きみが生きる未来が欲しい
赤砂さんとサスケくんが里を抜けた。救出に行ったシカマルくんたちは連れ帰れなかったようだ。つまり―――任務失敗。
「シ、シカマルくん………」
「…のいか」
「えっと、その、」
「…サンキュ」
「え…??」
「お前の事だから慰めようとしてんだろ?」
「あ…、」
ポンと頭を撫でられた。まともに声を掛けられない私が恨めしい。辛いのは泣きたいのはシカマルくんのはずなのに…どうして私に笑い掛けるんだろう。
「私、頼りないかな、」
「?」
「私、…シカマルくんが…す、好きだよ!」
「!!」
「私、力ないしいつも皆の足引っ張ってると思う……でも、私、皆を支えたいよ、少し位頼ってほしいよ…!」
そう言った次の瞬間シカマルくんは私の肩へと顔を埋めた。
「その、」
「カッコ悪ィからあんま見んな…」
震える声と体。ああ、泣いているんだと理解した時には彼の背に手を回していた。
「口で偉そーに言っても駄目だった」
「…うん」
「俺の指示がもっと的確だったら…チョウジもネジもキバももっと軽症で済んだかも知れねェ」
「…うん」
「悔しい…んだろうな…」
私の背に回された腕に力がこもった。嗚呼、不謹慎だけど何だか嬉しい。私、役に立ててるかな?
「次はうまくやるって…綱手様と話した」
「そっか…」
「なぁ、のい」
「なぁに?」
そっと肩を掴まれ真剣な顔で見つめられる。どうしちゃったんだろう、どうすればいいんだろう。緊張しながらも見つめ返したその時だった。
「のい〜〜!!!…って、うちの妹に何してんのよ――!!!!」
ガッ!!!
「っでェ!!!お前こそ何すんだよ…!」
「シカマルの癖にのいに手を出すなんて100年…ううん、1000年くらい早いわ!!うちの看板娘に虫がつくのは困るのよっ」
「……ったく、めんどくせーな、お前ら姉妹」
「うるさいわねー」
お姉ちゃんが一方的な口論を吹っかけてシカマルくんがそれを受け流す。いつもなら此処でチョウジくんがのんびりと仲裁に入るんだけど……今は薬の副作用で入院中。何とか安定状態に持っていけたみたいだし、1ヵ月もしたら全快するだろう。ネジさんは胸に大きな穴を開けていて髪の毛の細胞を使ってシズネさんたちが献身な治療に励み無事成功したみたい。キバくんと赤丸くんも無事。ナルトくんは体の傷もだけど心の傷も重いみたい。赤砂さんとサスケくんの里抜けは私たちに大きな傷跡を残して終わった――。
「………」
死んだ様に目を瞑っているネジに何も言えない。リーの手術は無事成功した。だけど、私はまだ勇気が出ない。手術はしたい。でも、死んでしまったら――?そう考えるとどうしても前に進めないのよ。
「ネジ、貴方ならどうする?」
そっと頬にかかった髪を払ってやった時ネジが小さく目を開いた。嗚呼、起きたのかしら?なら看護士を呼ばないと。椅子から立ち上がった私は扉へ向かって歩こうとする。だが、弱い力で腕を捕まれ静止を掛けられた。
「ミー…?」
「そうよ」
「……おれは、いきているのか…、」
まだ何処かぼーっとしているらしい。『生きてるわ』と告げれば彼は弱弱しく微笑んだ。
「ネジ、私…手術を受けないと忍をやめなきゃいけなくなる」
「……」
「でも成功率は半々。私、怖くて……」
「……俺の知るミーは何処となく自信家で強い奴だったはずだが?」
「!!」
ニヤリと小さく笑ったネジにかっとなる。何よ、今の私がらしくないみたいな言い方ね!!!そうよ、確かに私らしくない。でも、怖いものは怖いのよ。
「貴方が帰ってきたとき気を失いそうだった」
「何故だ?」
「…だって、折角仲良くなれたのに失っちゃうのは嫌よ」
「……なら、俺もそう返そう」
「え?」
「折角仲良くなれたミーを失うのは嫌だ。仲間として同じ場所に立っていたい」
それって………。
「手術を受けてこい、ミー」
「!、…うん、必ず帰ってくるって約束する」
「ああ」
私、手術を受ける。怖いけど、怖いからって立ちすくんでいられるほど忍の世界は甘くないじゃない?手術もそれと同じだったのね。怖いからって負けていられないわ。諦めないと言ったのは私じゃない。努力の天才だって言ったのは私じゃない。だったら怖さを乗り越える努力をしよう。乗り越えられなかったら『死』しかない世界にいる。
「私、手術を受けます!」
極限状態での私は最高に強いもの!
きみが生きる未来が欲しい
大丈夫よね、きっと。