第一訓 3



朝、部屋から里美さんが連れ出してくれたことで仕事に間に合うことが出来た。
あのままあそこに取り残されていたら今頃副長に大目玉を食らうところだったから、ありがたい。
今日は副長から『大事な話がある』って言われていたんだもの。






「―――ってワケだ」

「戌威星の大使館……ですか」






副長の話は最近起きている爆破テロについてのことだった。
副長が睨んでいる犯人は攘夷派過激浪士≠ナある桂小太郎≠ニいう人物。
かつて起きた攘夷戦争で活躍した英雄も今の世の中ではただの反乱分子に過ぎない。

そんな犯人が次狙っているのは戌威星の大使館≠セとアタリをつけた副長は、その近辺にいい建物がないか尋ねてきた。
そういう立地に詳しいのは監察方や里美さんあたりなんだけどな。

でも、今回はぼくに聞いてくれたんだからちゃんと答えないと。






「あの……大使館あたりには人家もありますし、店とかではなく……あのー、…」

「民家を借りるのも一つの手、ってか。……そうだな、それも考慮して山崎に探させる」

「!」






ポン、と頭に手を置かれた。
そういうことを自然でやってのけてしまうところがズルい。
普段はそんな風にしないし、するような人でもないのに、突然そんなことをするからいけないんだ。

たったそれだけのことで、ぼくがどれだけ舞い上がっているか知らないでしょう?



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―――



その数時間後、山崎さんは見事いい場所を探してきてくれた。
副長はぼく、総悟くん、亜希ちゃん、山崎さんを連れてその場に行った。

今日一日張ったくらいでしっぽを出してくれるとは思えないけど、出してくれたら万々歳だな。






「むにゃむにゃ…」

「………、…」






見張りを初めて数時間。
亜希ちゃんと総悟くんは柄違いのアイマスクをして眠ってしまっている。
ヨダレまで垂らしてとても幸せそうな寝顔だ。

ティッシュでヨダレを拭ってあげようと双眼鏡から手を離す。
瞬間、



ドカン!!



爆破音が響いて、双眼鏡を覗き込む。
双眼鏡の向こうには指名手配されている桂小太郎と銀髪、メガネ、チャイナ服の3人組がいた。
4人は戌威族に追いかけられており、なんとかかんとか逃げていた。

(あれが、犯人……?)






「とうとう尻尾出しやがった。山崎、なんとしても奴らの拠点抑えてこい」

「はいよっ」






山崎さんは敵の拠点を探しに行かれた。

向こうの拠点が割れた暁には突入だろうと推測出来る。
獲物を持ってきて正解だった。






「このご時世に天人追い払おうなんざたいした夢想家だよ」






くしゃりと丸められた指名手配の紙が投げられる。
亜希ちゃんの額にクリーンヒットして、沖田さんにも当たったそれ。
その小さな衝撃でむくりと起き上がった2人は今の今まで眠っていたらしい。

あの爆音で起きなかったのに、紙くらいの衝撃では起きるんだ…。





「お前ら、よくあの爆音の中寝てられるな」

「爆音って…。またテロ防げなかったのー?」

「何やってんだィ土方さん。真面目に働けよ

「そうだそうだー!」

もう一回眠るかコラ
天人の館がいくらフッ飛ぼうが知ったこっちゃねェよ。連中泳がして雁首揃ったところをまとめて叩き切ってやる」






鞘から抜き放たれた刀は鋭い輝きを放っている。
日頃からきちんと手入れされている証だ。






「真選組の晴れ舞台だぜ。楽しい喧嘩になりそうだ」








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