回して地面に落ちてきた。
―――灰皿と一緒に。


え、まさか、相手の人って灰皿投げるような人なの?
よくそんな凶暴女を嫁にしようと思うよね。
局長の趣味って変わってるわー。


そんなことより、さっさと局長連れて帰んなきゃ。
目元冷やさないとアザになる。






「あなたは何してるんですか。局長という自覚を持ってもらいたいものです」

「相変わらず手厳しいな、継美…」






屯所に戻って局長にタオルに包んだ氷を手渡す。
こんなでも局長だから、あんなことで負傷とかしてもらったら困る。

大体局長ともあろう人が一般女性に求婚を迫ってストーカーなんて、笑い話にもならない。
世間帯から見て元々評判の良くない真選組に悪評がつくってことに対して、もっと自覚を持ってもらいたい。






「あなたがしている行為は立派なストーカーですよ。犯罪です」

「フッ。人は皆、愛を求め追い続けるストーカーよ」

「あなたバカですか?かっこよく言ってもも無駄なんですよ。その顔、さっさと自覚してください」






スパァン!と勢いよく襖を閉めて、仕事部屋に向かう。
これ以上局長に構っている暇がもったいない。

ストーカーしてる暇があったら仕事をしろ、仕事を。






「…顔自覚しろって………継美って、俺のことキライ!?」








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