しらないことのほうがおおいせかい
カイアちゃんとサスケ兄ちゃんが里を抜けた。何だかぽっかりと胸に穴が開いたみたい。
「キバ、いるー?」
「何だ、スザクかよ。何遠慮してんだ?」
「いやあ…何だかちょっと…えへへ、」
病室に入り丸椅子に腰掛ける。キバの傍は何だか心地いい。よく分からないんだけどね。それにしてもどうして兄ちゃん達は里を抜けたんだろう。里を抜ければ追い忍に追われると分かっているだろうに。
「なあスザク、お前サスケから何も聞いてないのか?兄妹なんだろ?」
「…ごめん、兄ちゃんの事は理解出来ないの。いつも自分で考えて相談もせずに決めちゃうから…」
あれ、でもそうだったっけ?兄ちゃんの事を何も知らない理由がもっと他に合った気がする。そして、うちには―――
「……許せ、スザク」
―――何か、忘れてるのかな。
「スザク、お前寂しくないのか?」
「え?」
「お前カイアと一緒にアカデミーに来ただろ?カイアも一緒に里抜けした」
カイアちゃんと…一緒に?ズキンと痛む頭を無視してキバの話しの続きを聞く。うちがカイアと呼び捨てにしていた事。一緒に住んでいた事。うちが唯一無二の親友だと話した事。キバの話す事はうちの知らない事ばかりだった。だって、うちは里の外に出た事がないはずなのに……なんで?
「サスケもカイアも勝手だぜ。お前にくらい別れを言ってるかと思ったのによ…」
「キバ…」
「妹でも友達でもなかったって事だろ?!本当に勝手な奴らだ!!」
「………ありがとね、キバ」
「ん?」
「うちの為に怒ってくれてるんだよね?うちが怒る事も泣く事もしないから」
「〜!!//」
怒れもしない、泣く事も出来ない。悲しむ事も憤る事もない。ぽこりと何かが溢れだしてくる事もない。
「お前らしくねーよ」
「え?」
「アホみたいに笑ってるほうがスザクらしいと思うぜ!!」
……それ、悪気はないんだろうけど…うちの心にグサッときたよ…??
「………行かせたのか」
「…はい」
「そうか」
風が頬を撫でる。ユズリも昔里を抜けた事がある。だが、それは全て里のための単独行動だった。里に戻ってきたユズリは紅真と結婚。幸せな家庭を築き『ユズハ』という娘を産み落とした。
「そのユズハの娘がカイア…あの娘だったとはな」
「カイアが何を調べたがっているのか俺には分かりません」
「いや、私には分かる」
「何ですか?」
「あの子はきっと自分の正体を知りたいのさ」
「?、カイアは闇月一族……それ以上に何か正体があるんですか?」
「闇月一族は余りにも秘密が多い。闇月の事を多く知っている人物は、もうこの世で一人しかいない」
「………大蛇丸ですか」
「…ああ」
大蛇丸は紅真の親友だった。堕ちて、何処までも闇に染まる紅真を救おうとアイツは色々と闇月を調べていたからな。結局紅真を救えないまま戦争で亡くしてしまった。大蛇丸が壊れ始めたのもその頃だったか―――。
「本当に救えない奴らだよ」
紅葉様も、紅真も、ユズハも、カイアも……闇月は本当に救えない。堕ちる所まで堕ちるしかない奴らだ。助ける方法なんて今も昔も見つかりやしない。ユズリですら紅真を止められなかった。
「………闇月が何で滅んだか知ってるかい?カカシ」
「第三次世界大戦に巻き込まれたときいてますけど…」
「そんなのお偉いさんが考えた嘘だよ。本当は―――」
「―――木ノ葉の手によって滅んだのよ」
「え……?」
「貴方のお爺様とお婆様…紅真とユズリは木ノ葉の手にかけられたの」
しらないことのほうがおおいせかい
彼女にとってその情報は知らないほうが幸せだった